柄にもない俳句調のタイトル、そんな風流な話しじゃないんだな、残念ながら。脱穀が終わって、今年の米作り作業は完了、となればさっそく来年に向けた準備が始まる。春からの米作り2016のために、今のうちにやっておかなくてはならない仕事、まず、種を確保する。収穫した4種類の米から、比較的実入りのよさそうなところを、それぞれ作付けする量に応じて取りわけ、冷蔵庫に保存する。冷蔵庫ったって、電源入れてるわけじゃない。外も同然の倉庫の中、電源オフでも十分に低温、ネズミ対策のためだ。もっとも、今年は、あの居候子猫が住み着いているので、ネズミの乱暴狼藉の心配はないだろう。育苗用のぼかし肥料の準備も秋のうちにやっておかねばならない。
もう一つ、冬の気配が深まる前にどうしてもやっておかねばならぬことがある。それが燻炭焼きだ。籾殻を焼いて籾殻の炭を作る作業だ。育苗土つくりには絶対欠かせないこの燻炭、混ぜることで土に隙間を作り、水持ち、肥料持ち、空気持ちを良くする効果がある。PH改善や土壌殺菌の効果もありそうだ。野菜畑に撒いてもよい。籾すりが終わり、玄米を取り出せば、残るは籾殻。これを不完全燃焼させて炭にするわけだ。
我が家では籾すりは友人に頼んでいるので、籾は身近にない。近所の有機農業の師匠の家からもらってくる。畑の一隅に積み上げその中にブリキ製の燻炭器を突っ込んで火を着ける。適度の酸欠状態で火力を回らせることで、ほれぼれ黒々つやつやの燻炭ができあがる。
なんだそれだけのこと?ってバカにしちゃいかん。これを上手に作れるまでに何年ね何年も失敗を繰り返してきた。難しさの一番は、火力を適度に保つこと。籾殻の湿り具合や風のある無し積み上げる量、さらに、燃え始めてからの管理方法、そして、最後は消火の時期。
湿っていて風も弱く火が回らないと、一日で仕上がらない。そのまま翌日回しにすれば、夜中に火力が上がり、隣家や鶏小屋に類焼の恐れがある。おちおち寝てもいられない。逆に強風に煽られれば、火災の危険とともに、炭を通り越して灰にまで燃え尽きてしまう。
できあがった後も、積み上がった燻炭を突き崩し、これでもか!というくらい水を撒き、完全に完璧に消火作業を行う。ちょっとでも火種が残っていると、そこが熱源となって再度燃え始めてしまうからだ。この残り火で、せっかくの炭を翌朝までにほとんど灰にしてしまったこともあった。ということで、燻炭焼きの日は、どこにもでかげず1時間おきに見回り管理する必要があるのだ。
今年は、籾が乾いていたこともあり、風も幸い隣家とは別方向の西南に向かってけっこう強く吹いてくれたので、ぐんぐん火が回り、夕方には完成させることができた。しかも、ほとんど生の籾殻が残らぬ上質なものに仕上がった。10分以上、執念深く水を掛け消化、その後も数時間おきに埋もれ火がないか見回りしながら終日の作業を終えた。
一つ一つ、秋仕舞いの仕事が片づいて行く。後はぼかし作り、そして雪囲い。この暖かさが続いてくれると幸せだなぁ。