トシの読書日記

読書備忘録

100年の愛と孤独

2014-07-09 14:31:47 | ま行の作家
G・ガルシア・マルケス著 鼓直訳 「百年の孤独」読了
 


15年前位に読もうとして途中で挫折したマルケスの代表作を今回、やっと読了することができました。それにしてもすごい物語です。マルケスの著作全体についても言えるんですが、すべてが豊穣で、過剰で、熱気に溢れています。


ホセ・アルカディオ・ブエンディーアに始まる一族の6代に渡る歴史を描いた一大絵巻であります。


谷崎潤一郎の「細雪」を思い出しました。でもあれは姉妹の一代限りの話なのでちょっと違いますが。以前、挫折したのは、代々の子孫の名前がほとんど同じで、誰が誰だかごっちゃになってしまって、いや気がさしたんですが、今回は、巻頭にある家系図と首っ引きで読んだので、そこはなんとかクリアできました。



なにしろ、ホセ・アルカディオ・ブエンディーアの息子がホセ・アルカディオ(長男)とアウレリャノ(二男)で、そのホセ・アルカディオの子供がアルカディオ、そのまた子供がホセ・アルカディオ・セグンド(長男)とアウレリャノ・セグンド(二男)と、まだまだ続くんですが、もうなにがなにやらという状態なわけです。


しかし、そんな読みにくさを超えてあまりあるこの物語の豊穣さ!特に自分が目をひいたのはホセ・アルカディオ・ブエンディーアの妻、ウルスラ・イグアランです。家を守ろうとして、文字通り家の改築にけたはずれのパワーを発揮するこのお母さん、すごいです。玄孫(やしゃご)の顔を見るまで長生きして、推定年齢130歳で亡くなったという、ウルトラ婆さんです。


それと、ホセ・アルカディオ・ブエンディーアの二男に当たるアウレリャノ・ブエンディーア。この人もすごい。一族の住む町、マコンドが戦争に巻き込まれ、自由党の大佐となったアウレリャノは、32回の反乱を起こし(そのつど敗北)、14回の暗殺と73回の伏兵攻撃、1回の銃殺刑の難をまぬがれた猛者であります。しかも、自殺しようとして自分の口にピストルを発射し、貫通したために死ななかったという、うそのような話のおまけまであります。


とにかく、この何もかもが過剰な一族の歴史に、読む者はただただ圧倒されるばかりです。小説の一番最後、6代目のアウレリャノが住む、すでに朽ちかけた代々の家が、折からのすさまじい熱風で崩壊してゆくんですが、アウレリャノとその伯母であるアマランタ・ウルスラとの愛について、「この百年、愛によって生を授かった者はこれが初めて」という文があるんですね。ここがちょっとわかりません。甥と伯母という、いわゆる道ならぬ恋で生まれた子供であるわけですが(心配した通り、その子には豚のしっぽが生えている)、その先祖達は愛によって子を作ったのではないのかという疑問がわいてきます。


解説の梨木果歩も指摘するように、マルケスにとって「愛」とは何なのだろうと。




最後の最後のところで「?」という壁に当たりましたが、とにかくすごい小説であることは間違いないです。ノーベル文学賞もとって当然でしょう。ノーベル賞といえば思い出したんですが、大江健三郎の小説「万延元年のフットボール」もこの「百年の孤独」とちょっとテイストが似てなくもないです。

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