Google drive 統計力学_物理会
高校物理、高校数学、微分方程式、ベクトル解析、線形代数、物理数学、力学・解析力学、電磁気学、量子力学、熱力学、数理統計学を前提として、YouTube上で統計力学について22回にわたって説明した板書ノートのリンクです↑。2023年11月29日から2024年6月21日にかけて講義しました。
著作権は髙橋慧にあります © 2024 Kei Takahashi
主に、熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相 - 高橋和孝 (著)を教科書として使いました。
適宜、統計力学 (1), (2) - 田崎 晴明 (著)、大学演習 熱学・統計力学〔修訂版〕 - 久保 亮五 (著, 編集)、統計力学 (岩波基礎物理シリーズ 7) - 長岡 洋介 (著)、非平衡統計力学―ゆらぎの熱力学から情報熱力学まで― - 沙川 貴大(著)などを使用しました。
こちらのファイルに関する質問や指摘、コメントに関しては、実名による投稿のみ受け付けております。(匿名の場合はコメントを削除します) -
メール(soudan.atamanonaka.2.718_attoma-ku_gmail.com)やTwitterのDM(@KayT0309)については匿名でも構いませんが、必ずしも返信するとは限りませんのでご了承ください。
【目標】
ミクロカノニカル分布、カノニカル分布、グランドカノニカル分布を理解し、それぞれを具体的な系へと適応できる。
【各回の概要】
1. やりたいこと、教科書など
概略の説明。平衡系と非平衡系の違い。古典統計と量子統計の違いなど。
2. 量子論からエネルギー固有値を求める
量子論の復習。3次元、N個への拡張。
3. 数学公式、状態数
スターリングの公式。超球の体積。状態数の導入。
4. 状態数の計算、理想気体
状態数を計算することで、それが理想気体のエントロピーと近しいことの確認。ボルツマン公式へ。
5. ゴム弾性
ミクロカノニカル分布を前提として、状態数を数えることでボルツマン公式を用いて、ゴム弾性を理解。フックの公式を導出。
6. 調和振動子型
ボルツマン公式を用いて調和振動子型ポテンシャルに閉じ込めれた気体についてエントロピーを求める。
7. 2準位系、Schottky比熱
前回、前々回同様に、2準位系について。
8. 磁性体、等重率の原理など
2準位系の応用として磁性体の例を紹介。ミクロカノニカルの基本として等重率の原理を説明。
9. 等重率続き、エルゴード
エルゴード仮説の紹介。
10. カノニカル分布導入
熱源に接している系としてカノニカル分布の導入。
11. 分配関数と熱力学量
分配関数から熱力学量を求める公式の導出。
12. カノニカル分布の基本的な例
ミクロカノニカル分布で紹介した、調和振動子型ポテンシャル、2準位系についてカノニカル分布でも確認。
13. 例続き、熱容量と揺動散逸定理
理想気体について分配関数から熱力学量を求める。熱容量から揺動散逸定理の1例をみた。
14. 古典統計力学導入
理想気体のエントロピーについて確認することで量子統計の必要性を説いた。また、古典統計での考え方の導入を行った。
15. 古典極限へ
ハイゼンベルグの不確定性原理の導出。分配関数を古典統計で。
16. 情報理論導入
シャノン情報量、条件付きシャノン情報量の導入。
17. 相互情報量
相互情報量の導入。二値対称通信路を紹介。ガウス型通信路を導入し、S/N比を導出。
18. KL情報量、非平衡エントロピー
KL情報量導入。カノニカル分布のとき、シャノン情報量が熱力学エントロピーと等しいことを証明。また、エネルギー一定のとき、シャノン情報量が最大になるときにカノニカル分布であることを示す。
19. 化学ポテンシャル、グランドカノニカル分布
熱力学の復習として化学ポテンシャルを説明。熱浴と粒子浴に接する系としてグランドカノニカル分布を導入。
20. 粒子数の平均値と分散、同種粒子など
大分配関数と分配関数の関係。また粒子数の平均値を導出。量子論の文脈で同種粒子を考えることで、フェルミオンとボソンについて説明。
21. スレーター行列式、フェルミ分布・ボース分布導出
パウリの排他率を示す。スレーター行列式の導入。粒子数の平均値の式より、フェルミ分布およびボース分布を導出した。
