スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

マイナビ女子オープン&神の観念

2021-03-17 19:01:35 | 将棋
 15日に指された第14期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦。対戦成績は伊藤沙恵女流三段が1勝,塚田恵梨花女流初段が0勝。
 振駒で塚田初段の先手。伊藤三段のウソ矢倉に先手が左美濃で対抗。先手がうまく指し回していました。
                                        
 ここから☗6一角☖9二飛☗4五歩と指しましたが,この手順は一貫性を欠き,著しく形勢を損ねてしまったようです。
 もしも局面ごとに最善手を探索する場合,☖9二飛の局面の最善手が☗4五歩となることはあり得るでしょう。ですが人間の将棋の場合はこれではいけません。その後に齟齬が生じないような指し手を事前に選択しておかなければならず,☗6一角は激しく攻めていく手であるのに対し,☗4五歩を局面を落ち着かせに行く手で,明らかに矛盾しているからです。ですから☗4五歩と指すのであれば第1図で指さなければなりませんし,☗6一角☖9二飛と攻めたのなら☗4五桂ないしは☗4三角成でなければいけません。そしてもしも☗6一角と打つ手でその後の見通しが立たないのなら,それは自重するべきなのです。よって先手の敗因は,何らかの悪い手を指したということではなく,第1図で考慮を欠いたという点に求められることになるでしょう。
 こういったことは持ち時間とも関係します。たとえば持ち時間が5時間ならゆっくりと考えられるので,見通しを立てられるけれど,3時間ではそんなに時間を使えない場合はあり得ます。また早指しであれば時間がないがゆえに思い切って攻める方が相手も早指しで対応しなければならないので功を奏するということが往々にしてあります。つまり持ち時間によっても,人間の将棋は指し手の選択が変化するのです。このあたりはAIの将棋にはない,人間の将棋に特有の本質だといえそうです。
 勝った伊藤三段が挑戦者に。マイナビ女子オープンへの挑戦は初めて。第一局は来月6日に指される予定です。

 神の観念idea Deiに関する考察はここまでにします。どう考えることができるかをまとめておきましょう。
 第二部定理七系で神の観念といわれているとき,それは思惟の属性Cogitationis attributumの能産的自然Natura Naturansと解せます。
 第二部定義三は,観念ideamは観念対象ideatumが何であれ,思惟の様態cogitandi modiすなわち思惟の属性の所産的自然Natura Naturataであることを示していると解せます。
 第一部定理二一の論証Demonstratioでスピノザが一例として神の観念を示すとき,この神の観念は思惟の属性の直接無限様態すなわち書簡六十四によって無限知性intellectus infinitusを意味していると解せます。
 絶対に無限な実体substantiaとしての神のうちに神自身の観念があるという仕方で神の観念を神と関連付けることは,不可能であると断定することはできず,したがってそのように神と関連付けられる神の観念が存在するということを否定することはできません。この場合,神の観念は無限知性の一部を構成すると考えなければならないために無限知性そのものであることはできません。しかし同時にこの観念は無限であるかはともかく永遠aeterunusであるとは考えられなければならないので,持続するdurareものと考えることはできません。いい換えれば思惟の属性の有限様態すなわち個物res singularisと考えることもできません。よってこの場合の神の観念は,思惟の属性の間接無限様態であると解せます。そしてこの神の観念を人間の精神mens humanaが十全に認識するcognoscereことはできません。『スピノザ哲学論攷』で河合徳治が示唆している神の観念は,このように解せられる神の観念である,少なくともそれに酷似しています。
 人間の精神のうちに神の観念があるといわれる場合,第二部定理一一により人間の精神自体が個物なので,神の観念も個物であると解さなければなりません。いい換えれば第二部定義七により,この神の観念はほかの個物の観念と協同して人間の精神というひとつの個物を構成する個物です。そしてこの神の観念は,第二部定理四七の論証のあり方から,延長の属性Extensionis attributumによって説明される限りでの神であり,延長の属性を観念対象とした思惟の属性によって説明される限りでの神です。
 これらの解釈のすべてを,『エチカ』はあるいはスピノザは,僕たちに要求しているのだといっておきます。
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