唯識に学ぶ・誓喚の折々の記

私は、私の幸せを求めて、何故苦悩するのでしょうか。私の心の奥深くに潜む明と闇を読み解きたいと思っています。

第三能変  受倶門・重解六位心所(2)

2013-02-06 22:49:15 | 第三能変 受倶門・重解六位心所

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 聞法することの難しさを痛感します。今日は、順正寺さんで、高柳正裕師を迎えられて、『浄土論註』初会の講義がされているのです、今朝方までは聞く気満々で準備万端で職場に向かったのですが、朝一番、夕方のトラック便に間に合わせるようにと、急ぎの仕事が舞い込んできました。気持ちを切り替えて仕事モードになりましたが、仕事をしながら、今この瞬間、講義をされているのだなぁと「世尊我一心」を口ずさんでいました。聞法難中之難です。場は違えども倶会一処なのですね。

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 六位の心所について

 「初めに五頌をもって心所を顕す。(五頌別解心所 ー  第十頌~第十四頌) 後に総じて心所と心とは、一とせんや、異とせんやということを料簡す。(総料簡王所一異)」
 初めに五頌をもって心所を個別に説明し、後に心所と心王は一つのものか、異なるのか、ということを論じる。
 問いによって論端を起す。(初めに論端を問起し、後に問に随って答す)

 「且く初めの二の位の其の相云何」(『論』第五・二十六左)

 初めに二の位、即ち遍行と別境の相が述べられます。 
 相  - (内面の本質が外面にあらわれた)すがた・かたち・ありさまをいう。
 初・遍行 - 初遍行触等
 二・別境 - 次別境謂欲勝解念定慧 所縁事不同
 三・善 - 善謂信慚愧無貪等三根勤安不放逸行捨及不害
 四・煩悩 - 煩悩謂貪瞋癡慢疑悪 
 五・随煩悩 - 随煩悩謂忿恨覆悩嫉慳誑諂與害憍無慚及無愧掉挙與惛沈並懈怠放逸及失念散乱不正知
 六・不定 - 不定謂悔眠尋伺二各二             

 「頌に曰く、初めの遍行というは触等なり。次の別境というは謂く欲と、勝解(しょうげ)と念と定と慧となり、所縁の事不同なり」(『論』第五・二十六左)

 「論。頌曰至所縁事不同 述曰。下第二段別答所問。初一句頌顯明初位。前本識中已辨其相。今略標之。下三句頌。釋第二位。於中有二。上二句顯第二位名。下一句釋別境義。下長行中。准頌所明分爲二段。解遍行中有二。初總解頌初句。後釋遍行之義。」(『述記』第六本上・初左。大正43・427c) 

 「論に曰く、六の位の中に初めの遍行の心所というは、即ち触等の五なり。前に広く説きつるが如し」(『論』第五・二十六左)
 

  論。曰六位中初至如前廣説 述曰。此即總釋頌中初句。今解初字及觸等字。此五遍行自性・作業。前第三卷第八識中已廣解訖。彼卷所言遍行之義後當説者。今此説之。」(『述記』第六上・二右。大正43・427c)

 (「述して曰く。此れは即ち総じて頌の中の初の句を釈するなり。今は初の字と及び触等字とを解す。此の五の遍行の自性と作業とは、前の三巻の第八識中に、已に広く解し訖る。彼の巻に言う所の遍行の義は、後にまさに説くべしとは、今此れに説く。」) 

 遍行を解釈するのに二つに分かれる。初めに頌の初句を解釈し、後に遍行の意義を解説する。そして(「この五の遍行の自性と作業とは、前の第三巻の第八識のうちに、すでに広く解し訖る。・・・」)最初の触等の五はすでに一度前に広く説いた通りである。
 触等の五 - 触・作意・受・想・思の五つの心所
 心王と心所の関係について鎌倉の良遍は「ソモソモコノ八識ハ、心ノ中ノ本ナルガ故ニ、是ヲ心王ト名ヅク。此ノ八ノ王ニ多クノ眷属アリ。是ヲ心所ト名ヅク、具ニハ心所有法ト名ヅク、略しシテ心所ト云ウ。是モ同ジク心ナレドモ、サマザマクサグサニ細カナル心ハコノ眷属トス。是ニ六位有リ。一ニハ遍行。是二五アリ。五コトナリトイヘドモ、ミナ心ノ起コルゴトニ普ク必ズアルガ故ニ遍行ト名ヅク。・・・」(『法相二巻鈔』鎌倉旧仏教p129。大正71・110a)と説明されていますように、遍行とは、心王が起こる時に必ず遍く起こる心の働き(心所)のことをいいます。それに五つ配当されているのです。触・作意・受・想・思の五つの心所です。
 広説は『述記』によりますと、第三巻の記述を指すといわれていますが、『論』では巻第三の心所相応(五遍行)を指します。(『選註 成唯識論』p45~47)第八識は「幾ばくの心所と相応するや」と、問いを立てられ、詳しく説かれています。其の最後に「其の遍行の相をば、後に当に広釈せん」といわれており、この後がここの遍行の説明にあたるのです。したがって第三巻と第五巻に分離して遍行は説明されていることになります。第三巻においては阿頼耶識が如何なる心所と相応するのかにおいて述べられており、そこでは「常に触・作意・受・想・思と相応す。阿頼耶識は無始の時よりこのかた乃し未転に至るるまで。一切の位に於いて恒に此の五の心所と相応す。是れ遍行の心所に攝むるを以っての故に」と阿頼耶識と相応する心所は五遍行のみであることを明らかにしています。そして五遍行についての説明(定義・内容・働き・性格等)がされています。ここ第五巻では遍行に五つの心所があることを述べています。