さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

馬力や手数のみでなく、技巧と戦術でも上回る マルチネス、井岡下して二冠獲得

2024-07-08 08:40:13 | 井岡一翔




ということで昨日は当然夕刻からABEMAのライブ配信を見ておりました。

格闘技の世界では、K1がABEMAのPPVを売っていながら、直前になってからCSのGAORAでも普通に生中継発表、という混沌とした事態が起こっていて、それに比べればボクシングは今のところ平穏でよろしいですな、というところでしたが、リングの上ではのんびりしたことは言っておられず、激しい打ち合いが繰り広げられました。



スーパーフライ級のタイトルホルダー対決、井岡一翔vsフェルナンド・マルチネスですが、まず立ち上がりの驚きは、マルチネスの肩周りから上半身にかけての、肉体の厚み。
WOWOWで三試合見たけど、ここまでごつかったかなあ?という印象。井岡との対比もあって、かもしれませんが。

初回からマルチネスが打って出る。ぐいぐい攻めていく感じだが、井岡は右決めたあとの左ボディで、早々にマルチネスを止める。
以前の試合でも、前に出ていると当然強いが、ボディ打たれて止まる場面があったマルチネス。
さすがに井岡、ちゃんと見てたんやなあ、と...素直に感心する気持ちかというと、微妙だったりもしますが。

初回は手数もヒットもあって、マルチネスが抑えたように思うが、ボディという突破口が早速開けたのだから、井岡がすぐに巻き返すだろう、と思ったら、そう簡単にはいかず。
2回からマルチネス、連打やボディ打ち、アッパーなどをまとめてくる。井岡はボディを返し、一旦攻勢を切るが、マルチネスまた右クロスなどを返してくる。
最初は「頑張るなあ」という感じだったが、ボディのダメージは堪えて、その前に手数をまとめてポイントを抑えていこうという組み立てが、徐々に見えてくる。

そうこうするうちに、マルチネスのガード、ブロックに井岡のボディブローが引っかかり、受けられる場面も目につく。
その上で体格に勝るマルチネスが相打ち覚悟で左フック、右アッパー、ボディ、右クロスと打ってくる。
井岡はボディジャブで食い止めるのがやっと。攻め込む展開が作れない。結局2回のポイントもマルチネス。

3回、井岡ボディストレート決めるがマルチネス前進。少し遠目から右ストレートのダイレクト。追撃の連打も。
井岡ボディ攻撃は決まるが、今度はマルチネスが右アッパー、左フックなどで相殺。
ボディを打ちに来る井岡を、アッパーで狙っている。この回もマルチネス。

4回、マルチネス少し離れて左ジャブ突く。合間にこれを挟めるなら、マルチネス盤石か、と思っていた展開。少しだけ、でしたが。
そうかと思ったら、強振ではなく細かい連打を真ん中に集めたり。色々やってくる。マルチネス。

5回、マルチネスの左フックで、井岡が一歩だけ下がる。左右連打からアッパー。攻められた井岡が左ボディ決めると、マルチネスがクリンチに出る。
井岡追撃するが、相手を「切り拓く」ところまで行けない。右ボディアッパー再三決まるが、ポイントは「微妙」止まり?
6回、打ち合いになるが、見栄えの良いヒットはマルチネス。この回、井岡のボディ攻撃も良いが、最大限に評価しても...?

7回、マルチネスは両足を半ば揃えて、その位置から左右アッパーをリードに使う。どっちが来るのかわかりにくい。
これを端緒に連打で井岡を打ち込み、下がらせる。さらにロープに追って左アッパー、右で追撃。
井岡左右ボディで反撃。場内沸くが、正確さが落ちている。マルチネス。
8回、井岡正対してジャブからワンツー。右ストレート相打ちも、次に手を出すのはマルチネス。井岡なおも正面から左アッパー、右ストレート。
しかしマルチネスの反撃、その手数が2倍、3倍返ってくる。マルチネス最後足使う。マルチネス。
9回、井岡の左ボディ何度か決まるが、マルチネスはすぐに打ち返して来るように。徐々にボディ打ちの効果が薄れている?マルチネスの闘志あればこそ、でもあるが。
ラスト、井岡のワンツー当たるが、マルチネスすぐに手を返そうとする。マルチネス。

10回、井岡の右カウンターで入るが、マルチネス前進して押し返す。井岡の左ジャブにマルチネス右クロス被せ。
井岡、正面から行くのにジャブの後、左が下がりっぱなし。打ち合うしか道はないが、体格で負けているのみならず、狙い無く打ち合わざるを得ない、という「絵」。
苦しい回。だがポイントが行く目もある回、か?

