ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん107…市ヶ谷・アルカディア市ヶ谷 『レストランフォッセ』の、オムライス

2007年11月03日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


ランチメニューのイメージ。
※食べた料理の画像はミスで消してしまったため、
いずれも「アルカディア市ヶ谷」の公式HPより借用

 とある洋食の料理人のエッセイで読んだことがあるのだが、自身が手がける料理の中で一番難易度が高いものをひとつ挙げるとすれば、オムレツという。何だ、ただ卵を割って、溶いて、フライパンで焼き上げるだけなのに、と思うかもしれないが、シンプルな食材・料理ほど、料理人の腕前が鮮明に分かるというもの。
 本によると、数ある食材の中で、卵は熱の加減が難しく、焼き上がりをベストの状態にするのは熟練の技を要する。加えて卵は香りや味が移りやすいため、一緒に調理する食材や調味料の影響を受けやすいそう。だからこれをきっちり仕上げられる料理人はかなりの腕前で、中には卵料理の専用フライパンを用意している人もいるのだとか。

 先日は、神谷町のダイニングバーのランチでオムライスを食べた話を綴ったが、その以前には築地にある洋食兼喫茶店で、市場流のオムハヤシライスを頂いた。このところ立て続けにオムライスを食べる機会があるようで、先日は市ヶ谷にある「アルカディア市ヶ谷」のレストラン『フォッセ』でも、オムライスがメインのランチだった。
 この日は仕事で大きな会議があり、事前の打ち合わせの会場であるこのレストランに、昼食もかねて早めに入った。会議場や宴会場が併設された、コンベンション施設のレストランで、レストランもホテル並みの本格派。打ち合わせ前に軽くスパゲティかカレーでも、と思ったら、入り口の大きなテーブルには、ランチメニューのサンプルがずらりと揃い、なかなか食欲をそそる。
 メインに肉や魚料理が選べるミニコース、ハンバーグやエビフライといった本格的な洋食、さらにサーロインなどステーキと、かなりしっかり食べられるメニューが多い中、大事な打ち合わせの前で食べ過ぎ、眠くなるのもまずい。「オムライスランチ」に決めて店内へ、黒服のボーイさんに迎えられ、白いテーブルクロスがきりっとかかった窓際の席へと通された。窓の外はすぐ、お堀が眺められ、桜の時期は窓から広がる桜並木が見事なことだろう。


フォッセの店内。窓からは豊かな緑が眺められる

 オムライスランチはスープとサラダつきで、先に運ばれてきたスープはかぼちゃのスープ。ハロウィンの季節らしい演出なのだろうか。コーンポタージュよりも濃い目の黄色が鮮やかで、ひと口頂くとほんのりと甘さの中に、塩味がしっかりと効いている。胃の中を包み込むような柔らかな味わいで、食前向けのリラックスする味だ。
 スープで食欲がわいてきたところで、運ばれてきたオムライスは、ハヤシライスのルーがかかったオムハヤシのスタイル。卵の黄とルーのオレンジ、パセリの緑の3色が色鮮やかで、見るからに食欲をそそる。さくっとひと匙とってみると、中は白飯でなくチキンライスになっている。築地で頂いたオムハヤシは、卵の味をシンプルに味わって欲しい、と中は白飯だった。一方、先日神谷町のダイニングバーで頂いたのは酸味がしっかり効いたケチャップライスと、店によって流儀は分かれるようだ。

 そしてオムライスの味の決め手となる、卵の仕上がりも同様。黄身が流れ出るほどトロトロだったり、スポンジのようにフワフワだったり、卵焼きらしくしっかりしていたりと、これまた店によって様々だ。ここのは卵が柔らか過ぎず、スプーンですくっても崩れない程度の締まり具合。おかげで卵の甘い香りがしっかりと強く、食感以上に卵の味わいを楽しめる。
 さらに特筆なのはチキンライス。色からしてケチャップの風味が強いのかと思いきや、鶏から出たダシがしっかりと効いていて、味に深みがある。チキンライスの名に違わず、鶏肉もゴロゴロとたっぷり。玉ねぎとマッシュルームだけとシンプルなハヤシソースも、洋食屋ならではのコクがあり、卵ともチキンライスとも相性がばっちりだ。それぞれを適宜組み合わせで、オムレツ、ハヤシ、ハヤシチキンライスなど、いろいろな味が楽しめるのが面白い。チキンライスを卵とともに頂くと、何だか洋風親子丼のような味わいでもある。


デザートメニューは充実。レストラン正面にはテイクアウトのショーケースも

 このレストランはパティスリーも併設していて、食後のコーヒーを頂いていると、店の正面にはテイクアウト用のデザートのショーケースがあったのを思い出す。本日のデザートメニューの中から、ピスタチオのモンブランを追加。洋酒のつまみのイメージが強いピスタチオから、どのようなクリームが仕上がるのだろうと思ったら、栗を使ったモンブランと比べて、緑色を帯びたクリームのモンブランが登場。味を見ると甘さがかなり抑えられた、大人の味である。トッピングには砂糖をまぶしたピスタチオがのっていて、これが甘いアクセントになっている。

 ダイニングバーのオムライス、市場の喫茶店のオムライス、そしてホテルメイドのオムライス。卵の仕上げも、ライスの仕掛けも三者三様で、確かに料理人の個性が出る料理なのだろう。ちなみに頂いたのはいずれもランチで、お手ごろな値段もうれしい。オムライスめぐりの仕上げには、仕事先の銀座にある老舗の洋食店のオムライスも試してみようか。でも、何だかんだでこういう店が、一番値段が高いような気もするが?(2007年9月27日食記)