昨年のクリスマスイヴに書いた「
研究室の選び方 - 『このラボだっ!』と決めるその前に -」が、かなりアクセス数を伸ばしてくれていて、皆さま、ありがとうございます。
googleで「研究室 選び方」で検索すると一番はじめにでてくるので、マジでちょっと怖いですが(笑)、何か参考になるところがもしあれば幸いです。
っというわけで、今回も、このページの総アクセス数を増やすために(笑)、この記事を書きます。
どこの研究室でも、たいてい週に一度、論文紹介をしたり、進捗状況を話したりします。それを「研究室ゼミ(ラボミーティング、研究室セミナー)」と言います。
俺は昔から研究室ゼミに不満を感じることは多くて(笑)、もっとこうしたらいいんじゃね?、ってことを周囲の皆さんに言わせてもらっていると、「じゃー、どういうのが理想なんだよ!」と言われることが多いので、書いておこうと思います。
心の底で、研究室のゼミは非常に無駄だ、っと思っていたり、くだらない、っと思っている方は、実はかなり多いんじゃないかと思います。
この記事では、主にその方たちに向けて、これから何ができるか、を語りたいと思います。
まぁ、僕はただの学生なので、まったくなにもわかってない学生が…ぅんたらかんたら、、って感じで、読んでみて下さい。
研究室で生活するために、かなり重要な割合を占めてくる「研究室ゼミ」。
研究室を準拠集団(各々のメンバーが心から所属していたいと思っている集団)にするためには、「研究室ゼミ」がその命運を握っている、と言っても過言ではないと思う。
なので、より良いゼミを効率的に実施するために、何が大切で、何が必要で、何が不要で、何がカギなのかを、ポイント別に話したいと思います。
[1]全員が喋る
研究室のゼミで一番大事なことは、全員が喋ることです。
全員ってのは、本当に、全員です。学部生も、入ったばかりの院生も、テクニシャンも、例外ではありません。全員が喋る、ってことが、めちゃくちゃ大事です。
研究室のメンツって、多くても20人です。しかも、90分以上の時間を要することが多いです。全員が喋れるくらいの時間は余裕であるんですが、それでも、たいていのラボでは、喋る人が決まってしまっています。
ディフェンス(発表者)側が喋るのは当然ですが、オフェンス(リスナー)側もきちんと喋らないと、良いゼミにはならないし、(ゼミを通して)信頼関係を築こうとするなら当然ですよね?
実は、学部生やM1ってのは、質問しやすいはずなのです。だって、研究内容について、よく知らなくて当然ですから。
にも拘らず、入ってきたばかりの学生の多くが質問しないなら、それは、スタッフと上級生が悪いです。質問しやすい雰囲気を創る、ってことが意識できていないのです。
どんな集団でもそうですが、何でも発言しやすい雰囲気は、創ろうと想わなければ発生しません。前にも書きましたが「異常」になりやすい研究室内の空気ですから、研究室ゼミで、ディフェンスとPI(Principal Investigator)だけしか喋らなかった回が一回でもあるラボは、その根幹を疑うべきです。根深い問題が出てくるはずだろうと思います。
では、全員が喋る為には、どうしたらいいか?