11回、マルチネス左ジャブから連打、そのさなかにサウスポーにスイッチして右ジャブからまた連打。どちらが「技巧派」なのか。逆になっている。
井岡右ショートカウンター決めるが、マルチネス堪えない。足使って捌き、ラウンド終了後、四方に挨拶。すでに勝利を確信か。マルチネス。
最終回、マルチネスが左右ショート決める。井岡食い下がるが、マルチネスはスイッチして捌く。細かく左右に構えを入れ替え、ヒットを取る。
最後もつれてマルチネス、スリップ。立ったところで試合終了。


判定は8対4、9対3、12対0の3-0でマルチネス。
8対4もまあ、見方ひとつで...無いですか。さりとて、フルマークも厳し過ぎるように思いますが。
私は10対2か、11対1くらいだという印象でした。




見終えて、想像と違ったところがけっこうあった試合でした。   
驚きはフェルナンド・マルチネスの方にありました。思った以上に、馬力や手数の面ではなく、技巧や戦術の部分に冴えたものがある選手なのだと。

初回のボディ攻撃を受けたダメージを堪えるのみならず、その後の対処法も、もちろん闘志や忍耐あればこそですが、手数で抑え、反撃で相殺し、追撃を切りながらポイントを抑え、回復を図り、同時にガード、ブロックで受ける確率を上げていく。
ポイントリードを重ねてからは、はっきりとアッパーによる迎え撃ち、さらにアッパーをリードに使って連打に繋げ、ボディを打ちにくくする「仕向け」もしっかりやっていました。
それでも執拗に狙ってくる井岡に苦しめられましたが、時に間合いを空けて、アウトボクシングで捌くという展開も作っていたり。

総じて、マルチネス陣営は、決まった間合いで巧さが出るが、機動力と強打に欠け、距離の克服や切り替えを強いられると苦しむという井岡の弱点を、しっかり研究していた、と言えるでしょう。
堂々たる勝利、王座統一でした。拍手したいと思います。
出来ればまた、日本のリングで、さらなるタイトル獲得をかけての試合を見せて欲しいものです。



さて、敗れた井岡一翔ですが、マイペースなら巧さを存分に出せても、あれこれいろいろやることが増えると、当然その技巧も、試合が進むにつれ精度が落ちてくる、という現実を突きつけられた敗戦だった、と見ます。
今までは相手選びの際、強い弱いという話と同時に「寸法」を厳選している面があり、自分の間合いで捌けて、その範囲から逸脱する体格やリーチ、パワー、スピードを持つ相手は可能な限り、避けてきた。
私は今回のマルチネスもまた、ぎりぎりその範疇に収まる選手だと思っていました。しかし思った以上の体格と馬力を持ち、さらに巧みな闘い方が出来る点で、その想定は的外れでした。
そして、それ故に、然るべきものだ、と言える試合内容と結果が残った。そういう試合でした。


今後については、普通なら引退だと思いますが、ABEMAの格闘技やボクシング配信の置かれた状況は混沌としていて、コンテンツの選別その他、色々と動きがあるらしいです。
ボクシングにおいても、昨秋の件あたりから事情が変わってきましたが、その中でも目玉というか最大のスターたる井岡一翔の敗戦というのは、単にボクサーとしての内実だけでは語りきれないものかもしれません。
我々が普通のアタマで考えるようなものとは、まったく違う発想で物事が進められる可能性も、なしとは言えない。私としては、もうそういうの充分やろう、と思うのみ、ですが。



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7 コメント

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おつかれさまでした (おう)
2024-07-08 12:46:21
マルティネス選手強かったです。
試合の感想はさうぽんさんが述べられた通りと同じですね。
自分はひいき目が入ってたのか井岡選手が3R取ったと思ってましたが。

とにかく内藤さんの解説と実況が酷かった。
初回のボディー好打の印象からか、それ以降肘でブロックしたのも全て「ボディー!利いた!」連発
これはセコンドからも聞こえてきました。
それに対して内山さんは的確にジャッジして「フルマークです」と言い切ったのは凄かったですね。
採点に正解はないのでしょうが、自分はこう思ったと放送で言い切るのは良いですね。

