ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん126…横浜・杉田 『タージタンドール』の、キーマカレー

2008年12月07日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 自分が住んでいる杉田は、横浜の中心部から電車で20分ほど。いわば横浜の下町風情満点の、庶民的なベッドタウンである。その最寄駅である、京急杉田とJRの新杉田の間を、「ぷらむろーど杉田」という商店街が結んでいる。八百屋や肉屋、魚屋、といった個人商店が、駅前のスーパーに負けずに賑わい、飲食店もチェーンの居酒屋やファストフードのほか、定食屋や中華食堂、一杯飲み屋風の居酒屋に、数人入れば満席の焼き鳥屋などが健在。昭和レトロとまではいかないにしても、ひと昔前のちょっと懐かしい駅前の繁華街風景が、今もなお残った通りである。
 そんな商店街の杉田駅の近くに、最近とある飲食店がオープン。自分も気に入っていて、これまでもう4度ほど足を運んでいる。一番の理由は、なぜこの店がこんな庶民派下町に… という意外なジャンル。なんと本格的インド料理レストランなのである。駅から徒歩30秒、向かいは定食屋、隣は養老の滝という立地に、この『タージタンドール』のオレンジの壁の店頭、そこに掛かるインドの3色の国旗が、異彩を放っている。

 3度目の訪問となった9月のある土曜の夜、突然ここのカレーが食べたくなって、2230分のオーダーストップぎりぎりにやってきた。扉をくぐると、色黒で立派な髭をたくわえたウェイターがお出迎え。シェフをはじめ、店の方はみなインドの方ばかりで、初めて訪れた際は賑やかなインド歌謡のBGMのもと、この濃い方々の出迎えに少々ひいてしまったけれど、日本語堪能なウェイター氏はにこやかで愛想がよく、杉田の下町テイスト商店街に違和感なくなじんでいるように感じられる。
 入り口を入って右のいつものテーブル席に、同行の家内とともに落ち着いて、メニューを開いて今夜のカレーを検討することに。チキン、マトン、ベジタブル、シーフードそれぞれに数種のカレーが揃い、チキン系はほうれんそう入りのサグチキンに、骨付きチキンと野菜のタージチキンがおすすめとある。シーフードはトマトベースにバターとココナツたっぷりのブラウンマッカンニー、マトンを特製スパイスで煮込んだマトンマサラあたりも気になるところ。

ごく普通の商店街の中にある、目をひく外観

 下町のインド料理屋といっても、料理のほうはしっかりと本場の味を受け継いでおり、中でもカレーは多彩なスパイスをミックスして作る、本場伝統のマサラ・カレーが自慢。これら数種類のカレーに、前菜とタンドリーを使ったバーベキュー料理、ナンかライスを組み合わせたセットも充実していて、家内は写真入のセットメニューをいろいろ比べている様子である。
 自分も初来店の時はセットを頼んでみて、スパイシーなカレーの味に感激。そこで2度目はカレーを好みで単品で注文してみたのだが、このカシミリチキンカレーが滅法辛かった。本場のオリジナル・スパイスカレーの洗礼に感激、というか刺激に涙しながら、大振りのナンとともに何とか平らげたことを、メニューを眺めながら思い出す。個性派カレーも気になるが、今日のところはオーソドックスなものにしようと、自分はキーマカレーにすることに。

 インドの地ビール、マハラジャとともに運ばれてきた器には、鶏の挽肉のカレーにゆで卵がのった、シンプルなカレーだ。一緒に頼んだサフランライスにルーをかけ回せば、まるでカレーライス。家内が頼んだ、3種のカレーにナンやタンドリーチキンがついたセットのミールス(定食)がインド料理らしいのに比べ、こちらはカレーショップのカレーに見える。
 前回の辛さに戦々恐々としながら食べてみると、スパイスのアクセントが効いているが、舌への刺激はあまりなくかなりマイルド。たっぷり入った鶏の挽肉とゆで卵の相性もよく、「親子カレー」といった趣か。アーモンドと緑野菜が散らされたサフランライスは、スープで炊いてあるからそのまま食べてもうまいぐらいで、ピラフにカレーをかけて食べているようでもある。

 

3種のカレーがついたセットはタンドーリチキンつき。大振りのナンもつく

 それにしてもインド料理店のセットメニューには、かならずナンとサフランライスの両方が付いていて、結構な量のおかげでいつも終盤、お腹が苦しくなってしまう。今日はそれを心配してサフランライスにしておいたのだが、セットに付くアルミの容器に軽く盛ったのを想定していたら、単品だと皿に大盛り。カレーショップのカレーのご飯よりも多いぐらいである。
 それを気にかけてくれたのか、家内が自分のカレーの味見をどうぞ、と勧めてくれる。3種のうちひとつは自分と同じキーマカレー、残り2種はシーフードのブラウンマッカンニーに、店自慢のバターチキンと、オーダーの際に迷っていたものなのがうれしい。一方はトマトベースで、ハヤシライスのような酸味のルーに、エビのプリプリ感がたまらない。もう一方はバターと生クリームがコクがあり、サフランライスにしっかり合う。
 結局、自分も3種のカレーを味わうことになり、やっぱり多かった家内のセットに付くナンもお手伝い。単品にしたはずが、やはり苦しいぐらいに満腹となってしまった。以前に来たときはいずれも、マハラジャのおかわりに同じインド地ビールのキングフィッシャーも頼んでいたけれど、今日はカレーがマイルドだった分ビールの減りも遅く、1本で充分満足。

 さらに翌月のはじめに再訪したときは、初めてランチタイムに利用してみた。しかも小学校の娘も一緒。休みの日のお昼ごはんに、本場のインド料理デビューである。
 ランチタイムは
10種類ほどのセットを扱っていて、チャイかラッシーのドリンクも付いている。自分は例のバターチキンとマトンのカレーのセットに、そしてメニューに「お子様からお年寄りまでお召し上がりいただける」とあるように、ちゃんとお子様メニューが用意されている。サラダにバターチキン、そしてレーズンで目、アーモンドを耳にあしらった熊顔のサフランライスが何とも楽しい。

遊び心あふれるインド料理店のお子様ランチ

 カレーもサフランライスも平らげた娘は、デザートのマンゴープリンに満足の様子。例の髭のウェイター氏も、ニコニコと相手をしてくれている。住宅地の商店街にある本場のインド料理店は、これから町の「普段使い」な本格派カレーの店としても、重宝しそうな予感だ。(2008913日・10月5日食記)