簡単な解決策は、オフェンス側でよく発言する人が、(オフェンス側のとき、ディフェンス側のときに関わらず)それとなく喋らない人に対して意見を求めれば、みんなが強制的に参加せざるをえません。これは即物的な解決策ですが、まず、すぐできることとしては、どんなラボでもできることだし、簡単です。
研究室で一回もオフェンスしたことが無い人、オフェンスできない人が、すぐにできるオフェンスのやり方があります。
「○枚目のスライドの、その部分、よくわからなかったんで、もう一度説明してもらってもイイですか?」
俺も、昔(っと言っても学部3年生以下のときね、ふっふっふ(笑))、よくこの質問ばかりをしていました。っというか、この質問は、学会でも、セミナーでも、出無さすぎです。こういう質問は、もっとあってしかるべきで、日本の研究者やその卵たちが、いかに不勉強で、わかったフリばかりをするのかを物語っています。
拙くても、幼くても、くだらなくても、全員が喋ることが達成されるなら、まずは、それでかまわないのです。
まずは、全員が喋る、っということで、スタートラインに立てます。全員が喋るゼミをすることは、ゼミとしての最低ラインです。
これができていない研究室は、英語でゼミを行う、などの、わけのわからない自己満足をする前に(メンバーに外国人がいるならある程度は仕方ありませんが、英語を支持しまくる理由は、自然科学、自然現象とは解離していることをもっと思いだして下さい)、まずは全員が喋ることを目標にすべきです。(ちなみに、[1]と[2]ができている研究室のみ、英語でゼミを行う価値が本当にあります。)
[2]アウトラインを質問しその答えを全員で考える。
はっきり言いますが、(少なくとも日本の)ラボには、知識自慢をするオフェンスや細かすぎるディテール(詳細)を質問するバカが多すぎます。
知識自慢や細かすぎるディテールの質問は何も生産しないどころか、入ってきたばかりの人に質問しにくい空気を形成させることにものすごく寄与しますし、自分勝手で迷惑で、何より時間の無駄です。
ディテールを質問すれば真面目で有能だと思われる、っという幻想は、ラボに入ってから、なるべく早い段階で捨てましょう。
細かいディテールの質問や知識自慢をしてイイのは、入ってきたばかりの人だけです。喋ることがないから、仕方なく頑張ってる感をアピールするために質問する、ってのが許されるのは、一番年下の特権です。
M2やドクターの学生はもちろん、PIやスタッフがするなんて、以ての外。本当にディテールを質問したいのなら、発表終了後に、個人的に訊くべきです。なるべく、全員で共有する価値のある質問をすることができるように、努力しましょう。
ディフェンスには、アウトライン(大きな流れ)があります。論文紹介でも進捗でも、研究背景から問題点を述べてフロンティアラインを示し、本研究の目的を述べ、それに至るためのメソッド(マテメソ)を主張し、結果を示し考察し、結論を述べます(+今後の展望)。
その流れの中で、論理的な解釈をしようとしたときに、純粋にわからなかったところを明確に示せば、それが本質的な質問になりますし、周囲は勝手に優秀な人だっと思ってくれます。そのほーが手っ取り早いし、全体の理解を活性化するじゃないですか。
それから、科学的主張や根拠となるデータに懐疑的な意見を述べたい場合もあるでしょうが、その場合にも、なるべくアウトラインに即し、質問者がその解決策まで考究すべきです。
問題点の指摘は中高生でもできます。必ずしも解決策を見出す必要はありませんが、重要なのは解決策を見つけようとすることであり、そういう風なことを考えないで、ディフェンス側にすべてをまかせるようなオフェンス、つまり、投げっぱなしの質問は、なるべく避けた方がイイでしょう。
一つの問題に対してみんなで解決策を探る、っというスタンスこそが、信頼関係を生むからです。
[3]他のメンバーの発言を意味のあった行為に仕立てる。
正直、[1]と[2]だけで、俺はかなり満足しますが、その上のランクを目指す時、一番に必要になるのが、これです(なので、ここからは、かなりアドバンスな内容になります(笑))。
[1][2]ができている研究室ゼミでは、多角的にいろんな発言が出るでしょうから、その場合よく起こることなんですが、せっかく誰かがやっとの思いで発言したことなのに、無視されがちになってしまったり、アイツはやっぱダメだなーってなっちゃうことがあります。