22. フェルミ縮退、ボース凝縮
フェルミ縮退とボース凝縮について、定性的に説明。それらの背景にある理論として場の量子論を紹介。低温物理の分野を紹介。
【総評・反省】
「統計力学やると価値観変わるぜ!」と思っていたのだけど、まぁそれは確かにそうなのだけれども、なんかちゃんと勉強して伝えれば伝えるほど「平衡系が偶然上手く行っちゃっただけなんじゃないか」「この考え方を非平衡や他のことにも応用しまくれるぜと思いすぎるのもどうだろうか」と思ったりもした。
守破離でいくと、俺は離のところに差しかかったのだろうか。それとも単純に理解が足りないのだろうか。どちらにせよ、非平衡系(ゆらぐ系の熱力学など)の理解を進めることは引き続き進めていきたいとは思っている。
平衡系の統計力学をやる前提として熱力学と量子力学の理解は必須であるが、統計力学をやりながらも、これら2つにも戻って復習できると良いと思う。それぞれの論理展開はお互いに助け合って成り立っているわけで、だとしたら勉強も同時進行が一番上手く行くのでは?(そうとは言い切れないか笑)
ミクロからマクロへの精緻な論理体系として統計力学はかなり良くできている。統計力学こそが、枚挙主義・還元主義から脱却できる価値観をもたらしてくれる、点と点をものすごくちゃんと結んでくれる、いわば「線の学問体系」なのだが、改めてここまでたどり着くまでの道のりの大変さをつくづく実感した。ここまでくるのに2年半。物理会すべてだと154回かかっている。ということは154時間。まぁだいたい時間オーバーしているので丸7日くらいかな?寝食忘れトイレも行かなければ、たった1週間で終わるわけです。(そんなわけあるか)
うん、でも「生命とは何か」「細胞を創る」とかやりたいなら、たったこれだけの時間で済むわけで、あーゆー人たちは普段からもっと偉そうなこと言ってるわけで、「これくらいさらっとやれよ」と思わなくもないのだけど笑、かなりきついのはきついよなぁ。そりゃ他の分野の人と話が合うわけないよな、と思わなくもない。
統計力学の定性的な理解というか、なんとなくこんなことやっているんだぁというのだけで良いなら、そりゃもっと短く伝えることはできるだろう。
しかし、それでは、まったくもって意味がない。国語でも英語でも「要約せよ」という問題ほど悪問はない。著者は伝える上で必要だから書いているのである。過不足などない。それを「だいたい伝えてよ」というのは傲慢すぎるのではないか。そんなことできるわけがないのである。
さて実際はどうだったか、というところであるが、ここまでくると聴講者も超やる気のある人しか残っていないので、物理会をやっていて一番やりやすかったというのが素直な感想です。
流れとして、とにかくボルツマン公式を信じて、ほらフックの公式も証明できるじゃん、それって何が保証してくれているの?、でも状態数を数えるのだるくない?分配関数のが良くない?、このカノニカル分布ってどれくらい本質的なのか情報理論から考えようぜ、低温のときはもっとやばいこと起こるよ、みたいな順なのですが、かなり俺っぽいというか笑。ただ、具体的に分配関数使う例とかをあまり扱わなかったのと、量子統計がたった4回でまとめてしまったので定性的な部分が強くなってしまったかなとも思う(でも統計力学のエッセンス的なところはきちんとした)。この辺り、物性論会とかやっても良いかもしれないなと思っている。
この会の名付けから、どうしても統計力学をやるためにずっとやってきたんだ!って思いがちだったが、淡々と必要なこと・役に立つことを伝えるようにしたつもりである。そのうえで何かの参考になればとても嬉しい。
俺が知っている学部レベルの物理学はだいたいすべてウェブ上に残したので(まぁ実は残した分野はいくつかあるのだが)、これで「物理教えて」と言われたら(これを言ってくるのはバイオ系と化学系がほとんどなのでこれで事足りる)、「これ見て」と言って渡せるものができた。もう俺がいちいち物理を教える必要もなく、教科書を紹介する必要もなく、黙って自分のYouTubeと板書ノートを送れば良い。
というか、あなたは、俺についそう言ってしまって今このページを観ているのではないだろうか。これ以上の最短経路は俺は思いつかないので、約2年、寝食を忘れるなら1週間を費やせない人は、気軽にそんなこと言わないように。そんな簡単には習得できないからね。物理学から身に着けている俺の思考力を、あんまり舐めんじゃねーぞ?笑
