トシの読書日記

読書備忘録

閉塞のオキナワ

2011-12-09 16:10:41 | ま行の作家
目取真俊「虹の鳥」読了



少し前に新聞の書評で紹介されていて、興味がわいて買ってきたのでした。


めどるま しゅん と読みます。沖縄の作家です。1960年生まれといいますから、もう50代なんですね。何の予備知識もなく読んだんですが、もっともっと若い、30代くらいの作家のイメージでした。のっけからすごい暴力シーンがあり、よっぽど読むのをやめようかと思ったんですが、なんとか耐えて読み終えました。


リンチ、私刑、売春、恐喝と、いわゆる「裏社会」の醜いところをこれでもかとえぐり出し、そこに沖縄の基地問題をからみ合わせた、という印象です。


中学に入学した主人公のカツヤが不良グループのリーダーである比嘉にいじめぬかれ、屈服し、卒業後も比嘉の手下になり、比嘉に回された女(マユ)を使って売春させ、またそれをネタに客をゆする。


読後、ネットで少し見たんですが、ある新聞の書評に、比嘉はアメリカ、カツヤは日本、マユは沖縄のメタファーであると、そんな記事があったそうです。なるほどですねぇ。


しかし、作中にあるように、沖縄県民は、アメリカのことは、もちろん決して良くは言わないんですが、アメリカの基地のおかげで仕事があり、それで生計を立てている人も大勢いるわけでそこらへんの屈折した心情が、この小説の深いテーマであると思ったわけです。


いろいろと考えさせられました。しかし、尿道にマッチの軸を差し込んで、それに火をつけたり、女の爪をナイフで削ぎ取ったりというシーンを読むのは、かなりつらかったです。根が小心者ですから(笑)

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