ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

杉戸宿てくてくさんぽ3

2017年04月17日 | てくてくさんぽ・取材紀行
此度訪れた埼玉県杉戸町、昨夜(というか今日)2時ごろに思い立ち6時半に出かけた。10時に着いて宿場を1時間歩き昼ごはん、その後13時から16時まで近隣の別の街で所用を済ませ、夕方にまた杉戸に戻り晩御飯を食べ帰宅した。強行軍のようで、割とゆったり散歩と食べ歩きができたか。

日没後は駅前の気になる繁華街を攻めたかったが、風雨の兆しがあり断念。にしても東武動物公園から中目黒、乗り換え無しの一本で帰れてしまうのだ。

ローカル魚でとれたてごはん…埼玉・杉戸町 『あたごや』の、ウナギ天丼

2017年04月17日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
杉戸宿と並行して流れる大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)は、名の通りかつての利根川である。中川の支流にあたり、「大落」とは農業排水路の意。江戸期の文禄年間に、流路の付け替えで銚子から太平洋に注ぐようになる以前は、この流路を経て東京湾へと注いでいた。利根川といえば「坂東太郎」の別名を持つように、雄大で暴れ川のイメージがあるが、目の前の流れは穏やかそのもの。沿道の遊歩道を歩けば川風が気持ちよく、土手には菜の花や桜と柳の木々が見られる、のどかな水郷風景が続く。ところどころに水運の荷揚げ場のような親水護岸も設けられ、川辺に降りれば緩い流れに、名残の桜の花びらが散り舞う様が伺える。

利根川は上流域に、北関東の富栄養な土壌の山々を擁し、餌となるプランクトンが豊富な環境が形成されるため、ここで育つウナギは脂ののりも身の味も良くなるとされる。江戸期には利根川で水揚げされたウナギは遠路江戸へと運ばれ、江戸前に対し「旅ウナギ」と呼ばれ珍重されたそうである。現在も産卵期に河口へと下ったところを捕らえる、丸々太った天然物「下りウナギ」が、希少なこともあり大変な人気なのだとか。加えて河口域で養殖されるその名も「坂東太郎」は、天然物に匹敵する味と評判が高い。天然・養殖とも「利根川ブランド」のウナギは、昔も今も変わらぬ高評価がなされているようだ。

お昼のウナギのかき揚げ丼は、未知なる食感でうまかったが、ウナギ処に来た以上は正統派の蒲焼もいただいておきたい。川端の遊歩道を駅前通りまで戻ったら、再び宿場町方面へ足を向ける。本陣の近くで見かけた「あたごや」は、日光街道からふた筋裏の通りに位置し、店頭には白地に「うなぎ」の文字が染め抜かれた暖簾がひるがえる。杉戸宿の鎮守の愛宕神社に向かい合い、まるで門前の茶屋のよう。住宅街に忽然と現れた街道らしい風景に、まるで当時の旅人になった錯覚に陥ってしまいそうだ。

暖簾をくぐるとお昼の料亭とは対照的に、町の大衆食堂風のこぢんまりした店内が落ち着ける。壁に連なる品書きの短冊からうな重の並、のつもりが、すぐ下段の三種盛り天丼のタネのひとつが「ウナギ」なのが気になってしまう。ウナギの天ぷらとは聞いたことがなく、かき揚げ同様にローカルなウナギ料理とくれば、正統派のうな重よりも優先だ。サービスのウナギの中骨揚げをかじりながら待つ間、厨房からジュクジュクと揚がるいい音が響いてくる。炭火で焼く香ばしい匂いがそそる蒲焼とは、違ったタイプの食欲の訴求で、何だかウナギを待っている気がしないような。

丼には細長い天ぷらが三本、行儀よく並んで運ばれてきた。明らかにエビとイカではない奴から、熱々のうちにそのままひとかじり。食味はキス天のようだが、厚ぼったく歯ごたえがグイグイと強いこと。ホッコリふっくらした蒲焼を揚げたイメージでかかったら、なかなか手強い食べ応えだ。シコシコとしたあとは皮目がねっとり、後から膨らむ土の香りが川魚らしく、海由縁のエビやイカとは明らかに異質なのが分かる。まさにウナギの新食感、不意を突かれたうまさである。

お茶を入れに来たおばちゃんに、食感に驚いた旨を伝えると、「蒸して焼いた蒲焼と違い、身の弾力がすごいでしょ」。このウナギの天ぷらは市街の老舗料亭が元祖で、蒲焼には小さい小型のウナギに、衣をつけて揚げたのがルーツだという。界隈の川魚料理屋では各所で出しており、杉戸町の名物ウナギ料理として浸透しているのだそうだ。ちなみに使うウナギは希少な「利根川もの」ではなく、国産の養殖ウナギとのこと。手頃な値段でオリジナルな味が楽しめるのが、杉戸町のウナギ料理の真髄なのだろう。

天つゆがざっとかけられていたので、半分はそのまま味わい、残りに山椒を振ったらちょっと蒲焼風な味わいに。ネギがたくさんの味噌汁にたっぷりの漬物もありがたく、もたれることなくさっぱりといただけた。店を辞して春雨に打たれつつ、駅へ向かい三たび渡る大落古利根川。往時の賑わいの名残と川魚料理の奥深さに触れた、400年目の宿場町にてのローカル魚探訪である。