内藤さんは「凄いなあ、上手いなあ、危ない、(そのラウンドの採点は)わかりません」だけじゃダメですよ。
キャラもあるのだろうけど、あれじゃ邪魔なだけ。

井岡選手の動向が気になりますが、まずはおつかれさまでした。
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Unknown (R45ファン)
2024-07-08 13:42:15
マルチネスにはびっくりしましたね。
初回にボディ効かされた時は、「あーあ、井岡の構図になっちゃうかな」などと思ってましたが、そこからがすごい。
基本ガード主体で頭の動き少ない井岡の守備範囲外である、右のオーバーハンドとアッパーを最後まで当て続けましたね。そして馬力で押す一方、ラウンド中も上手く休憩時間作り、ガードも堅い。そして振り回すだけかと思えば、あの3ラウンドの右まっすぐやジャブはモーション小さい、でも強いパンチで井岡が被弾してましたし、井岡もどのパンチ狙い目にして合わせようか、アテを見つけられなくなった感じでした。

ただでさえパワー、スピード、決定力に欠け、追い足もあまり速くない、自分から攻める時の品数も少ない井岡が先制を許した上、さらにボディ攻めも対処され、後半も落ちない、アテも見えないとなるとこうなりますよね。
結局自分の構図にハメれる相手を選び続けたツケでしょうか。最後はむしろマルチネスの方がボディでダメージ与えたようにも見えましたね。セコンド陣の、「ボディ効いた」の叫びが虚しく聞こえました。

しかしながらTBSの時ってもっと内山さんも内藤さんも偏った解説だったと思いますが、発信元変わればやはり変わりますね。内山さん、116ー112で寄りすぎと言ってましたし。良い傾向ではあります。
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Unknown (海の猫)
2024-07-08 14:04:55
マルティネスうまかったですね。ディフェンス、緩急のつけ方、試合運び、ジャッジへの見せ方など想像以上でした。パンチの精度もよく、それでいて倒しにいかないので隙も生まれにくい。華麗さも派手さもないので評価されにくいボクシングで、自分は好みではないですが、見ていて感心はします。周りも総力上げて準備してきたのでしょう。セコンドも優秀でしたね。

昔ほど足を動かし続けられない井岡にとって、今出来るベストな戦い方だったと思います。ただ前で止めるボクシングはそこまで完成度は高くなく、フィジカルも足りない。井岡は少なくともSフライでは、圧と手数のある相手を得意とはしていなかったと思います。再戦でのフランコはコンディションが不明でしたし。今回思った以上にもらいましたが、井岡はディフェンス重視のポジショニングをとらない試合では、結構被弾するのかもしれません。距離を詰めることを優先させたシントロン戦でももらってましたし。ただ芯ではくらわないですね。

井岡の敗因は、もともとの不足に加えて年齢と階級と。今回はめずらしく試合前に弱気な表情をしていました。中谷と対戦せずエストラーダとは決まらず、このくらいの相手とやらないと格好がつかない状況だったと思います。今後はおっしゃる様に Abema 次第の面があるのでしょうね。今回客席真っ暗で映さなかったのは、客入りが悪かったのでしょう。ただ今の Abema 格闘技・ボクシングでは最も数字がとれる選手で。最後にやるとしたら、マルティネスとの再戦かバンタム挑戦か。自分ももういいのではと思います。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-07-08 20:13:38
>おうさん

何よりもマルチネスの技量を見誤っていたなあ、というのが正直なところです。現状ならエストラーダの方が攻略しやすかったでしょう。まあ、昔の亀田と同じで、井岡は「ええトコ狙ってた」のやなあ、と感心したり。現実は悪い方を引いてしまいましたが。
採点は9対3までならあり得るかと。要はボディブローの効果を見るかどうか。日本の観衆って、割とボディブローを見る方で、歓声も影響するかな、と思いました。実際は厳しかったですが。
内藤の「応援解説」はどうなんですかね、一般視聴者向け、という理解はあり得ると思います。というか、世間の大半はボクシングに限らず、スポーツの中継に専門性など求めていないのが現実でしょうしね。あれがないと「盛り上がっていない。つまらない」と思う視聴者がいるのかもしれません。
内山の解説も細かいことを言えばあれこれあるにせよ、自身の見解を言い切るのは良いことです。それが実際出る採点と合う合わないは別の話ですし。ただ、それが合わないと、それをもってあれこれ言われるのも確かでしょう。見る方も見る方でいい加減です。問題は解説者そのものだけでなく、それを取り巻く状況にもありましょうね。


