たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

子孫を残す意味は何ですか?

2020-06-15 20:25:14 | Weblog
 俺のTwitterのアカウントの固定ツイート欄にはお題箱を設置してあって、匿名で俺に質問やコメントを投げることができる。このお題箱ではツイートで答えることになっているため、相談メールと違って個人的ではなく、公開で回答できるのが面白い仕組みだ。
 さて、いつもはツイートで答えているのだけど、今日はこのブログで答えてみようと思う。久しぶりに140(×2〜4)文字以上で、長く答えてみたくなった。

[質問]


[回答]

 質問くださり誠にありがとうございます。

 質問に答える前に、少し内容を解析してみましょうか。子孫を残すことを訊いているのに、太陽系のことまで考えてしまうぶっ飛んだマクロ系としての視点が入っており、その次にいきなりファッションや料理などの些細な現象が出てくる点から、相当に独自の方向性に悩み込んでいると推察されますね(笑)。これはおそらく、単純な人間の欲望ではなく、もう少し大きな視点での回答が欲しいことに矮小化(いや、幾何学的には拡大化だけどね)するように魅せて、何か本当の質問を隠している様子に見えますね。

 これらを踏まえつつ、必要以上に、その「独自の思考」に付き合ってみましょうか。

 まず、人類は、子孫というカタチで遺伝子(gene)を残せる以外に、ミーム(meme)を残すことができます。ミームとか言うと難しそうですが、ここでは「物語」とか「考え方」程度に捉えてみてください。人類だけでなく、すべての生命は増えようとしますので、多くの人は遺伝子を残すことが生命の本質だと思っていますね。だから、貴女は「なにゆえ子孫を残すの?」と質問されたんですね。
 しかし、ここでは少し思い切って、「ミームを残すことこそが、我々人類の目的なんだ」としてみましょう。すると、遺伝子を残すことにばかり最適化する連中(これは具体的に言うと”恋愛工学好きなヤツ”や”婚活している男女”)というのは、自分では大したミーム(物語や考え方)を残すことができなさそうだから未来世代に託しているダメな奴らだ、ということになります。

 「我々」の範囲を人類から生命に拡大させてみましょう。
 考えてみれば、そもそも我々(生命)は、熱水噴出孔のエネルギーを出し入れすることで、はじめて生命になったのでしたね(地球における生命起源)。そこから真核生物へ、さらに魚類に進化しました。真核生物の一部(シアノバクテリアなど)が一次共生を行うことで陸上進出することができた植物が根を張り、陸上で光合成してくれたおかげで酸素が豊かに育まれ、動物も地上に行くことができました。そこから、鳥類は自由に空を飛びましたが、どんなに高い高度で飛ぶ鳥も海抜11000mほどが限界です。
 一方、哺乳類のなかで知的な生命体である人類は、道具を使うようになると、やがて彼ら同士で争うことになります。ホモサピエンスが、ネアンデルタール人などの他の人類に勝てた理由は、知的水準が高かったわけではなく、噂話が好きで物語作りが得意だったからだと言います。物語がなければ、その集団のリーダーや役割が定まらないですからね。ホモサピエンスは、宗教等の物語を作り、そのなかでも一神教であるキリスト教から再現性とその論理構築を唯一神とする「科学」を生み出しました。科学技術は進歩し、ついには他の星(月)にまで到達しました。
 このように、我々(生命)は、一時は争っていたとしても結果的にはみんなで協力して、外に外にと向かっています。外に行くために必要なのは、主に「増殖」と「進化」です(自己をメンテナンスする上でエネルギー代謝とコンパートメントも必要)。しかし、自然な「進化」はとても時間がかかります(最低でも1万年スケール)。我々(ホモサピエンス)は、その「進化」を「物語」や「考え方」(つまりミーム)で補うことで、飛躍的にスピードを上げることができます。

 ・・・だから、ミームも残せないようなヤツではいけないのです。
 増殖?つまりは、妊娠出産ですか?そんなの、流行りじゃありません。生命史は38億年ほどありまして、その大部分は「増殖」と単純な「進化」を繰り返していますが、ここ数千年-1万年の歴史を見なさい。我々の手元に残っているのは、遺伝子よりも考え方や物語じゃないですか。それを残そうともできない奴らが、仕方なく未来世代に託しているのですよ。
 ここ最近の少子高齢化を否定する論調は、「増殖」派が圧倒的大多数ってだけです。その彼ら彼女らだって、自分が大学に行っていないくせに子供には大学に行かせたがる。これは子供という自分の遺伝子の運び屋に、独自の「ミーム」を残せ!、と精一杯に主張しているのです。子供を大学に行かせたり、夢を負わせた結果、さらに晩婚化が高まり、生涯未婚率が高くなりました。だから、増殖しようとしなくても、ミームさえ残せれば良いのですよ!

