ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたおもしろごはん132…横浜・弘明寺 『とり忠』の、うな丼に焼鳥

2009年03月01日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 2009年は年明けの瞬間から、正月らしいイベント目白押しとなった。日付が変わった0時過ぎに、自宅近くにある金沢七福神のひとつ、龍華寺へと初詣に出かけ、家内安全とことしも原稿依頼がいっぱいあるように、と商売繁盛を祈願。家に帰って1~2時間仮眠の後、3時半ごろに自宅をクルマで出発して、初詣を拝みに東京タワーへと向かった。大展望台から見えた初日の出は6時50分ごろで、お台場方面から赤々と昇ってくる日の出は実に神々しいものである。
 2009名限定の記念メダルも入手して、そのまま横浜へと向かい、みなとみらい地区のワールドポーターズの初売りでショッピングを済ませて、昼過ぎに自宅へ帰宅。年賀状をチェックして、おせちで早めの夕食にして、と、実に内容の濃い年頭初日の長い1日となった。

お台場方面から登る初日の出。元旦の晴天にそびえる東京タワー

 続く2日はその反動からか、朝からゆっくりとテレビにかぶりつき。お目当ては箱根駅伝で、自分の母校が何とか出場できたのはいいが、そこは予選会の常連校。優勝争いはともかく、シード権争いの方が気になって仕方がない。中継も10位前後の動向を気にしていたところ、わが母校が平塚からあれよあれよで7人抜きを果たし、何と小田原で3位まであがってきた。結局、箱根の山登りで少し抜かれて往路は7位となったが、ここ数年の成績からすると信じられない快挙である。
 となれば翌3日の復路は、何が何でも沿道に応援に駆けつけなければならない。自宅から近い、横浜駅付近を通過する時刻をチェックして、11時過ぎぐらいに娘を連れていざ出発。横浜駅東口はテレビカメラポイントでもあり混雑しているので、京浜急行で2駅先の仲木戸駅を目指した。駅から第2京浜の沿道へ出て待っていると、しばらくして続々と観戦者が集まってきて、大学の幟も立ち始めて賑わってきた。主催新聞社が応援用の小旗を配布しており、娘が2本もらってうれしそうにしている。

 待つこと30分ほどで、ようやく先導のクルマが見えてきた。海老茶、濃紺、ブルーと、目の前を通過していく上位陣の中で、わが紫紺のランニングの選手が、何と4番目でやってきたではないか。目の前を通過する選手に、無我夢中で大声で声援を浴びせて、後姿に健闘を期待して見送った。続々とやってくる後続の選手にもひと通り声をかけて、娘も小旗を振り回して「がんばれがんばれ~」と応援。およそ20分ほどで全選手が通過すると、観戦客も三々五々散っていき、沿道は祭りのあとのように静かになってしまった。
 この後残りの2区の展開も気になるが、家に帰るまでに選手はゴールしてしまっているだろうし、せっかく出てきたのだから娘と二人、初詣でもして帰ることにして、京急で引き返し弘明寺駅で下車。西国三十三観音のひとつでもある弘明寺観音におまいりしていくことにした。初詣客の行列に10分ほど並んで、家内安全商売繁盛、ついでに厄年の厄除け祈願もしたところで、あとは精進落としとばかり、門前の商店街をぶらついて遅い昼食の店を探すことに。

駅伝で大健闘のわが母校。そのまま弘明寺観音へ初詣に

 弘明寺商店街は、アーケードの下に商店が軒を連ねる昔ながらの下町風商店街で、観音様の門前町らしい賑わいも残している。沿道には銘菓「観音最中」をはじめ生菓子をそろえる和菓子屋に、華やかな練り物を各種扱うかまぼこ屋、手作りの豆腐屋におかずがずらり並んだ惣菜屋、さらに全国の地酒を集めた酒屋など、気になる店がいっぱい。正月らしく、カレンダーの露店や、おしるこや甘酒を扱うコーナーも設けられ、娘は露店の、100円均一のビーズアクセサリーが気になっている様子。
 露店の甘酒にひかれるが、駅伝見物から寒い中を歩き回っていたので、昼食は暖かい店の中でゆっくり腰掛けていただきたい。すると商店街の中ほどの店で、娘が店頭に貼られたエビ天の品書き短冊につかまってしまい、ここにするか、と覗いてみると飲食店ではなく惣菜のお店。店頭には「焼き鳥」の幟が立ち、おばちゃん2人がフル回転で、忙しそうに手羽先や唐揚げ、焼き鳥などを包んでは売りさばいている。

 お食事の方は2階へ上がって、と勧められたので、この『とり忠』に落ち着くことにして、階段を登ると、テーブルが4つほどのちょっとした飲食スペースが設けられていた。狭い上に初詣客で満席だったが、いいタイミングで2人がけの席が開いたので、腰掛けて品書きを開き、娘はエビ天そば… といこうとしたら、扱っているのはあいにく丼ものだけ、エビ天は持ち帰りのみとのことで、残念。
 エビ好き娘のリクエストはかなえられなかったが、卵好きでもある娘は半熟卵がポン、とのったそぼろ丼で納得いただいたようで、まずはひと安心。地鶏を素材とした惣菜が売りの店だけに、丼ものはほか地鶏カツ丼、親子丼、きじ丼あたりがおすすめとある。
 自分は中ジョッキに、そして各種ある焼き鳥の中から、レバ串とニンニク串のスタミナものをセレクト。さらに食事は親子丼にしようと思ったら、壁に貼られたおすすめに、これまたスタミナもののウナギとある。駅伝見物で触発され、さらに豪気に厄払いとばかり、おすすめにしたがってうな丼を注文、正月早々スタミナ三昧のオーダーといくことに。地鶏とウナギが売りのせいか、食事コーナーには下の厨房からもうもうと煙が上がってくるため、あたりがやや霞んで見える。BGMがジャズなのが、ミスマッチだが結構落ち着ける。

そぼろでご飯が見えないほどのそぼろ丼(左)。焼鳥は種類も豊富

 丼の真ん中の卵を割って、うれしそうにそぼろ丼を食べている娘の前で、自分はビールに串焼きと、昼酒は正月休みならではの楽しみ。専門店だけに、確かに肉の歯ごたえはグイグイ、味にもコクがあり、町の総菜屋の焼き鳥とは一線を画すうまさだ。
 鶏肉だけではなくウナギのほうも本格的で、丼の上の蒲焼は身が締まっていてプリプリとした食感。脂も程よくのっており、いかにもスタミナがつきそうな力強い味わいである。こちらも輸入物や冷凍物ではなく、本場の焼津から取り寄せた活けのウナギとのこと。それを朝割いて蒲焼に焼き上げているというから、味のほうは文句なしだ。ご飯が進み、体が温まり、食べ終えてホッと一息。おかげで、正月早々から各地へ出かけ続けた疲れも、すっかり吹っ飛んでしまったようだ。

 店を後に、ふたたびアーケードの門前町をぶらぶらしていると、ほろ酔い気分のおかげであちこちの店につい、足を留めてしまう。娘はさっきのビーズアクセサリーの店に再びひっかかり、お年玉がわりにひとつプレゼント。その向かいは古本屋で、古本の福袋を1000円で売っている。旅もの、グルメものも入った袋があったので、自分のお年玉にひと袋買って、駅のほうへと向かう。
 今年はカレンダーの関係で年始の休みが短く、あさってからもう、仕事始めだ。今夜あたりから正月気分はそろそろ切り替え、買い込んだ古本を眺めて気分を高めつつ、2009年のまぜまぜごはん探訪も、本格的に仕事始めといこうか。(2009年1月3日食記)