たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

熱力学_たかはしけいが統計力学までお伝えする物理会

2024-06-03 00:24:21 | たかはしけいが統計力学までお伝えする物理会
 Google drive 熱力学_物理会

 高校物理、高校数学、微分方程式、ベクトル解析を前提として、YouTube上で熱力学について21回にわたって説明した板書ノートのリンクです↑。2022年10月17日から2023年4月26日にかけて講義しました。
 著作権は髙橋慧にあります © 2024 Kei Takahashi

 主に、熱力学 — 現代的な視点から - 田崎 晴明 (著)の第2-7章を教科書として使いました。
 他に参考としたのは、熱力学の基礎 第2版 I 熱力学の基本構造 - 清水 明 (著)

 こちらのファイルに関する質問や指摘、コメントに関しては、実名による投稿のみ受け付けております。(匿名の場合はコメントを削除します)
 メール(soudan.atamanonaka.2.718_attoma-ku_gmail.com)やTwitterのDM(@KayT0309)については匿名でも構いませんが、必ずしも返信するとは限りませんのでご了承ください。

【目標】
 平衡状態、第二法則、Bornの熱力学的正方形を理解する。

【各回の概要】
 1. 高校の復習と方針
 気体分子運動論、第一法則、マイヤーの公式を確認。

 2. 偏微分
 熱力学でよく使う偏微分、全微分を確認。

 3. 偏微分続き、系の種類、示量示強
 等温操作と断熱操作について概略を説明。

 4. 熱機関、平衡状態
 熱機関の定義。平衡状態の説明、相加変数、示量変数、示強変数の定義。

 5. 平衡状態、操作、ケルビン
 等温操作の詳細な内容へ(3章)。ケルビンの原理を経験則として導入。

 6. ケルビンの原理続き、最大仕事
 エネルギー保存則を復習。最大仕事の原理を結果として紹介し、最大仕事の性質から示量性を確認。

 7. Helmholtz自由エネルギー、圧力
 最大仕事からHelmholtzの自由エネルギーを定義し、その性質を理解した。また最大仕事と体積変化との関係から圧力を記述。

 8. 断熱操作とエネルギー
 断熱操作の詳細な内容へ(4章)。系の種類も確認。

 9. 断熱続き、エネルギー
 エネルギー保存則の要請。断熱仕事から内部エネルギーを定義。

 10. エネ続き、理想気体例
 定積熱容量の定義。理想気体の例を確認。

 11. 熱導入、カルノー定理
 熱の導入(5章)。カルノーの定理を紹介。一部を証明。

 12. カルノーサイクル、カルノー定理証明
 カルノーサイクル紹介。カルノーの定理をこれまでの等温準静操作、断熱準静操作、ケルビンの原理から示した。

 13. 熱効率、クラウジウスの不等式
 熱機関の定義、クラウジウスの不等式を紹介。冷却効果について(清水本11章)

 14. 暖房、エントロピー導入
 暖房効果について。エントロピーの導入を行った(6章へ)。

 15. エントロピーと温度
 エントロピーの温度依存性について証明した。

 16. エントロピーと可逆性へ
 理想気体の例。Plankの原理からエントロピー増大則を説明。エントロピー原理。

 17. エントロピー原理、クラウジウス、ヘルムホルツへ
 エントロピー原理の証明。クラウジウス流のエントロピー。エントロピー増大則(最大仕事の原理)を導出。

 18. ルジャンドル変換
 ルジャンドル変換について詳しく説明(清水本の12章)。

 19. 三重点と完全な熱力学関数
 ルジャンドル変換の続き。三重点についての説明。多変数関数の凸性について。

 20. エントロピーの要請
 エントロピーの要請の説明(清水本3章)。エントロピーとエネルギーの凸性。

 21. 自由エネルギー、エンタルピー
 ルジャンドル変換による導出。化学ポテンシャルなど(7章) 

【総評・反省】
 熱力学を説明するかーとなったときに、「まぁフェルミとかでやる?なんやったらアトキンスとかでやる?」とも思ったんだけど、構成を考えてみると俺個人がつまらないなぁと思ってしまい、「俺がやるならやっぱり田崎本か清水本が良いか」と思って、「けど清水本だといきなりエントロピーの定義からだもんなぁ(ギブス流)、温度が天下り的に降ってくるほうが直観的には良いだろう。カルノーの定理やカルノーサイクルも詳しいほうが良いし」と思って田崎本をメインにした。熱機関やルジャンドル変換などはむしろ清水本のが分かりやすい(と俺は思っている)のでそちらを適宜使いつつ、最終的にエントロピーの要請を清水本から引っ張ってきたかたちになった。
 田崎本ならすげぇ分かりやすいだろう!と思ったが、「熱力学なのに熱がずっと出てこない」と思った聴講者は多かったらしく(ゆーて清水本でも7章なんだけどなぁ)、なかなか難しいところだ。

 やはり、熱力学をまっさらな状態からやるなら、いきなり田崎本ではきついのかしら?他の本でなんとなく熱力学を読んでから田崎本、清水本と論理を追えば良いと思うが、なかなか他にも専門がある人にはきついところがあるのかもしれない。だが「他の本でなんとなく」というのを、俺を通してみんなでやっても仕方ないと思うので、多少難しくても田崎本、清水本で講義されたほうが、結果的には有意義だと思っている(ホントは俺がつまらないだけな気もするけども笑)。

 終わってみて思うことだけど、相転移の項目を無視した場合、このやり方がある程度の厳密性を保ったままに最短なんじゃないかと思う。
 最後Bornの熱力学的正方形を紹介したときに「色々やったけど、この四角形にまとまっちゃうんですか。すげえ」とコメントをもらったのは嬉しかった(第二法則も忘れないでね)。まぁまた化学熱力学や復習をするにあたって、何が大事かの地図を持っていれば、この範囲で何をやっても迷うことは著しく少なくなるのではないかと思う。その意味で、一般的かどうかは別としても、ルジャンドル変換をきちっとやることは熱力学で重要だと思っている。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 線形代数_たかはしけいが統計... | トップ | 物理数学_たかはしけいが統計... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

たかはしけいが統計力学までお伝えする物理会」カテゴリの最新記事