たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

どうして「話せば分かる」と思ってしまうのか

2023-07-02 03:42:00 | Weblog
 どちらかが信頼関係を裏切る瞬間、実は裏切る側はそれを認識できていないことが多い。
 完全に信頼が消失しているにも拘らず、話し合おうとしたり、みんなで集まる機会を作ろうとしてしまうのは、幻にしてしまった何かの繋がりの実在を信じているからに他ならない。

 「話せば分かる」というのは、誰もが陥ってしまうトラップ。
 昨今、どんなに酷いことをしても、後から話せばどうにかなると思っている人が増えている気がする。それは、その人とどれくらいの信頼関係を構築できているか可視化されていると勘違いしやすい技術が浸透してしまったことにも原因があるかもしれない。自分の投稿に沢山のいいねやスタンプがついていれば、それだけで支持されていると思いやすい。毎日毎日、顔をつきあわせなくても会話ができてしまえば、何かの信頼関係があると思ってしまいやすい。

 当たり前だが、身内を殺されたとして、話して分かるわけがない。話しても無意味である。
 これが極端な例として、日常に還元してみてほしい。酷い仕打ちをして、コミュニケーションで胡麻化して、つっこまれても良いようにディフェンスして、有無も言わせないのであれば、それはただオラオラしているだけであり、ただ傲慢なだけであり、潜在的にものすごく敵を増やしている行為なのだ。それに気が付いているか?
 話しても分からないことがあるからこそ、大人同士の円滑なコミュニケーションのために法や契約が設定されている。にも拘らず、「部活やってんのか?」「いつまで大学のサークルノリなんだよ」という"いい大人"があまりにも目立つ。

 逆にそれまでに信頼関係を構築できていれば、話したら分かるかもしれない。熱い気持ちを持った結果としての行動や言葉が原因のトラブルなら、もしかしたらその理由を分かってもらえるかもしれない。話して話して、とことんに掘り下げて、お互いに傷つく気で喋りつくしてみれば、もしかしたら「裏切り」は勘違いかもしれない。けど、誤解は解けても言葉は遺るし、構築してきた信頼関係がニセモノだったのかもしれない。そのリスクをかけても良いのであれば、話す価値はある。

 そう思ってもらえない場合、話しても無駄。話すだけイライラするくらいなら、そんな機会を設けることにデメリットしかないだろう。
 もっとリスクの高い行為だってある。話してもらえたとして、本音で話しているフリをされてしまうことだ。相手は、こちらのことを、人間関係だと思っておらず、下手したら生命現象だとも思っておらず、ただの物理現象だと思っていて、仕方なく何か得になることを探している可能性だってある。

 信頼とは、過ごした時間の長さと双方の本音度合いを変数とした関数である。長い時間を過ごしていても信頼が得れていないことはあるし、本音は片一方だけでは無意味だ。
 よく生じてしまうのは金銭による信頼の勘違いだ。たいていの社員はカネが貰えるからこそ、拘束時間が長くとも我慢するし、本音を言っているフリもする。別にその会社が好きなわけじゃないのだ。それを信頼だと勘違いしてしまうand/or勘違いしたくなる経営者は多いだろう(だからこそ経営者は孤独であり、占いや宗教や女遊びやコンサルにハマりがちになる)。重要なのは、金銭や権威が発生していない状況でも自分にどれくらいついてきてくれるか?なのだが、ほとんどの人間は自分が見たいものしか見ようとしないので、認識できない。
 で、気が付いた頃には、カネや権威が実力と乖離し過ぎており、深海でペシャンコになる等の大変な事態へと発展してしまう。

 社会に出て、ある程度の権威や言葉を得てしまうと、誰もバカヤローとは言ってくれない。自分がどんなにバカヤローでも、そう指摘してくれる人は、極めて少なくなる。
 だから、魂に触れるコミュニケーションをしようとして、バカヤローと言ってきたヤツは異常者だとレッテルを貼りたくなる。貼ろうかどうかと迷っていると、カネと安定のために群がってきただけの信頼関係が本来は皆無なのにも拘わらず「俺は彼を信頼している」と思ってしまっているクズが、「あんなやつ、社会常識ないからヤバいですよ。縁を切りましょう」と嘯いてくる。そして、孤独が加速するのだ。

 だから、話しても無駄だという"場"は加速する。どんどんクズしか周りにいなくなる。指数関数的に、ね。
 一言だけ生の言葉を聴いてほしい。「ごめん」って。「誤解だよ」って。そうしたら!って思ってしまうのは、信頼関係を測り間違えていた証拠。

 …だから、、話しても無駄。確かにそれはそうかもしれない。
 けど、俺の考え方を、ここでそうやって盗むのは勝手だぜ?許してやるよ。
 さぁ、そして、どう飛ぶのか。面白いもんを見せてみろよ。
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