>R45ファンさん

初回は井岡が流れを掴んだかと。同感です。しかしマルチネスは自分の特徴を上手く生かして闘いました。単に馬力で押すだけじゃなかった。その馬力を元手に、色々と展開を回していく。しかし、考えたら若いイメージですが元五輪選手でもう32歳で、そういう部分があって当然なんですよね。
井岡については、きついかもしれませんがこのくらいの相手と当たる日まで、上手いこと引っ張ったな、というのが率直な感想です。色々な問題を抜きにして、技量力量の話だけで言っても、チャンピオンとして高いレベルにあるとは見えません。仰る通りの戦力であり、限界は普通ならとうの昔に露呈して不思議では無かったですね。
内山の採点は、間近で見ての厳しいものでしたから、実際どうかは別にして尊重されるべき意見だと思います。今回はひとり、一致した採点もありましたが、仮にそれが無くてもです。解説者は自身の見解を、何の忖度も無く言うべきです。TVから配信に変わったことでもありますし、全ての配信媒体においても同じような形になっていってほしいですね。


>海の猫さん

ジャッジへの見せ方、というのも確かにありましたね。単に攻勢のみならず、防御面においても。初回のボディブローは本当にきつかったはずで、その後も嫌なのはあったはずですが、採点にまったく反映していないジャッジもいましたからね。
井岡の特長も把握していた感ありですね。自分と相手の何が優れているのかをきちんと考えて、自分の良さを生かし、見せる闘い方が出来ていました。
井岡のコンディションは、例の件が明るみに出て以降、明らかに変わったと思います。据わりの良さが消え、カウンターの迎撃にも重みがなくなりました。悪いですが小手先の部分が頼りになっている。それを脅かす可能性のある相手とは、もう闘わなくなりました。シントロン戦はパリクテ戦、田中戦と共に、以前も少し触れましたが「ノーカン」の時期ですね。
何しろ今回の相手選びはそこが違いました。読み違えたのか、仕方なかったのかは不明ですが。迎え撃って捌ける「寸法」の選手かと思っていたら、技量の面でそこに収まりきらない相手でした。
階級に関しては、これも例の件も込みでの選択だったのか、と今にして思うところです。フライ級がベストでは、と傍目には思いましたが、それでは逆に調整が難しいのかもしれません。年齢は確かに苦しいところでしたね。
観客数は4200人とかその辺だったらしいですね。報道で出てました。ただ、普段のホールの試合なんかでもそうですが、配信のつく興行って、チケットの売り上げはそこそこでも大丈夫、なんだそうで。具体的にどうなのか、世界戦ともなると違うのか、確たることは言えませんが。
ABEMAのボクシングは亀田の会社が「降格」?し、井岡が敗れ、堤駿斗は出場停止、力石が離脱し、重岡兄弟の兄も敗れ、苦しいところですね。だからと言って格闘技のノリで、ほいほいアレ組んでコレやって、というわけにもいかないし。本当に良いところはAmazonやLeminoが持っていく。サイバーエージェントの藤田氏がボクシングをどう捉えているのかは不明ですが、そりゃ井上尚弥を独占出来るものならしたいでしょう。しかし、そういう話でもない。どうやら一番良いところを扱えるわけでなく、関わってくる業者は何番手かもよくわからない。これではなぁ...と考えたとて、何の不思議も無いところです。だからといってそれを食い止めるために?井岡に無理をさせるというのも...あるとしたらマルチネスとの再戦でしょうけどもね。一番売りやすいのは結局、これでしょう。他はあり得ないような気がします。
返信する
Unknown (月庵)
2024-07-08 21:24:15
私も初回早々に井岡にボディ効かされた時には、井岡ほどの名手相手に迂闊な……と思い、序盤はポイント取られても井岡がボディでじりじりと詰めていく流れになる、と考えていました。しかしそこからがマルティネスの本当の強さ、凄みでしたね。アンカハスを二度に渡り完封した実力は伊達ではありませんでした。おっしゃる通り、最後にはテクニックでも完全に井岡を上回っている印象でしたね。元々田中が挑戦するはずだった王者で、対戦可能性も十分ある相手ですが……正直田中では荷が重いのではないか、と感じました。