高校物理、高校数学、微分方程式、ベクトル解析、線形代数、物理数学、力学・解析力学、電磁気学、量子力学、熱力学、数理統計学を前提として、YouTube上で統計力学について22回にわたって説明した板書ノートのリンクです↑。2023年11月29日から2024年6月21日にかけて講義しました。
著作権は髙橋慧にあります © 2024 Kei Takahashi
主に、熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相 - 高橋和孝 (著)を教科書として使いました。
適宜、統計力学 (1), (2) - 田崎 晴明 (著)、大学演習 熱学・統計力学〔修訂版〕 - 久保 亮五 (著, 編集)、統計力学 (岩波基礎物理シリーズ 7) - 長岡 洋介 (著)、非平衡統計力学―ゆらぎの熱力学から情報熱力学まで― - 沙川 貴大(著)などを使用しました。
こちらのファイルに関する質問や指摘、コメントに関しては、実名による投稿のみ受け付けております。(匿名の場合はコメントを削除します) -
メール(soudan.atamanonaka.2.718_attoma-ku_gmail.com)やTwitterのDM(@KayT0309)については匿名でも構いませんが、必ずしも返信するとは限りませんのでご了承ください。
【目標】
ミクロカノニカル分布、カノニカル分布、グランドカノニカル分布を理解し、それぞれを具体的な系へと適応できる。
【各回の概要】
1. やりたいこと、教科書など
概略の説明。平衡系と非平衡系の違い。古典統計と量子統計の違いなど。
2. 量子論からエネルギー固有値を求める
量子論の復習。3次元、N個への拡張。
3. 数学公式、状態数
スターリングの公式。超球の体積。状態数の導入。
4. 状態数の計算、理想気体
状態数を計算することで、それが理想気体のエントロピーと近しいことの確認。ボルツマン公式へ。
5. ゴム弾性
ミクロカノニカル分布を前提として、状態数を数えることでボルツマン公式を用いて、ゴム弾性を理解。フックの公式を導出。
6. 調和振動子型
ボルツマン公式を用いて調和振動子型ポテンシャルに閉じ込めれた気体についてエントロピーを求める。
7. 2準位系、Schottky比熱
前回、前々回同様に、2準位系について。
8. 磁性体、等重率の原理など
2準位系の応用として磁性体の例を紹介。ミクロカノニカルの基本として等重率の原理を説明。
9. 等重率続き、エルゴード
エルゴード仮説の紹介。
10. カノニカル分布導入
熱源に接している系としてカノニカル分布の導入。
11. 分配関数と熱力学量
分配関数から熱力学量を求める公式の導出。
12. カノニカル分布の基本的な例
ミクロカノニカル分布で紹介した、調和振動子型ポテンシャル、2準位系についてカノニカル分布でも確認。
13. 例続き、熱容量と揺動散逸定理
理想気体について分配関数から熱力学量を求める。熱容量から揺動散逸定理の1例をみた。
14. 古典統計力学導入
理想気体のエントロピーについて確認することで量子統計の必要性を説いた。また、古典統計での考え方の導入を行った。
15. 古典極限へ
ハイゼンベルグの不確定性原理の導出。分配関数を古典統計で。
16. 情報理論導入
シャノン情報量、条件付きシャノン情報量の導入。
17. 相互情報量
相互情報量の導入。二値対称通信路を紹介。ガウス型通信路を導入し、S/N比を導出。
18. KL情報量、非平衡エントロピー
KL情報量導入。カノニカル分布のとき、シャノン情報量が熱力学エントロピーと等しいことを証明。また、エネルギー一定のとき、シャノン情報量が最大になるときにカノニカル分布であることを示す。
19. 化学ポテンシャル、グランドカノニカル分布
熱力学の復習として化学ポテンシャルを説明。熱浴と粒子浴に接する系としてグランドカノニカル分布を導入。
20. 粒子数の平均値と分散、同種粒子など
大分配関数と分配関数の関係。また粒子数の平均値を導出。量子論の文脈で同種粒子を考えることで、フェルミオンとボソンについて説明。
21. スレーター行列式、フェルミ分布・ボース分布導出
パウリの排他率を示す。スレーター行列式の導入。粒子数の平均値の式より、フェルミ分布およびボース分布を導出した。
22. フェルミ縮退、ボース凝縮
