漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

ドロレス・クレイボーン

2009年04月16日 | 読書録

「ドロレス・クレイボーン」 スティーブン・キング著 矢野浩三郎訳
文春文庫 文藝春秋刊

読了。

 キングの作品の中では比較的短い長編。知名度も低い方だと思う作品で、実は僕は知らなかったのだけれど、人に薦めていただいて読んだ。だがこれは素晴らしい小説で、ホラー作家らしくはっとするような怖いシーンもあるにはあるけれど、ガラクタで組み立てられた文学作品というべき。隠れた名作と言っていいと思う。
 内容的には、殺人の容疑をかけられた一人の老女が、自分の半生を語るというもの。「ライ麦畑」などと同じで、最初から最後まで、今どうして自分がこうなっているのかという、モノローグで綴られている。もともとキングは憑依体質の作家だとは思うが、この作品ではそれが極限まで磨かれているように思える。