たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

まだ使えるから

2012-09-10 01:53:31 | Weblog
 年齢が上がれば上がるほど、新しいことがどんどん入ってきて、それについていくのが大変になる。

 いまの50代や60代の世代の人達は、20代の頃はまだタイプライターだったろうし、掲示板って言えば駅の掲示板のほうがピンとくるだろうし、色々なモノがまだまだ発展していなかった。
 そいつらが、LINEやFacebookなどのちょっと複雑なSNSの類いや、様々なことができるスマホのアプリとか、3Dのゲーム機だとか、そんな中で生活しているんだから大変だよね。上の世代の賢い人が、、いや、ちゃんと言おう、上の世代の、昔賢かった、今はプライドだけが残っている人が、新しいことについていけないことが不安で、最近の若者はー、とかほざいているのは、仕方ないことかもしれない。

 俺よりも30コくらい上の連中にも、同様にAグループ、Bグループ、Cグループとグループ分けすることができる。年齢を重ねても、真面目に新しい文化にきちんと反応しているのは、Aグループの人達と、その能力を持つ人であることは、ほとんど間違えない。
 これは初めて公言することだけど、当然、グループ性は年齢とともに衰退化していく。だから、いまCグループの人は時間に勝たなきゃAグループにはいけないし、Aグループだからって油断していると社会的にはCグループになっていたりするのだ(これを考慮すると議論が複雑になるので、普段はしない)。っで、昔から今までずっとCグループだった人間は、学習だけはきちんとしてきた、っていうくだらないプライドだけ残っちゃってて、新しいことを理解すらできないから、不安になる。で、昔はこうだった、昔のがよかった、今はダメだ、って言いだすってわけ。

 確かに、「温故知新」ってのはある。古いことでもバカにしすぎちゃいけない(例えば、相対論を理解するときに「エーテルの風」という当時の人達を悩ませていた今となってはまったく必要のない概念を勉強するのは大切だと思うし、相対論的量子力学を学ぶときにクライン・ゴルドン方程式を学ぶのも価値があると思う。)。
 だけど、体系的に知識をまとめるときに初めて、温故知新なわけで、そんなことはそれこそもっともっと昔の人は、きちんと知っていたと思うけどね。

 そんな簡単なことを言葉として心にきちんと飲み込まずに、古い体制を変えないでい続けた、こんなバカばっかで、日本が衰退しないわけがないよね?特に最近だと電機メーカーに顕著だけど。

 Aグループの連中にグループに入れてもらう必要性は皆無だが、ヤツらの能力はきちんと持てるように努力しなきゃいけないことが、、どう?、少しは理解できる?、団塊の世代とそれよりちょっと下の世代の、自分のことしか考えられない、頭の堅いCグループの人にも。

 とはいえ、新しいことを恐れないってのは、とてもとても難しい。日々進歩していかなきゃいけない研究の世界でさえ(とはいえ保守派が研究に携わりやすいからダメなんだけど)、これは昔の装置でも測れます、このソフト古いですけどこれくらいなら解析できるんで!、ってな感じで、誤魔化す。まぁ、理系が普段使う、実験装置やソフトって、信じられないくらい高価だから仕方ないんだけど、まだ若いうちらの世代が、それで納得しているようではダメだ。
 無い、Aグループの力を、絞り出して、どんどん外に出ていって、色んな事を知ろうとしないと。

 俺はそう思っているから、なるべく多くの研究室に出入りさせてもらうようにしている。現在、ある程度内部を知っていて、出入りさせてもらっている研究室が4つもある。こういうことをさせてくれる各研究室が素晴らしいと思うし有難いんだけど、残念なことに、それを許してくれる研究室の多くは若い研究室主催者がほとんどだ。
 各研究室、一長一短なところがあって、当然だけど完璧なところは無いから、色々なことを知ろうとすることが大事だと思う。その中でもビックリすることがあるので、一つだけ具体例で紹介しておこう。

 生物の遺伝情報の大元はDNAという物質だが、このDNAが、ある試験管の中の水中にどれくらいの濃度で存在しているのかを測定するのに、分光光度計ってのを使う。簡単に言うと、試験管からDNAを含む水を少し取り出してきて光を当てて、その光がどれくらい通り抜けるかによって、濃度を計算しよう、って装置だ(ランベルト・ベールの法則)。光がよく通り抜けるほどDNAは少なく、逆に全然通過しないと沢山DNAがいることがわかる。
 やりたいことは、DNAの濃度を測定すること。それだけだから、俺が出入りする分子生物系の研究室には必ず、分光光度計の装置が何らかの形で置いてある。しかし、各研究室で、濃度測定をする原理も、手段も、同じであるはずなのに、まず装置の大きさが全然違う。

 一番大きい装置は、グランドピアノ大くらいデカイ。もしかしたら何か他のこともわかる装置なのかもしれないけど、見るからに古いし、立ち上げ立ち下げにもかなりの時間がかかる。
 その次にでかいのは、小さめの段ボールくらいの大きさ。少しめんどくさそうなソフトも使うし、確か勝手に計算してはくれないけど、上のに比べれば遥かにコスパーが良い。
 そして、一番小さいのは、参考書くらいの大きさ。希釈を作る必要も無く、1μLちょこっとドロップするだけで、勝手に計算して、何 ng/μLか算出してくれる。立ち上げ立ち下げも、パソコンとまったく同じ、あとかたずけも、ティッシュでふくだけ。しかも精度も良く、タンパク質まで定量してくれる。

 これには正直、落胆すら覚えた(笑)。たったひとつの、しかも大したことない測定で、ここまで、かかる時間に対するパフォーマンス、つまりコスパーが変わるとは。

 こういうことを知ろうとしなきゃいけないし、知らなきゃいけない。って俺が言うと、学会とかにあるし、知ってるよ、ってバカなヤツがドヤ顔で言ってきそうだけど、そうじゃなくって、すぐ隣の研究室で、同じ測定をコスパーよく行っていることを、知らなきゃいけないのだ。

 こんなことは、沢山ある。ホントに、細かいことを言いだしたら、キリが無い。
 若い人間ってのは、知識が無い分、フットワークが軽いんだから、こういうことで上の世代との競争に勝てなきゃいけないし、どんどん、どんどん、新しいモノを取り入れなきゃね。特に、理系は。

 そして、そういう若い世代を大事にし、上の世代にもきちんと聞き入れられたときに初めて、この国のくだらない部分が、解決するのかもしれない。

 だから、ずっとずっと、10年後、20年後ももちろん、30年後も、その先もずっと、新しいモノを上っ面の理由をつけて拒絶しない人間になっていきたいと思う。

 ね、だからさ、まだ使えるから、って言い張ってる教科書も、思い切って、買い換えてみません?笑
 どんな教科書だっていつかは書き換えられる。それこそが学問の発展だし、だとしたら、自分の中の習慣という教科書は、きちんとブラッシュアップする必要があるだろ?
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