こういう時、率先して、さっきの発言を持ち出して、「先ほど○○君が言ってたことに似てるんですけど、これこれはー…」っと、あまり関係無いことでも、ちょっと偽でも、発言できたなら、それをされた人は、「さっきの発言は意味のあることだったんだー」ってなって、次に発言するときに臆病にならなくなります。
簡単に言えば、「軽く褒める」のです。
ディフェンスでもオフェンスでも、ちょっとでも誰かに認められる、っということが、どれほど救いになるか、それは、自分自身の胸に手を当てれば良く分かることだと思います。自分がされて嬉しいことは、他人に率先してやってあげてね。
「嘘はいかん!」っと仰る思考力の乏しい方もいらっしゃると思いますので(笑)、述べておきますが、どんなに本研究のアウトラインを喋っていても、未来を創るために行う行為である研究ですから、それ自体に価値はありません。
「未来」を見つめるのが大事であって、そのために、研究室内のほんのちょっとの偽で、やる気をだしてくれるなら、そのほーがいいじゃないですか。「あの時は、あー言ったけど、本当はさー、」っと言えるくらいの信頼関係をすぐに築くためにも、相手の意見を無理矢理受け止める、ってとっても大事なことです。
これは、多数決で決まっている意見の反対の意見を粗末にしない、っということにも繋がります。「全員一致の決議は無効である」という社会科学の考え方もあります。
先生を中心とする空気に飲まれすぎてはいけませんよ。
[4]発表人数と時間について
さきに結論を述べます。週一のゼミで、
・理論研(シミュレーションのみも含む)の場合、最大2人まで3時間以内。
・実験研の場合、1人のみ2時間以内。
が理想です。
[1]と[2]を前提にして考えた場合、これ以上やることに意味はありません。まず集中力が持たないし、みんなが発言して、本質的な質問ばかり出ていたら、時間はすぐに経ってしまうでしょう。
理論研は、ディスカッションが命です。なので少し長めにしてみましたが、やっぱりダラダラ喋って得られる智慧は少ないはずです。
実験研は、ディスカッションも大事ですが、実験操作を共同でやることも大事です。なので、理論研よりも短くしました。
こうすると、ディフェンスが回ってこなさすぎてダメだ、っとなりそうですが、それは、関連する人同士のミーティングや自主ゼミなどで補えばイイですし、そもそも、各々の院生やスタッフの発表の場が、研究室内のゼミだけしかないようなら、それこそが問題なのです。
強くなるためには、どんどん、よそで発表しないといけません。これを見て下さっているPIの方で賛同してくださる方は、ぜひ、色々な発表の場を与えることを、検討なさってみてください。
[5]みんなが楽しいと感じるゼミにする。
本当は、実は、これが一番大事なんですよね。でも、みんなで楽しむためには、[1]~[4]が必須だと思います。
いくつかメソッドがあります。
まずは、日常用語を織り交ぜながら、発表したり質問したりしましょう。専門用語はカッコイイですが、入ってきたばかりの人にとっての耳慣れない言葉は恐怖でしかありません。ですから、専門用語と日常用語は、半々くらいに使い分けられたらイイと思います。
逆に、日常生活で、ちょこっと専門用語を使ってウケを取ることも大事なことですね。
あとは、発表内容に冗談を一つは入れるようにするとイイと思います。
なかなか難しいですが、楽しませようという心は伝わります。それが滑っても、無反応でも、やったことに意味はありますから、チャレンジしてみたら面白いと思います。
内容が選べる場合は、なるべく引用数が多い論文や一般関心があるテーマを選ぶことが大事です。論文紹介なら、NatureやScience、PRLやJACSやCELLから、選ぶと良いでしょう。
それだけ、その発表の価値を認めてくれるはずだからです。
もし、[1]~[5]までをきちんとできるラボなら、間違いなくそのラボはみんなにとっての準拠集団です。
そうならない限り、本当の意味で、楽しいモノづくり、価値のある研究は、できません。信頼関係こそが、良い研究を行う酵素なのですから。
たかがゼミで、これだけのことができてしまうなら、とってもコスパーがイイし、楽しい。
ね、もっと真剣に、研究室ゼミのことを考えてみましょうよぉ?
研究室ゼミの理想