漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

J.G.バラードとP.J.ファーマー

2009年05月08日 | 消え行くもの

 もう二週間以上前のことになるけれども、SF作家のJ.G.バラード氏が亡くなったらしい。享年78歳。
 二ヶ月ほど前には、P.J.ファーマー氏も亡くなったというから、僕が一時期熱狂的に読んでいたSF作家が、二人相次いで他界したということになる。もっとも、ファーマーの場合は既に91歳だったから、かなりの長命だった。
 バラードの作品の中では、僕は「ヴァーミリオン・サンズ」のシリーズが一番好きだった。さびれかけた、架空のリゾートを舞台とした連作短編である。だが、考えてみれば晩年の「コカインナイト」や「スーパーカンヌ」、あるいは「楽園への疾走」なども、このシリーズの延長線上にあった気がする。バラードの魂は、今頃きっと懐かしいヴァーミリオンサンズを再訪しているのだろう。
 ファーマーの作品では、「リバーワールド」のシリーズが大好きだった。この地球にかつて生まれたあらゆる人類が、どことも知れぬ星の、巨大な河の側に一斉に転生するという物語である。そこでは、もう人は年を取ることも、死ぬこともない。仏教の輪廻の思想がそのまま舞台となったような世界。ファーマーは、きっとそこへ向かう準備を終えたのだろう。