トシの読書日記

読書備忘録

悲しみの通奏低音

2013-01-11 14:47:03 | あ行の作家
大江健三郎「治療塔」読了



軽いものを読むとか言いながら、また大江に手を出してしまいました。著者初の近未来SF小説ということで、ちょっと興味津々で読んでみました。


はっきり言って、大江健三郎にSFは似合わないですね。面白いことは面白いんですが、読んでいる間中、ずっと違和感がぬぐいきれない思いでありました。


地球上の「選ばれた者」たちが、核で汚染された地球を脱出し、「新しい地球」を目指す。過酷な環境の中で生きる彼らは、ある日、「治療塔」なるものを発見する。それは「かまくら」のような形態で、中にベッドがあり、そこに入って横になっていると、病気やケガが治り、肉体そのものも10歳くらい若返るというものだった。しかし、ついに厳しい環境に耐えられなくなった彼らは、やむなく元の地球に帰還するのだが…という話です。


随所にアイルランドの詩人、イェーツの詩を引用し、それがひとつのメタファーとなって小説に深みを増しています。


しかし…ですね。なんだかしっくりきませんでした。本書の続編ともいうべき「治療塔惑星」というのがあって、それを姉が昨日、貸してくれたんですが、どうすっかなぁ…。



姉から以下の本を借りる


大江健三郎「治療塔惑星」
大江健三郎「雨の木(レイン・ツリー)を聴く女たち」
多和田葉子「ゴットハルト鉄道」

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