さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

快勝ペース一転、急停止 井上浩樹、永田大士に雪辱ならず

2024-02-24 00:06:35 | 関東ボクシング



ということで今日は両国国技館トリプル世界戦の日。前日計量の記事もたくさん見ました。いよいよです。
何しろ週末に国技館のような良い会場で、というのが嬉しいところ。出来れば上京観戦と行きたかったですが。

しかしとりあえず一昨日の感想続き。書く隙間がなくなってしまうので。



メインは井上浩樹と永田大士の再戦。予想としては井上有利、雪辱成るのでは、と思っていました。

序盤、井上は思ったより動かず、踏み留まって迎え撃ち、のみならず、右リードを端緒に、叩きに行く構え。
単に動いて捌いて、とやっても、永田の前進に勢いを与えるだけ、どこかで叩かねば、というのは誰もが考えることでしょうが、どうもそういう感じを越えて、打ち勝てる自信がある風。

初回、左クロス応酬のあと、井上の右アッパー決まり、永田が横へと「退がる」。さらに井上が左を叩きつける。
2回、永田出るが井上が右ボディ返す。際どい左カウンターの応酬あり。
3回も永田が攻め立てようとするが、井上が左アッパーで締めるコンビ。攻勢は永田だが、井上のヒットが有効か。

4回、ビッグラウンド。永田が出て、ロープ背負った井上が右アッパー、まともに入って永田ぐらつき、止まる。
井上左右フックを叩き、アッパーも決める。KOチャンスかと思ったが、永田はタフ。逆に前に出て連打してくる。

ここで井上、もっと攻めねばと思ったが、意外にというか、ロープ背負ったり、ガード立てて押し合ったり、という場面も。少し違和感あり。
ラスト5秒くらいで連打し、攻めて終わったラウンドながら、コーナーに戻る井上の表情が思ったより明るくない。
「ん?」と、ここで違和感が疑念に変わりました。

後に思えば、この攻防のさなかに、すでに異変が起こっていたのでしょう。


5回、井上追撃して、永田がどう凌ぐかと思っていたら、井上の手数が激減。迎え撃ち、対応に終始。
6回、井上特に意味も無く右構えにスイッチ。永田は左右関係なく攻め、井上、程なく元に戻す。
7回、井上の右フック、リードにカウンターにと冴える。しかし右一本の闘い。


このあたりで、明らかに、井上の左拳に不具合あり、とわかってくる。
打ち方自体が縮こまっていて、身体全体を使ったダイナミックな攻撃が、4回途中から消えて無くなっている。
それでも右リードを中心に闘った7回のような展開を作れれば、と思わせるのが、井上浩樹の非凡でもあるが。


8回、井上の右ジャブに永田も打ち返す。終盤バッティングあり。これで井上、カットしたか。
9回、永田の構えが目に見えてアップライトになり、右ジャブからの攻めが増える。
セコンドが井上のアッパー警戒のため出した指示らしいが、それが良い攻撃にも繋がっている。

ひとつの指示で、ひとつの修正、改善のみならず、複数の効果、メリットを選手にもたらす。セコンドの値打ち、ここにあり。
永田、左ストレートをダブルで当てる。井上も頑張って左フックなど連打するが、威力に欠ける。


10回、永田今度は左をトリプルまで。永田の左クロスに井上右フック。
両者際どいタイミングで左右が交錯する打ち合い、両者ボディを返し合う。終盤に来て凄い攻防。
しかしここから、永田がアウトボクシングに出る。意外と言うと失礼ながら、この切り換えが出来る冷静さが永田にあるとは。
まるで寺地拳四朗のよう。大袈裟ですか。
ここで井上、攻められず捌かれた感あり。打ち合いなら必死で出来ても、ここで余裕の有無が差になって出る。

11回、井上踏ん張って右アッパー決めるが、永田の前進は止まず、右ボディから左、井上止まる。
さらに永田左右ボディ。井上ロープにもたれてクリンチ。身体を半ば折っている。
実況が精神論で井上を語っているが、プレスとボディ攻撃にさらされ続けて迎えた終盤、心がどうであっても身体がついてこないのは当然、あり得ること。
ラスト10秒、それでも左右連打で永田を打ち込んだ井上、その心身の偉大こそ語ってもらいたいが。

