外套は寝袋としても使えるようになっているもので、その中に少年の顔は半ば隠れてはいたが、幼さは隠せなかった。肌の色が極端に白く、ひどく痩せており、少しも動く気配がない。
「死んでいるのかしら……?」
「どうだろう?」
僕は用心のために片手に小型銃を握り締めた。そしてカムリルにそこにいるように言って、一人でゆっくりと少年に近づいた。だがやはり少年は動く気配がない。傍らに立つと、僕は思い切って呼びかけた。
「どうしました?」
反応がない。
「大丈夫ですか?」
やはり反応はなかった。
顔色は確かに白いが、死んでいるようにも見えない。少し躊躇ったが、そっと手を伸ばして、頬に触れてみた。やや冷たいが、生命を感じないほどではない。頬の柔らかさも死者のものではない。さらには、手の甲に呼吸の風を微かに感じた。そのことが僕を緊張させた。この少年は生きている。だが、こうして触れているにも関わらずまるで反応を返さないというのは、何かしらの問題があるに違いない。その「問題」が何か分からないというのは、嫌な気分だった。
「生きてるの?」
どうするべきか、やや途方に暮れた気持ちで少年を見詰めていた僕に、いつの間にか側に来ていたカムリルが話しかけてきた。
「うん」僕は言った。「息はしてる。でも、反応がない」
「眠っているのかしら」
「かもしれないけど、もしそうなら、随分と深い眠りだ。こうして頬に触れても、全く反応しないんだから」
カムリルは屈み込み、少年の頬に触れた。それからその手を、そっと鼻の下に持って行った。
「本当ね。息はしてるわ。なぜ反応しないのかしら」
「分からないよ。でも、どうしよう。このままにしておくわけには行かないだろうし」
「そうね」
僕はじっと少年を見詰めた。整った顔をしていたが、ともかく痩せていた。外套は、素材が丈夫なもののようで、それほど痛んだ印象は受けなかったが、履いている靴はかなり傷んでいて、長い距離を歩いてきたのだろうということが推測できた。それに、少年の体から発散する臭いは、かなり強かった。長い間体や服を洗っていないのだろう。でも、どうしても耐えられないというほどでもない。僕はそう自分に言い聞かせた。そして少年の体を抱えながら、カムリルに言った。「仕方がないから、僕が街までおぶってゆくよ。悪いけど、ちょっと背負うのを手伝ってくれないか」
僕はカムリルの手を借りて少年を背負うと、歩き始めた。完全に気を失っている人間を背負うのは、かなり大変だった。砂地だと、特に辛かった。二三歩歩いたところで、果たして街まで持つかと不安になったが、やるしかなかった。休みながら行けば、いつかは辿り着くはずだ。そう思うしかなかった。
「死んでいるのかしら……?」
「どうだろう?」
僕は用心のために片手に小型銃を握り締めた。そしてカムリルにそこにいるように言って、一人でゆっくりと少年に近づいた。だがやはり少年は動く気配がない。傍らに立つと、僕は思い切って呼びかけた。
「どうしました?」
反応がない。
「大丈夫ですか?」
やはり反応はなかった。
顔色は確かに白いが、死んでいるようにも見えない。少し躊躇ったが、そっと手を伸ばして、頬に触れてみた。やや冷たいが、生命を感じないほどではない。頬の柔らかさも死者のものではない。さらには、手の甲に呼吸の風を微かに感じた。そのことが僕を緊張させた。この少年は生きている。だが、こうして触れているにも関わらずまるで反応を返さないというのは、何かしらの問題があるに違いない。その「問題」が何か分からないというのは、嫌な気分だった。
「生きてるの?」
どうするべきか、やや途方に暮れた気持ちで少年を見詰めていた僕に、いつの間にか側に来ていたカムリルが話しかけてきた。
「うん」僕は言った。「息はしてる。でも、反応がない」
「眠っているのかしら」
「かもしれないけど、もしそうなら、随分と深い眠りだ。こうして頬に触れても、全く反応しないんだから」
カムリルは屈み込み、少年の頬に触れた。それからその手を、そっと鼻の下に持って行った。
「本当ね。息はしてるわ。なぜ反応しないのかしら」
「分からないよ。でも、どうしよう。このままにしておくわけには行かないだろうし」
「そうね」
僕はじっと少年を見詰めた。整った顔をしていたが、ともかく痩せていた。外套は、素材が丈夫なもののようで、それほど痛んだ印象は受けなかったが、履いている靴はかなり傷んでいて、長い距離を歩いてきたのだろうということが推測できた。それに、少年の体から発散する臭いは、かなり強かった。長い間体や服を洗っていないのだろう。でも、どうしても耐えられないというほどでもない。僕はそう自分に言い聞かせた。そして少年の体を抱えながら、カムリルに言った。「仕方がないから、僕が街までおぶってゆくよ。悪いけど、ちょっと背負うのを手伝ってくれないか」
僕はカムリルの手を借りて少年を背負うと、歩き始めた。完全に気を失っている人間を背負うのは、かなり大変だった。砂地だと、特に辛かった。二三歩歩いたところで、果たして街まで持つかと不安になったが、やるしかなかった。休みながら行けば、いつかは辿り着くはずだ。そう思うしかなかった。
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