トシの読書日記

読書備忘録

現代のお伽話

2017-09-12 16:11:06 | か行の作家



フランツ・カフカ著 池内紀 編・訳「カフカ短編集」読了



本書は昭和62年に岩波文庫より発刊されたものです。


カフカは小難しいイメージがあって、敬して遠ざけていたんですが、以前「変身」を読んで大いに笑ってしまい、カフカって意外に面白いと思い直した経験から、本書も諏訪哲史氏のおすすめに従って手に取ってみたのでした。


諏訪哲史の「偏愛蔵書室」の中で紹介されていたのは「流刑地にて」という作品だったのですが、これももちろん、いろいろ考えさせられ、面白かったんですが、なんといっても本書の最後に収められている「万里の長城」が出色でした。


中国の万里の長城が造られる経緯があれこれいろんな角度から描かれているんですが、なんとも面白い。壮大なホラ話という感じで、あれです、スティーブン・ミルハウザーもかくやと思わせるような、微に入り細を穿つ内容で、楽しめました。


万里の長城の話から、次第に中国の民衆の皇帝に対する考え方というようなものに話が変わっていき、著者の筆が我知らずすべっていくようなイメージで、非常に面白く読みました。もちろんそれは意図しての構成でしょうが。


解説を読んで、カフカの長編「城」「審判」は是非とも読まねばと思った次第です。




ネットで以下の本を注文

「小説新潮」9月号 新潮社
「すばる」9月号 集英社
「文學界」9月号 文藝春秋社
夢野久作「ドグラ・マグラ」(上)(下)角川文庫
諏訪哲史「岩塩の女王」新潮社

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