スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

マイナビ女子オープン&現在と非現在

2021-05-19 19:17:15 | 将棋
 15日に遊行寺で指された第14期マイナビ女子オープン五番勝負第三局。
 西山朋佳女王の先手でいきなり三眼飛車。後手の伊藤沙恵女流三段も三間飛車に振っての相振飛車に。
                                        
 後手はここで☖3三角と上がりましたがこれは不用意な一手でした。先手はすかさず☗3六飛。このまま歩を取られてはいけませんから☖2二角と戻りましたが今度は☗2六歩。
 ☖同歩と取っては☗同飛で飛車の成り込みが受かりません。そこで再び☖3三角と上がりました。これは僕にはよい辛抱だったと思えますがそれでも☗2五歩☖2二飛☗3四飛で歩損を重ねては後手は苦しくなりました。
                                        
 先手はすでに7七に桂馬を跳ねているのが大きく,攻撃にも困らない形。このまま押し切って快勝となりました。
 西山女王が勝って2勝1敗。第四局は25日に指される予定です。

 このような比較は新型コロナウイルスの場合にも妥当させることができます。新型コロナウイルスが蔓延すること,あるいはその結果として自身が感染するということは,自身にとって悲しみtristitiaを齎す出来事であり,それ自体で悪malumです。ですがその蔓延を防止するための措置が自身に悲しみを齎すのであれば,やはり同じように悪なのです。そこでもしも,後者によって齎される悲しみの方が大であるとするなら,その人間にとっては,蔓延を防止する措置の方が悪で,蔓延することの方が善bonumであると認識されてしまうのです。
 こうしたことは人によっては不思議に思われるかもしれません。というのは,新型コロナウイルスに感染してしまう場合の悲しみよりも,新型コロナウイルスの蔓延を防止する措置によって齎される悲しみの方が大であるということはあり得ないと判断する人も,それなりにいるであろうからです。他面からいえば,そのような人にとっては,蔓延を防止する措置がいかなるものであったとしても,それは蔓延することあるいは自身が感染することや,感染しないまでも感染するリスクが高まることよりは善であると認識されるだろうからです。そしてそういう人は,ある種の防止策を講じるくらいならば蔓延した方がまだ善であると認識するcognoscere人がなぜ存在するのかということが,よく分からないという場合があるかもしれません。ですのでこのことについてもいくらかの説明を与えておきます。
 第四部定理九は,ある感情affectusの原因causaがその人に対して現在していると表象されると,その原因が現在していないと表象される場合より強いという主旨のことをいっています。このことから容易に推定できるように,自身が感染していないウイルスに感染することによって感じる悲しみより,自身が実際に講じることを求められている対策によって感じる悲しみの方が,強力になるということはあり得るのです。このことはこの定理Propositioそのものがいっていることではなく,あくまでもこの定理から推定される結論ではありますが,少なくともほかの条件が同一なら,対策を講じることによって生じる悲しみの方が強力になる場合があるということは明白だといえるでしょう。
コメント
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