ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

遅いぜ!今ごろ阿久悠だなんて!

2018-01-05 09:55:38 | アート・文化

 今更悔やんだって仕方ねえんだが、遅れてんだよなぁ、俺。ロカビリーにゃ間に合わなかったし、ビートルズにのめり込んだんだって、70年代に入ってからだ。その後、パン屋の職人止めて岩手の大学で再出発してからも、テレビの無い生活、映画を見ない日々を長く過ごした。教員になってバブルを迎えても、こんなもん真っ当な人間は関わっちゃなんねえって生徒には激しく伝え続けたし、派遣会社の求人にゃ絶対応じるなって、まっ、ここらは時代をかなり的確に掴んでた気がするが、人生通して見りゃ、その時々の風向きとか温度とかにゃとんと無頓着だった。

 このつけが、今、数十年越しのボディブローとして効いてるんだよなぁ。映画にしたって音楽にしたって、時々の名作、ヒット作は名前は知れども触れたことなし。ただ趣味のまにまに暮らすだけなら、これでなんも障りはないんだが、台本書いて、舞台作るとなると、こいつぁかなり痛い。最近はちょっと近過去ものを手掛けるようになってるんで、なおさらだ。

 菜の花シニア団に書いた、今時シニアの同級会もの『Goodnight Baby』なんて、山本リンダで始まり、ザ・キングトーンズで終わる。その合間を70年代のヒット曲と聞きなれたCMコピーで埋め尽くすなんて荒業を、ただただネットの情報を頼りに乗り切った。昨年の『にゃん婆と時之助』だって、ネットを渡り歩いて出会ったテゴマスの『ネコ中毒』が決め手になった。この先も昭和、平成には果敢にぶつかっていきたいって野心を持ってるんだが、世情に疎い文化空白期間の存在はこれからも大きな障害になんだろうぜ。

 で、何が書きたいか?ってぇと、阿久悠に出会っちまったんだよ、ようやくにして!って話しよ。去年の秋ごろかな、NHKBSの岡田准一が司会進行する「プロファイラー」って番組、歴史的人物をいくつかの視点から焦点を当てて浮き上がらせるって仕組みで、コメントするのが学者や評論家、も、居るが、主体じゃなく歌手や俳優だったり、要するに取り上げる人物の専門家、研究者でない素人ってところがミソなんだ。そのやり口は功罪相半ば、ってところで、素人の勝手な思い込みに、そりゃおまえの好みだろ!なんて突っ込み入れたりもするんだが、ベースとなる人物調査に関しては、多面的に掘り下げられていてなかなか見ごたえがある。これまでのものじゃアルゼンチンの大統領ペロンの妻「エビータ」の回とか、「モハメッド・アリ」なんか実に見ごたえがあった。

 おっと、今回は「阿久悠」だ。放映されてから数か月?年末になってようやくビデオ録画を見た。あんまり期待しちゃいなかったんだ、売れっ子の作詞家だろ、どうせ、上手に時代を泳いだ奴だろが、って。ところがだ、見て驚いた。たしかに時代の波には乗った、でも、その波乗りの覚悟たるや思想家とさえ呼べるほどのもんだったんだ。常に、時代を読み切って、その先を切り拓く。例えば、山本リンダの「狙い撃ち」、阿久悠は受け身の女、堪える女、忍ぶ女、歌謡曲の定番をひっくり返す女を書きたかったってことなんだ。2番、「女ひとりとるために いくさしてもいいじゃないの それで夢がかなうなら お安いものだとおもうでしょう・・・」挑発する女、自信に溢れる女、男を手玉にとる女!初期のヒット作森昌子の「先生」。これも当時広がってたデモしか先生ムードをひっくり返したくて、いつまでも心に残る先生を書きたかったんだってことなんだ。

 常に、鋭敏なアンテナを張り、時代の精神をキャッチし、関わり続けること、それを、世の大勢におもねることなく自分なりの視点で切り取ること、しかも、それをヒット曲という形で問い続けた、そんな男だったんだ。他にも、「また逢う日まで」「あの鐘を鳴らすのはあなた」「ジョニーへの伝言」「北の宿から」「ペッパー警部」「青春時代」「津軽海峡冬景色」「勝手にしやがれ」「UFO」「「舟歌」「もしもピアノが弾けたら」・・・きりないな。

 時代とともに心傾けた言葉への強い思い、それがサザンオールスターズの調子の良さで連ねられる「渚のシンドバット」に敗れた時、阿久悠の「時代おくれ」(河島英五)は明白となって失意のうちに小説家に転身していった。

 これ、学ばにゃならんだろう!時代を見据える視線、尖った言葉を書き続ける意思、メジャーでありきる力量、言葉へのこだわり。遅ればせながら、彼が突っ走った道を恥を忍んでたどってみようと思ったんだ。彼の曲にもこの先きっとお世話になることだろうし、ちょっとは彼の足跡を見知っておこう。

 さっそく買い込んだ阿久悠本、数冊。きっと得るものがぎっしり詰まってる気がしてるのさ。

 

コメント
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