漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

方舟

2005年04月20日 | 漫画のはなし
印象的だった漫画の話:3

最近は殆ど漫画を読まなくなってしまたが、決して漫画が嫌いなわけではない。
それどころか、漫画の最上のものは、時として、小説よりも衝撃的であると思う。
それは、絵によって、多くを語らずとも雄弁であることができるからだろう。
絵によって紡ぎだされる世界は、論理的である必要はない。
一言の台詞や説明がなくとも、一続きの絵を提供しさえすれば、物語を、読者の空想にゆだねることさえ可能である。
そういう点で、小説よりも遼に自由度が高いメディアかもしれない。
そうしたことを踏まえた上で、
比較的最近(とはいえ、もう3年ほど前のこと)読んだ漫画の中で、とりわけ印象的だったのが

「方舟」
しりあがり寿著

なのだが、これは「破滅もの」の極北とも言える作品だった。同様の作品に作家J.G.バラードの「沈んだ世界」があるが、この漫画はそれを遥かに凌駕しているように思える。漫画だからこそ描き出せた、極限の喜劇である。
この漫画が成功している最大の理由が、その絵にあるのは間違いない。上手い絵では駄目なのだ。しりあがり寿の、でたらめとも言えるような独特の絵だからこそ、これだけの凄みが出てくるのだと思う。当たり前のことだが、漫画はやはり「絵」に魅力がないと成立しない。「上手いが、何の特徴もない絵」では、何一つ伝えることが出来ないだろう。