たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

「基礎研究」って言うな!

2018-12-04 19:00:00 | 自然科学の研究
 あらゆる理系の研究領域が存在している現代において、「そのなかで成り立つ研究」というものが、あまりにも乱立されてしまった。
 それってさ、ぶっちゃけ「内輪だから成り立ってるだけでしょ?」ってことであっても、「でも沢山引用されてるんで!」とディフェンスできるようになってしまったのだ。

 まぁ、そういうことって、ほかでも沢山あるよね。バンドとかでも、友達に無理にチケット売らなかったらいけない状況で、友達脅してでも集客したほうが偉い、みたいなさ。いやいや、友達売ってまで伝えたい音楽って、なんなん?って思っても、それで評価されちゃったりすることあるわけですよ。
 研究も全く同じで、本当はこういうことがやりたい、って気持ちで大学院に残ったはずなのに、「でも、この分野では、こういうやり方は受け入れられないから、慣習通りにやろう」とか先生から言われたりするわけで、「やりたいことをやりたい方法でやる」ことが重要なはずなのに、そういう気持ちを売ってまで、「やりたくないことを、やりたくない方法でやって、とにかく論文にする」ってことを、みーんなやってたりするわけです。

 誰かが「そんなん、やーめた。学問上、本質的に必要なことだけを好きにやります」って言えば良いわけですが、それを言った瞬間に「はい、じゃー、アカデミアから出て行ってください。明日から居場所は世界中のどこにもありません。この分野で生きていきたいくせに、そんな生意気なこと言うヤツはいりません」みたいな扱いを受けるわけです(実体験w)。

 なので、アカデミック界隈にいる平均的なヤツが、たまーに、俺みたいな変なヤツから、『それって、そもそもどういうモチベーションでやってるんですか?』とか訊かれると、本人も価値を感じてないから「基礎研究としてー」とか言い出すわけですよ。だいたいね、学会でもなんでも、みんな方法論はよく質問するけど、モチベーションとか意義とか、ほとんど質問しないからね。「何の役に立つんですか?」とかドヤ顔でいうバカな文系がその典型で、それって意義を訊いてるんじゃなくて、ただ(どこに応用できるかの)方法論を訊いてるだけでしょ。
 その分野のヤツ全員「それをやる意義がわかってねー」ってことあるわけよ。で、そういうところに、何千万円とか税金使ってたりしてさ、、ヤバいじゃん。だから、必要な研究にだけ投資する、みたいなことを考えるわけじゃん?でも、フーリエ変換すらできないくらい、理系的実力が何もないヤツらが、「俺らは"需要"は把握してるー」とか勘違いして、カネ出すかどうか決めてたりするので、超必要で重要な研究から駆逐されていっちゃってるわけです。

 そんなわけで、最近本当によく思うわけ。意義ねーことをやる大義名分として、やたらめったら気軽に「基礎研究」って言うんじゃねーぞ、って。せめて、本人が、自分自身の職の安定や学位取得以外の、(研究内容における)本質的な価値を感じてろよ、と。
 そのせいで、本当の基礎系の分野が、ものすごく苦労している。「無駄なことしてる」って自覚してるんなら、「本当はあんまり意味ないんですけど、慣習として…」ってせめて言えよと。そうすれば、納得してくれる人もそれなりにいるはずだし、たとえ反発されて怒られても、意味ねーことに血税使ってるお前が悪いやん、って思わん?

 あとさ、これはバイオ系に言いたいんだけど、、お前らバイオに基礎系の分野とか、ねーから。バイオの基礎ってなに?具体的に言ってみろよ。ただの切手集めと同じ枚挙主義だろーが。バイオで"基礎研究"とか言ってるヤツは、オタクとかコレクターと何も変わらん。
 純粋数学は基礎だけなので言わずもがなですし、物理は、どの分野でもニュートン力学から脈々と続く一つの論理体系に帰着されていくという"基礎"がある。化学だって、新しい反応機構の発見はこれまでの基礎に組み込まれるわけで、分子マスターになるためには必要だったりするわけですよ。で、バイオはあるの?ないだろ?「これはこれ、それはそれ」みたいなのは、基礎とは言わねーんだよ。

 バイオで基礎やりたいなら、「生命とは何か」やらなあかんわけで、だったら、その根幹となる物理勉強してんだよな?って思うわけですよ。だから、生物学科上がりで「バイオの基礎研究してまーす」なんてのは、99.9%、その場凌ぎのイイワケ言ってるだけですから。

 つーわけで、「基礎研究」って禁句です。
 俺の前で言うときは、覚悟を持って言ってね。
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1 コメント

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Unknown (岩下智)
2023-04-10 04:55:01
自然科学的な研究はあらゆる学問の基礎ではあるが、そういう視点から基礎研究と言っている人は少ないと思う。研究を応用のための研究と真理の探究に分けて、それぞれ応用研究、基礎研究と言っているのだと思う。確かにおかしな表現で、大学で行われているような応用のための研究は応用の基礎となる基礎研究で、バイオ系に含まれる医学、工学、農学分野では基礎研究をしていると思う。それは間違いではないが、真理の探究をしている人は科学研究と言ったほうがよいだろう。医学や工学、農学の世界では、生物学とは口が裂けても言わず、基礎医学とか基礎生物医学、生物工学という。これは、科学研究ではなく応用研究のために予算を組んでいるからだろう。このようなレトリックは中にいてもわかりにくい。惜しいのは、生物学という素晴らしい単語を生物学者さえ使いたがらないことや、自然科学としての生物学研究には生物医学や生物工学ほど予算がつかないことだ。生物学者が生物学研究の成果が医学や工学や人類学などの他の分野の基礎としてどう役立ってきたのかや、これからどうなるか、を世の中にアピールしてこなかったということもあるし、逆に医学や他の分野が生物学を過小評価、軽視してきたことも背景にあるだろう。

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