ローカル魚でとれたてごはん…埼玉・杉戸町 『割烹 和泉屋』の、たまふわと鰻のかき揚げ丼

2017年04月17日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
埼玉県の杉戸町、と聞いてどこだかピンとこなくても、東武動物公園駅が最寄りといえば、およその位置が分かるのではなかろうか。テーマパークの玄関口として整備された西口と対象に、東口を出ると狭い駅前広場から、こぢんまりとした繁華街が続いている。かつて町名が駅名だった頃が似合うような、旧市街たるひなびたたたずまいである。

繁華街を抜け大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)を渡り、やや歩いたところの「本陣跡地前」信号で県道と交差する。これがかつての日光街道で、界隈には46軒の旅籠からなる杉戸宿が形成されていた。江戸から数えて5番目の宿場にあたり、歩いてみると門構えが残る本陣長瀬家跡をはじめ、人馬の引継や助郷の手配所だった問屋場の跡、触書きを掲げた高札場跡などの史跡が点在している。出桁造りの町屋や昭和期の建物を用いた店舗も見られ、旧街道風情とレトロな商店街が入り混じった、独特の時代背景の街並みが広がっている。

杉戸宿は、日光街道の起点である千住宿に比較的近かったのに加え、大落古利根川の水運の要衝でもあったことから、往来する旅人や物流の拠点として賑わったという。米穀問屋の小島貞右衛門邸は、袖蔵付きの堂々たる母屋の建物が目をひく。説明書きによれば、米の運搬には大落古利根川を利用していたとあり、枡形の奥に斜めに鎮座する様は、まるで宿場町を見通しているかのようだ。ここから復元された高札場まで歩くと宿場の外れとなり、小一時間で散策は終了。川と並行した宿場だけに、散策の道中でいくつか川魚料理の料亭を見かけた。川に面して店を構えるところもあり、早めのお昼は水辺のランチが、当地らしくて良さそうだ。

そこで高札場から河岸に出たところ、創業天保4年の老舗「割烹和泉屋」の暖簾を、開店と同時にくぐることに。窓の向こうには川面越しに、対岸の土手を埋める菜の花が臨め、実に春らしい眺めである。品書きを開くと、コイの洗いやナマズの天ぷらなどに並び、ウナギの料理が豊富に揃っている。壁にはお日さまに向かってウナギが昇る、コイの滝登りならぬウナギ昇りの掛け軸が掛かり、ウナギ推しを助長しているようだ。誘われるように品書きを目で追ったところ、ピッタリな逸品を発見。「杉戸宿開宿400年記念商品」と称した、限定メニューのたまふわと鰻のかき揚げ丼だ。ウナギをかき揚げにするとは聞いたことがなく、宿場の散歩つながりもあり、これに決定である。

運ばれてきた盆には、丸い櫃に盛ったかき揚げ丼に、小さな土鍋が添えられていた。ふたを開けるとオムレツのような茶碗蒸しのような、ふっくらした卵料理が現れた。レンゲでグシッとすくい、汁とともに口に運ぶと、舌にのった途端に泡のごとくサッと消失。ほんのりとしたカツオと昆布だしが、泡の甘さを引き出している。雲をつかむような食感のこの食べ物、正しくは「たまごふわふわ」と称し、江戸期に供された本陣料理を再現したものという。当時、卵は栄養価が高く貴重なため、殿様しか食せない高級料理だったとも。滋養がある上にスッと入るから、長旅の疲れで食欲がないときにもってこいかも知れない。

たまふわの優しい食感で食欲がわき、ボリュームありげなウナギのかき揚げにいざ、箸をのばす。白焼きをうざくやひつまぶしより大きめに刻んであり、玉ねぎに水菜とともにタネにして揚げてある。脂ののった白焼きに玉ネギがしゃっきり甘く被さり、衣がさっくりのあとウナギがほっこりとくる、ウナギ料理としては未知なる新食感だ。甘めのタレと厚めの衣がウナギの土の香りを封じ、蒲焼にない白身のうまさを引き出しているよう。野菜もたっぷりとれるのも、バランスが取れてありがたい。

油で舌が重くなったらたまふわをすすり、さっぱりしたらかき揚げに再突撃。ウナギと卵のコラボのおかげで、午後もまだまだ歩けるパワーがついたような。

杉戸宿てくてくさんぽ2

2017年04月17日 | てくてくさんぽ・取材紀行
杉戸と言ってもピンとこないだろうが、東武動物公園駅が最寄りといえば場所が分かるか。杉戸宿は日光道中で江戸から5番の宿場町で、昨年は開宿400年だったとか。あまり名残はないが、枡形にそびえる袖蔵を備えた米問屋、格子の酒蔵、復元された高札場など、ピンポイントで見どころがある。

かつて本流だった古利根川、堤が春満開でこっちを歩く方が和む。

杉戸宿てくてくさんぽ1

2017年04月17日 | てくてくさんぽ・取材紀行
郊外電車が新型になる中、時代を感じる中距離列車感を残していた東武線の快速電車。なくなると聞き、滅多に乗れないので北千住から東武動物公園まで、名残の利用をしてみた。座るとへこむ4人がけ座席、よそ行きなようでチープな設備に、貧乏汽車旅を思い出し懐かしい。

古き良き旅のアイテムが、また消えようとしている。