 どうですか?
 こう言ってみたら、貴女の気持ちがラクになりましたか?

 気づかれていると思いますが、私は貴女が女性であることを確信しています。おそらく男が普通に訊くなら「結婚ってしなきゃいけないんですかね?」とストレートに訊くだろうし、本当にサイエンティフィックな質問をしたいのであれば「なぜ生命は増殖するんでしょうか?」と訊くでしょう。そうではなく、「子孫を残すのは何のためか?」、それを太陽系的な目線、そして「ファッション」や「料理」などを挙げています。この思考の飛び方は、ほぼ女性で確定だと思います。
 ちなみに、地球は太陽に呑み込まれたくないと”意志”を持っていると考えているんでしょうか?私自身はガイア理論は信奉していません(その理由はまた別の機会に)が、地球がひとつの大きな生命として考える人もいますね。まぁ、そういうふうに考えてみても別に良いですが、太陽に呑まれないように、けど光合成はできるようにと、地球が我々のことを憂でくれているのだとしたら、やはり、我々はより広い世界に、宇宙に向けて旅立つことを目的としていると言っても良いんじゃないかと思います。

 じゃあ、なんで、外に行きたがるの?
 それはもうわかりませんが、ここがどこなのかを知りたい、というのが一番強いんじゃないでしょうか。突然に生まれさせられて、いつ死ぬかもわからない日々に、どの「我々」も常に怯えていますからね。

 残念ながら、外に行くことに直接寄与できる生命はめちゃくちゃ稀です。「宇宙飛行士は難しいよね」という意味ではなく、ミームを残すことって、割とタフなんですよ。
 そのためには、必死で楽しむしかありません。それは、貴女がもし最愛の相手と子孫を残すことに最適化するんであっても、きちんと楽しもうとしないと達成されないでしょう。なぜなら、現代社会、何かに合わせていれば、末長く幸せに暮らせるわけではないからです。旧世代からの要請に加えて、時代の変わり目であるがゆえ、子孫を残すことは、ミームを残す並に難しい状況になってしまったわけですから。
 貴女が副産物かもしれないと思っている「ファッション」や「料理研究」は、ミームを残す上で、とっても重要です。というか、それらの分野で何かのミームを残せれば、もうそれだけで大成功と言って良いでしょう。

 よーするにですね(体力がない人はここから読んでくださいw)、なんでも頑張ってみることは良いことなんですが、頑張りすぎて笑えないんじゃ、本末転倒ですよ、っということです。
 どうして、この質問を私にしたのか、私にはよくわかります。それは、私が、誰よりも”楽しい”に最適化させて生きており、かつ生命科学の本質に多角的に詳しいから(←自分で言うなw)。そうですよね?それから、自分の頭で考えることはとても楽しいんですが、本当の意味で楽しむためには、基本的な論理の構築のやり方がありますから、もっともっときちんと勉強してみてから自分の頭で考えると、もっと楽しいと思います。

 まずは、よく寝ること。よく寝て落ち着いて、基礎基本ミーム(具体的には、高校数学と高校物理)を自分自身にインストールしましょう。その後に考えてみて、まだモヤモヤが残っていれば、、貴女にもミームを残すチャンスがあるかもしれませんね。それが無理そうなら、手っ取り早いところで相手を見つけて、さっさと子孫を残しましょう。子孫を残した瞬間にそんなモヤモヤは消え去ります。そのモヤモヤは生涯聞こえなくなるでしょう。このメリットは、予想以上に大きいですよ。っていうか、貴女はその取っ掛かりをすでに体験済みで、知っているんじゃないかな?
 そうなれば、そんなことで深夜に私に質問しなくて済むかもしれません。。いや、まぁ、そんな2wayじゃなくても、もっと単純に、、隠れて質問するようなことをせずに、素直になれば良いと思いますけど、、ね?笑

 っというわけで、またなんでも質問してくださいね。

子孫を残す意味は何ですか? -2020.6.15.ツイキャスより-
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