最終回、両者頭を付けあって、でもクリーンでハードな打ち合い。両者ボディ攻撃が良いが、やや井上がまさったか。


判定はドローがひとり、7対5と8対4で永田の2-0。
さうぽん採点は迷った回込みで6対6でしたが、永田の攻勢が評価されたのも、充分理解出来ます。



試合としては、序盤4回(途中)までは、ある程度予想どおりの展開でした。
井上浩樹がその良さを発揮して、永田大士に雪辱を果たすだろう、と思っていたとおり。

しかしそこで起こった異変は、井上の失速...急停止、と言っても良いような事態に繋がり、永田が懸命(かつ賢明)な闘いを貫いたことで、結果は永田が返り討ちを果たしました。

中盤以降、井上は痛みを堪え?左パンチも出し、右リード中心の組み立てに腐心し、と、やれるだけのことはやっていた、と思います。
左を見せ、捨てパンチにして、右フックやアッパーの強打に賭けてほしい、と見ていて思いもしましたが、それはやはり高望みが過ぎ、また無謀な行いでもあったことでしょう。
なかば捨て身の攻めに出ても、それを察知し、或いは耐え凌いでしまうのが、永田というファイターでしょうから。


試合後、井上浩樹は二度目の引退を、半ば「発表」したという記事が複数出ています。
もちろん、これがラストファイトとなれば、それを惜しむ気持ちは前回同様にありますが、しかし前回よりは、まだ納得感がありもします。
今回も、左拳の負傷により、途中から本来の闘いが出来なかったことは事実なれど、少なくともリングに上がるまでの段階においては、本人が充実した日々を過ごして、その上で闘えた、という意味においては。



とはいえ、やっぱり惜しいですね(どないやねん)。
4回までの闘いぶりは、やっぱりここで終わるというのは勿体ない、と思わせるに十分なものがありました。
それこそ、令和版「一瞬の夏」だと思った、井上尚弥の名言「マンガはいつでも描けるけど、ボクシングは今しかできないよ」を、改めて井上浩樹に贈ってほしい、と思ったりも...。





アンダーでは中嶋一輝が、中川麦茶にクリアな判定勝ち。OPBF王座獲得となりました。
中島が無理に打ち込みに行かず、冷静に闘っていた印象。
中川は相手が焦れて崩れるのを待つ闘い方でしたが、中島がいつもの?力みを全然見せず、当てが外れた、というところでしたか。


デーブ・アポリナリオは、タイ王者タネス・オンジュンタとダウン応酬も、4回KO勝ち。
ロープに詰めて出たところで、間延びした返しのパンチを振ったところに、まともにカウンターされて倒れ、ありゃりゃ、と思ったのですが、反転攻勢に出て、フィニッシュは凄い右アッパー、一発でした。
強いことは強いが、ひとつ大きな穴開けたなあ、という試合。でもまあ、世界戦でこんなことにならず、その前に済ませておいて反省すればいい、てなものですかね。
オンジュンタも大柄で、なかなか強いところを見せました。再来日して、他の日本上位と闘ってほしい選手ですね。




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2 コメント

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Unknown (R45ファン)
2024-02-24 01:15:55
あのアッパーでぐらつき、「ここで仕留める」という攻勢が嘘のように止まりましたからね。あの意味不明なスイッチとか、全然手を出さない展開。左は拳痛めたで済まないレベルの損傷だったのかもしれません。最後ボディ効かせたのでチャンスでしたがね。
しかしアクシデントあったとはいえ、胸張るように、の指示で井上さんのアッパーを外させた加藤トレーナー、恐るべし。

さて、レミノの興行は毎回衝撃起こりますね。ポープアポレナリオのお披露目、のはずがまさかダウン。
ラミドがドヘニーに倒された再現とまで行きませんでしたが、割とその後力づくで、粗さも見えましたし。
こういうびっくり展開あり、日本タイトル戦の眼福ありと、今回も満足。レミノは毎回外れなく来てますね。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-02-24 14:59:21
>R45ファンさん

4回は完全に攻めどき、倒しどきでしたが、それを逃してコーナーに帰る井上浩樹の表情が曇っているのを見て、だいたい察しは付きましたね。それでも打てる限り左を打ち、ボディも打っていましたから、奮闘だったと思います。
寺地拳四朗の指導で名声を勝ち取った加藤トレーナー、確かに良い指示でしたね。ああいう器用とは言えない選手、激しい試合展開の中で、端的な指示が出来、それが有効に働くというのは、要は練習段階における教示が明確だから、なのだと思います。そういう積み重ねが見えた気がしますね。
アポリナリオのダウンシーンは、正直言って、抜けたことやっとるなあ、と思って呆れました。ちょっと舐めてたのかもしれませんね。
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