トシの読書日記

読書備忘録

現実の向こう側にあるもう一つの現実

2020-03-17 15:12:59 | か行の作家
アンナ・カヴァン著 佐田千織訳「あなたは誰?」読了



本書は2015年に文遊社より発刊されたものです。


アンナ・カヴァンといえばずっと以前に「氷」という作品を読んで、その冷徹で不条理な世界に息を呑んだ覚えがあるんですが、本書もそれに負けず劣らず濃い内容の長編でした。


その「氷」とは反対に今度は場所は特定されていないんですが、灼熱の南国が舞台です。うだるような暑さの中、無数のチャバラカッコウが「WHO  ARE YOU」と泣き叫び、夜になるとカエルが盛大な大合唱を始めるという、なんだか読んでいてこっちの頭がおかしくなりそうでした。


しかし、そういったシチュエーションとは裏腹に、カヴァンの筆致は極めてクールです。そこがいいですね。月並みな解釈かも知れませんが、女が男に屈服させられるという、性差別のようなものからの解放というものをテーマにしていると解するのはあまりに短絡的かも知れませんが、そんな風に読めるところは多々ありました。


いずれにせよ、このカヴァンの鋭利な刃物のような文章に酔いしれたのでした。


ネットで以下の本を購入

牧野信一「父を売る子/心象風景」 講談社文芸文庫

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