この状況はいつまで続くのだろうか、と思っていたら、彼が撹乱を起こしにやってきた。
しかし、それは決して、俺と彼が所属している組織としての状況下を嘆いているわけではない。
彼は、物理学が得意で、すっかりご執心のようだ。その話は表面的には確かに面白い。
俺がこれまで、知らなければならないかもしれないと直観しながらも、出会えてこなかった事柄について、彼は悉く出会ってきている。そして、その話そのものは非常に有用であるし有益そうだ。もう少し順序立てて話してくれ、と思うことはあるけれど。熱力学や統計力学は、バイオロジーの理解について全く別の視点を与えてくれるらしく、それを多少なりとも吸収することは、こっちに帰ってきてから、、いや、向こうにいてもそんな機会はあまりなかった。研究者としての側面では、戻ってきた意味があるのかもしれない、と思わせる側面は確かにある。
だけど、俺が彼から最も知りたいことは、そこではない。
彼は、俺が渇望している事柄について、さらりと言ってのける。
「まぁ、もういっかな、っと思っちゃって」
正解が決まっている事柄をひっくり返すには、とても勇気がいる。それが自分や相手の要因ではなく、彼の言葉で言うところの「マクロからの要請」であれば、なおさらだ。
しかしながら、彼は呆気なくひっくり返し続けてきた過去がある。その真意はどういったものなのか。
真っ直ぐに訊けば、きっと彼はニヤニヤ笑いながら、こう言うだろう。
「え?やっぱり、そうなんですか?w」
そのすべてを見切っていたかのような、ハッタリとも真実とも見分けがつかない憎たらしい顔をこれ以上世の中に野晒しにしてはいけないという気持ちもあるが、それ以上に、ジャッジを適切に行わないことで、あらゆる関係性が破壊し尽くされる恐怖ゆえに、真っ直ぐには訊き出せない。
「そんなことするわけないじゃないですか。だって、一番信頼しているんですから」
と言いながらも、彼の暇つぶしや娯楽として、裏で破壊し尽くしてくることが、容易に想像できる。そう、真実を抽出し続けてしまうことに溺れている彼が、この関係性さえも笑いながら破壊してしまいかねない、そして、それに納得しかねない自分自身が最も怖いのである。
事実、彼は降ろしてフィッティングすることで、過去の”Just a good guess”を引き摺り出し、継続不可能な決定的な説明を行い、それに対して俺は納得してしまっている。取るに足らない些細なことでさえ、これだけ揺らぐのだ。The sandcastle crumbled little by little with respect.
どんなにそこに崇高な論理や、降りてくる直観があったとしても、そうなりたくない現在の自分が未来の自分への要請を与え続ける。そんな状況すらも、
「過去は変えられるけど、未来は変えられないのですよ」
と論理化されてしまう。でも、説明可能なことが、すなわち幸福とは限らないのだ。
「お困りのようですね?」
別に困ってないです!
「私の周囲にいると、すべてにいきなり懐中電灯が当てられちゃうので、見たくなかった情報まで抽出されてしまうんですよ」
やかましいわ!!
「では、端的に、、結論だけを述べましょう。時空を超えること。それこそがホンモノ。僕らが本当に達成しなければならないことなのです」
は?
「時間と空間について記述し続ければわかることです。物理を勉強してください」
また、わかるような、わからないような、微妙な表現をしてくる。
あの撹乱を、組織内で留めようと努力してきたが、、きっと簡単にこの心の内部まで到達してしまうだろう。その時に、俺は彼を許せるだろうか?
しかし、それは決して、俺と彼が所属している組織としての状況下を嘆いているわけではない。
彼は、物理学が得意で、すっかりご執心のようだ。その話は表面的には確かに面白い。
俺がこれまで、知らなければならないかもしれないと直観しながらも、出会えてこなかった事柄について、彼は悉く出会ってきている。そして、その話そのものは非常に有用であるし有益そうだ。もう少し順序立てて話してくれ、と思うことはあるけれど。熱力学や統計力学は、バイオロジーの理解について全く別の視点を与えてくれるらしく、それを多少なりとも吸収することは、こっちに帰ってきてから、、いや、向こうにいてもそんな機会はあまりなかった。研究者としての側面では、戻ってきた意味があるのかもしれない、と思わせる側面は確かにある。
だけど、俺が彼から最も知りたいことは、そこではない。
彼は、俺が渇望している事柄について、さらりと言ってのける。
「まぁ、もういっかな、っと思っちゃって」
正解が決まっている事柄をひっくり返すには、とても勇気がいる。それが自分や相手の要因ではなく、彼の言葉で言うところの「マクロからの要請」であれば、なおさらだ。
しかしながら、彼は呆気なくひっくり返し続けてきた過去がある。その真意はどういったものなのか。
真っ直ぐに訊けば、きっと彼はニヤニヤ笑いながら、こう言うだろう。
「え?やっぱり、そうなんですか?w」
そのすべてを見切っていたかのような、ハッタリとも真実とも見分けがつかない憎たらしい顔をこれ以上世の中に野晒しにしてはいけないという気持ちもあるが、それ以上に、ジャッジを適切に行わないことで、あらゆる関係性が破壊し尽くされる恐怖ゆえに、真っ直ぐには訊き出せない。
「そんなことするわけないじゃないですか。だって、一番信頼しているんですから」
と言いながらも、彼の暇つぶしや娯楽として、裏で破壊し尽くしてくることが、容易に想像できる。そう、真実を抽出し続けてしまうことに溺れている彼が、この関係性さえも笑いながら破壊してしまいかねない、そして、それに納得しかねない自分自身が最も怖いのである。
事実、彼は降ろしてフィッティングすることで、過去の”Just a good guess”を引き摺り出し、継続不可能な決定的な説明を行い、それに対して俺は納得してしまっている。取るに足らない些細なことでさえ、これだけ揺らぐのだ。The sandcastle crumbled little by little with respect.
どんなにそこに崇高な論理や、降りてくる直観があったとしても、そうなりたくない現在の自分が未来の自分への要請を与え続ける。そんな状況すらも、
「過去は変えられるけど、未来は変えられないのですよ」
と論理化されてしまう。でも、説明可能なことが、すなわち幸福とは限らないのだ。
「お困りのようですね?」
別に困ってないです!
「私の周囲にいると、すべてにいきなり懐中電灯が当てられちゃうので、見たくなかった情報まで抽出されてしまうんですよ」
やかましいわ!!
「では、端的に、、結論だけを述べましょう。時空を超えること。それこそがホンモノ。僕らが本当に達成しなければならないことなのです」
は?
「時間と空間について記述し続ければわかることです。物理を勉強してください」
また、わかるような、わからないような、微妙な表現をしてくる。
あの撹乱を、組織内で留めようと努力してきたが、、きっと簡単にこの心の内部まで到達してしまうだろう。その時に、俺は彼を許せるだろうか?