フェルミ縮退とボース凝縮について、定性的に説明。それらの背景にある理論として場の量子論を紹介。低温物理の分野を紹介。
【総評・反省】
「統計力学やると価値観変わるぜ!」と思っていたのだけど、まぁそれは確かにそうなのだけれども、なんかちゃんと勉強して伝えれば伝えるほど「平衡系が偶然上手く行っちゃっただけなんじゃないか」「この考え方を非平衡や他のことにも応用しまくれるぜと思いすぎるのもどうだろうか」と思ったりもした。
守破離でいくと、俺は離のところに差しかかったのだろうか。それとも単純に理解が足りないのだろうか。どちらにせよ、非平衡系(ゆらぐ系の熱力学など)の理解を進めることは引き続き進めていきたいとは思っている。
平衡系の統計力学をやる前提として熱力学と量子力学の理解は必須であるが、統計力学をやりながらも、これら2つにも戻って復習できると良いと思う。それぞれの論理展開はお互いに助け合って成り立っているわけで、だとしたら勉強も同時進行が一番上手く行くのでは?(そうとは言い切れないか笑)
ミクロからマクロへの精緻な論理体系として統計力学はかなり良くできている。統計力学こそが、枚挙主義・還元主義から脱却できる価値観をもたらしてくれる、点と点をものすごくちゃんと結んでくれる、いわば「線の学問体系」なのだが、改めてここまでたどり着くまでの道のりの大変さをつくづく実感した。ここまでくるのに2年半。物理会すべてだと154回かかっている。ということは154時間。まぁだいたい時間オーバーしているので丸7日くらいかな?寝食忘れトイレも行かなければ、たった1週間で終わるわけです。(そんなわけあるか)
うん、でも「生命とは何か」「細胞を創る」とかやりたいなら、たったこれだけの時間で済むわけで、あーゆー人たちは普段からもっと偉そうなこと言ってるわけで、「これくらいさらっとやれよ」と思わなくもないのだけど笑、かなりきついのはきついよなぁ。そりゃ他の分野の人と話が合うわけないよな、と思わなくもない。
統計力学の定性的な理解というか、なんとなくこんなことやっているんだぁというのだけで良いなら、そりゃもっと短く伝えることはできるだろう。
しかし、それでは、まったくもって意味がない。国語でも英語でも「要約せよ」という問題ほど悪問はない。著者は伝える上で必要だから書いているのである。過不足などない。それを「だいたい伝えてよ」というのは傲慢すぎるのではないか。そんなことできるわけがないのである。
さて実際はどうだったか、というところであるが、ここまでくると聴講者も超やる気のある人しか残っていないので、物理会をやっていて一番やりやすかったというのが素直な感想です。
流れとして、とにかくボルツマン公式を信じて、ほらフックの公式も証明できるじゃん、それって何が保証してくれているの?、でも状態数を数えるのだるくない?分配関数のが良くない?、このカノニカル分布ってどれくらい本質的なのか情報理論から考えようぜ、低温のときはもっとやばいこと起こるよ、みたいな順なのですが、かなり俺っぽいというか笑。ただ、具体的に分配関数使う例とかをあまり扱わなかったのと、量子統計がたった4回でまとめてしまったので定性的な部分が強くなってしまったかなとも思う(でも統計力学のエッセンス的なところはきちんとした)。この辺り、物性論会とかやっても良いかもしれないなと思っている。
この会の名付けから、どうしても統計力学をやるためにずっとやってきたんだ!って思いがちだったが、淡々と必要なこと・役に立つことを伝えるようにしたつもりである。そのうえで何かの参考になればとても嬉しい。
俺が知っている学部レベルの物理学はだいたいすべてウェブ上に残したので(まぁ実は残した分野はいくつかあるのだが)、これで「物理教えて」と言われたら(これを言ってくるのはバイオ系と化学系がほとんどなのでこれで事足りる)、「これ見て」と言って渡せるものができた。もう俺がいちいち物理を教える必要もなく、教科書を紹介する必要もなく、黙って自分のYouTubeと板書ノートを送れば良い。
というか、あなたは、俺についそう言ってしまって今このページを観ているのではないだろうか。これ以上の最短経路は俺は思いつかないので、約2年、寝食を忘れるなら1週間を費やせない人は、気軽にそんなこと言わないように。そんな簡単には習得できないからね。物理学から身に着けている俺の思考力を、あんまり舐めんじゃねーぞ?笑