たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

量子力学_たかはしけいが統計力学までお伝えする物理会

2024-06-05 01:04:41 | たかはしけいが統計力学までお伝えする物理会
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 高校物理、高校数学、微分方程式、ベクトル解析、力学・解析力学、電磁気学、線形代数、物理数学を前提として、YouTube上で量子力学について25回にわたって説明した板書ノートのリンクです↑。2023年2月20日から2023年11月14日にかけて講義しました。
 著作権は髙橋慧にあります © 2024 Kei Takahashi

 主に、基礎量子力学 (KS物理専門書) - 猪木 慶治 (著), 川合 光 (著)を教科書として使いました。
 他に参考とした本は、量子論の基礎: その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ 別巻2) - 清水 明 (著)詳解理論応用量子力学演習- 後藤 憲一 (編集), 西山 敏之 (編集), 山本 邦夫 (編集), 望月 和子 (編集), 神吉 健 (編集), 興地 斐男 (編集)量子力学 (上) (物理学叢書 2) - シッフ (著), 井上 健 (翻訳)、また東京大学の上田正仁先生の量子力学II講義ノートなどを参考にしました。

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【目標】
 シュレディンガー方程式を用いてエネルギー固有値・固有状態が計算できるようになる。
 ブラケットの表記に慣れ、スピン自由度について理解する。

【各回の概要】
 1. ダブルスリット、導入
 ダブルスリットなどの例を用いて量子論の必要性についての導入を行った。古典論と量子論の違いについて天下り的に紹介。
 
 2. ドブロイ波、複素数、波束と確率密度
 ドブロイ波の意味、複素数に関してのまとめ、波束と確率密度に関する解釈についてまとめた。

 3. ハミルトニアン、演算子、期待値
 ハミルトニアンを量子化の手続きとして記述。演算子や期待値の意味など。

 4. ポアソン括弧、古典極限とか
 ポアソン括弧の復習、交換子、エーレンフェストの定理の紹介。

 5. 古典極限続き、不確定性原理
 エーレンフェストの定理の証明、平面波より不確定性原理の導出
 
 6. 不確定性続き、具体例、束縛問題
 不確定性原理の続き、束縛問題における具体例を紹介。

 7. 無限井戸型ポテンシャル
 1次元の束縛状態。定常状態。無限井戸を解く。

 8. 有限井戸型ポテンシャル
 前回に引き続き、有限井戸を解く。
 
 9. 調和振動子、エルミート多項式
 束縛問題の続き。調和振動子へ。エルミート多項式の各々の公式についてのまとめ。
 
 10. エルミート多項式続き
 エルミート多項式の続き。エルミート演算子。生成消滅演算子など。
 
 11. エルミート多項式から生成消滅演算子
 上記についての計算。

 12. 連続の式、透過率と反射率
 連続の式の導出。束縛問題を離れ、透過率、反射率の問題へ。

 13. 透過反射続き、トンネル効果
 前回の続き。トンネル効果紹介。
 
 14. トンネル効果続き、3次元へ
 中心力場のシュレディンガー方程式。球面座標によるシュレディンガー方程式。
 
 15. 球面調和関数
 θ成分についてルジャンドルの微分方程式に帰着するところまで。
 
 16. 球面調和関数続き、ルジャンドル多項式
 ルジャンドルの陪関数。球面調和関数の導出まで。

 17. 角運動量演算子
 角運動量演算子の種々の性質。その固有値問題。

 18. 動径方向
 中心力場のシュレディンガー方程式の動径方向について。

 19. 二体問題、水素原子
 二体問題についての確認。水素原子の具体例。

 20. 水素原子続き
 水素原子続き。
 
 21. 量子力学体系、線形代数とヒルベルト空間
 量子論の構築についてヒルベルト空間を紹介。ブラケット導入

 22. ブラケット続き、物理量、時間発展
 量子論の基本的な公理について。

 23. ユニタリー、ハイゼンベルグの運動方程式
 ユニタリー変換とユニタリー演算子について。ハイゼンベルグ描像について。

 24. ハイゼンベルグの運動方程式、軌道をブラケットで
 ハイゼンベルグの運動方程式導出。シュレディンガー描像との比較。同時固有状態など。
 
 25. 角運動量演算子、スピン
 角運動量演算子についておさらい。スピンについての紹介

【総評・反省】
 「なるべくオーソドックスに統計力学をやる上で必要なことだけを最低限話すようにしよう」
 「深入りせずに最低限で良いんだ」
 と何度も唱えながら計画を立てたり、その日やることを決めたり、方針を決定していったはずなのだが、どんどんボリューミーになってしまった気がする。「ぶっちゃけ天下り的に与えられたシュレディンガー方程式で無限井戸が計算できればそれでいいんじゃないか」と思いながらも、すぐに「まぁでもこれくらいはやらないと」が追いかけてくる。終わってみて、この辺りはもう少しだけ深堀した内容をお伝えしたかったかも?と思ったりする箇所もあるけど、聴講者はそこそこに消化不良を起こし気味だったので(ここでドロップアウトした人も多かった)、まぁこんなもんで良いのではないかと思う。

 物理学科の学部教育では、量子力学は理論研以外の先生が受け持つことは少ない気がする。というか実験の先生で量子力学を受け持っているケースは(あるんだろうけど)聴いたことがない。それは実はとても良くないことかもしれなくて、論理展開だけが物理ではないし、聴講者のうち圧倒的大多数は将来理論屋にはならないわけで、でも実験研究を進捗させるうえで量子論の考え方が不必要かというとそんなことはないわけだから、理論研じゃない人間が最低限これは必要だろと思うところをまとめるということにはそれなりに価値はあるのかもしれない。
 実験が!というわりには、お前、摂動論も変分法も散乱問題も扱ってねーじゃねーか、というのはその通りで笑、まぁでもこの会は統計力学やるのが目的だったから許して♡正直、もう少し時間をかけてこういうところをやっても良いかなぁと思ってはいるけど、とりあえず統計力学まで終わってからかな、と思う。

 少なくともスピン導入までの量子力学で、俺がやったこの順番が一番オーソドックスかなぁと思っているのですが、どうだろうか。
 昨今Twitterで見られるような、公理系から紹介してく量子論や、量子情報から始める感じとかは、一部のマニア以外はわけわからんじぇ状態になるようなやり方だと思っているので(2週目以降なら良いんだけどね)、前提知識(解析力学、物理数学あたり)までをマスターできた人が聴いたときに、きちんと手を動かして復習すれば8割の人がちゃんと理解できるくらいのやり方をもう少しネットで崇めるべきだと思っているのよね。量子力学の基礎理解に解析力学は要らない!とかいう人までいるけど、はいはい君はすごいでちゅね、いやもうそういうの良いから!以外の感想がない。
 物理の人、とかくそういう「自分は本質的だから、最初から本質的なやり方のほうが理解できる。自分は!」みたいなテイスト出してくるので、うざがられるんですよ?それが量子力学や量子論だと色濃く出やすいよなぁ。

 物理屋が観ると「簡単じゃん。当たり前のことしか言ってないじゃん」
 まだやっていない人が勉強すると「これやべぇ難しいって」

 となるのが(量子力学のカリキュラムとして)ベストだと思っているのですが、ほんと、どうだったろうか。(→聴講者の皆さん)
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