諫早駅前の「山勝食堂」にて、長崎で人気のローカル魚・ヒラサことヒラマサの刺身定食をいただいて、有明海の魚探訪の準備は万端となった。いざ諫早駅を後にして、ローカル線の島原鉄道に揺られること4駅。湾の方向に向け広がる干拓の農地を遠望しながら、15分ほど歩いた先にある「干拓の里」へとやってきた。名の通り、有明海と干拓にまつわる総合施設で、レジャーやアクティビティや物販などが揃う中、お目当ては2つの展示施設だ。まずは「干拓資料館」へと足を運び、有明海のデータと潟が形成される仕組みといった、基本を押さえることにしよう。
冒頭の展示には有明海の数値情報が羅列されており、南北96キロ、平均幅18キロ、総面積は1800平方メートルの広さに対して、20メートルの平均水深は確かに浅い。日本一の6メートルの干満差が生じるのはこのためで、この干満が筑後川や矢部川が流し込んだ泥質の堆積物を流す海流を生み出し、湾奥の諫早湾付近へと運ばれて遠浅の潟が形成される要因となっている。ちなみに近年、有明海の魚介の漁獲が減った理由として、干満の周期や潮流が潮受け堤防のせいで変わってしまったことが挙げられているとも。デリケートな潟の起因からしても、人為的要因で湾の環境が変わってしまうことは、確かにありえなくもない。
そしてこの潟で形成された生息環境こそが、有明海の漁業が豊かな由縁といっても過言ではないだろう。塩分濃度が低い海水と、有機物を多く含む潟の土壌のおかげで、魚類166種、エビ42種、カニ96種、貝類214種を数える、豊かな海域が形成。泥質な漁場は特殊な漁具や漁法を生み出し、展示にもよその漁港では見たことのない道具類が並ぶのも面白い。ムツゴロウを狙う「むつかけ漁」の模型では、板のそり「はね板」に乗って沈まずに操業する様子が再現されていた。はね板は「潟スキー」とも呼ばれ、片足で泥の中を漕いで移動するのは、結構な重労働だろう。巣穴を見つけたら5メートルほどの竹竿を使い、鉤針で引っ掛けて釣るのだが、桶の縁を叩いた音に驚いて出てきたのを狙うのがユニークというか、のどかというか。
有明海と潟の理解が深まったところで、もう一つの見どころ「ムツゴロウ水族館」にもお邪魔してみる。中央に据えられた「干潟水槽」には、見た目や動きが独特過ぎる潟の魚が勢ぞろいだ。退化した目と鋭い歯の大口から「有明海のエイリアン」との別称があるワラスボに、巨大な片手のハサミを来い、来いと振って誘うシオマネキ。愛嬌のある寄り目で潟をピョンピョンと跳ね回るトビハゼは、水辺で半身浴したり岩の上で甲羅干ししたりと、まるで潟ライフを満喫しているかのようにも見える。
トビハゼは10センチ弱と小柄なのに対し、似た見た目で20センチほどと大きいのが、ムツゴロウだ。泥の中に掘った1メートルの巣穴から顔を出し目玉をキョロリ、出てきては大きな胸びれで潟をヒョコヒョコはい回り、動きは実にユーモラスで癒されること。時々ど突き合ったり、頭を膨らませたり、緑の背びれをたてて威嚇したりと、縄張り争いも忙しそう。顔や印象と違って動きがなかなか俊敏かつ激しく、先ほど見たやや遠くからの引っ掛け釣りの漁法が、理にかなっているのもわかる。
冒頭の展示には有明海の数値情報が羅列されており、南北96キロ、平均幅18キロ、総面積は1800平方メートルの広さに対して、20メートルの平均水深は確かに浅い。日本一の6メートルの干満差が生じるのはこのためで、この干満が筑後川や矢部川が流し込んだ泥質の堆積物を流す海流を生み出し、湾奥の諫早湾付近へと運ばれて遠浅の潟が形成される要因となっている。ちなみに近年、有明海の魚介の漁獲が減った理由として、干満の周期や潮流が潮受け堤防のせいで変わってしまったことが挙げられているとも。デリケートな潟の起因からしても、人為的要因で湾の環境が変わってしまうことは、確かにありえなくもない。
そしてこの潟で形成された生息環境こそが、有明海の漁業が豊かな由縁といっても過言ではないだろう。塩分濃度が低い海水と、有機物を多く含む潟の土壌のおかげで、魚類166種、エビ42種、カニ96種、貝類214種を数える、豊かな海域が形成。泥質な漁場は特殊な漁具や漁法を生み出し、展示にもよその漁港では見たことのない道具類が並ぶのも面白い。ムツゴロウを狙う「むつかけ漁」の模型では、板のそり「はね板」に乗って沈まずに操業する様子が再現されていた。はね板は「潟スキー」とも呼ばれ、片足で泥の中を漕いで移動するのは、結構な重労働だろう。巣穴を見つけたら5メートルほどの竹竿を使い、鉤針で引っ掛けて釣るのだが、桶の縁を叩いた音に驚いて出てきたのを狙うのがユニークというか、のどかというか。
有明海と潟の理解が深まったところで、もう一つの見どころ「ムツゴロウ水族館」にもお邪魔してみる。中央に据えられた「干潟水槽」には、見た目や動きが独特過ぎる潟の魚が勢ぞろいだ。退化した目と鋭い歯の大口から「有明海のエイリアン」との別称があるワラスボに、巨大な片手のハサミを来い、来いと振って誘うシオマネキ。愛嬌のある寄り目で潟をピョンピョンと跳ね回るトビハゼは、水辺で半身浴したり岩の上で甲羅干ししたりと、まるで潟ライフを満喫しているかのようにも見える。
トビハゼは10センチ弱と小柄なのに対し、似た見た目で20センチほどと大きいのが、ムツゴロウだ。泥の中に掘った1メートルの巣穴から顔を出し目玉をキョロリ、出てきては大きな胸びれで潟をヒョコヒョコはい回り、動きは実にユーモラスで癒されること。時々ど突き合ったり、頭を膨らませたり、緑の背びれをたてて威嚇したりと、縄張り争いも忙しそう。顔や印象と違って動きがなかなか俊敏かつ激しく、先ほど見たやや遠くからの引っ掛け釣りの漁法が、理にかなっているのもわかる。