終盤、井岡がよく言えば捨て身の攻撃、客観的に見れば丁半博打のような打ち合いをやらざるを得なくなった時、私自身は井岡に対する心証からフラットに見ていましたが、もし私が井岡を心から応援する立場だったなら、井岡の技巧に心から感銘を覚えていたファンであったなら、その井岡の姿を見た時、頑張れ、とも倒せ、とも思えず、恐らく悲しみをもって受け止めていたと思います。プロ入りから十五年、アマチュア含めれば更に長いキャリアで築き上げ、確立して来た井岡一翔のボクシングを、井岡自らが勝つ為に自己否定せざるを得なくなっている光景。それこそがボクサー・井岡一翔の『断末魔』そのものでしかないのですから。それで相手を倒すなど無理であることなど、井岡自身が一番よくわかっていたでしょうから尚更に。「ああ、これで終わりなんだな」とその時の私は率直にそう思っていました。多少の感慨もしくは感傷はあったと思います。曲がりながりにも長らく試合を見続けてきた選手ではありましたので。

ただ、さうぽんさんや海の猫さんの推測通り、井岡の意思どうこう以前に『上』の都合で今後が決まる可能性は確かにありますね。私も昼休みにこの記事を見て以降その『今後』の可能性を考慮した結果、海の猫さん同様マルティネスとの再戦もしくは『日本人前人未到の五階級王者』の称号を賭けて西田に挑戦、そして引退の三択だろうな、と結論づけました。前者に関してはもし再戦の場合マルティネスには最低でも報酬を倍は支払わねばならず、試合内容からして再戦したところで……という結果になる可能性大で、それをAbemaが受忍出来るか、受忍出来たとして井岡がそれを受けるか、というのが個人的には大いに疑問です。僅差だったら井岡の側から申し出たでしょうが。そしてバンタム転向に関しては、中谷は論外で、井上拓・武居がAbemaに出て来るはずもなく、必然的に西田が相手になる。西田なら同じ放送局だし、ビッグネーム井岡との対戦なら否やもないだろうし、元々井岡は関西出身だから関西決戦という形で話題性は提供出来る。現実的に可能性があるとしたらこれが本命だとは思います。負けたら階級の壁って言い訳も立ちますからね。

ただ、当たり前ですが井岡も人間ですので。これほどまで一方的な展開で敗れたことに対して大いにショックを受けているであろうことは想像に難くありません。まして井岡の戦いぶりに特にミスらしいミスは見当たらず、最序盤に腹も効かせていた。にも関わらず見せ場なしの敗戦。外野が見る以上に心に堪えていても不思議はなく、また自分の現在地を嫌でも認識させられたが故に、これが言うなれば『格好』をつけられる引き際と考えたとて、それに何か言われる筋合いもないでしょう。実際私もこの負けを最後にリングを去る幕引きは、決して悪いものではないと思っていますし。対抗王者相手の敗戦ならば一応の面目は立つ。しかし再戦で惨敗したり、上に上げて日本人とやって負けたら、それこそ『余計』であろうと。

ただ、もし井岡が、間違いが起こらねばほぼ確実に日本人前人未到の五階級王者になるであろう井上に対して無用な対抗心、もっと厳しい言い方をすれば虚栄心を再燃させたなら、そこまでいかずともせめて最後は有終の美を飾りたい、という欲求に抗えなかったなら、再起という選択肢を選んでも不思議はないですが。
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Unknown (モノクマ)
2024-07-09 06:01:48
マルティネスを身体のパワーを生かした圧力型のファイターだと思っていたので、迂闊に連打した1R以外に見せた想像以上の技術やタイミング、戦術にかなり驚かされました
1Rでマルティネスがボディを効かされた時、これはいつも通りの流れで井岡の勝ちかなと思ったのですが、そこからのボディ対策が見事でしたね。接近する際は飛び込みからのスイッチでボディを打たせるタイミングを与えず、接近戦では身体パワーや細かい位置どりで可能な限りカウンターボディを打てる場面を減らし、打たれるタイミングでも井岡を読み切り肘のガードで致命打を受けない技術を備えている。そして、さらに驚いたのは戦術の一つとしてアウトボクシングもそれなりにできること、スタミナやボディのダメージ回復しながらボディの距離を作らせず、井岡が無理に入ったり、ボディを打とうとしたりすれば中間距離でカウンターを打てるタイミングも備えていることでした。1Rで不用意に連打しカウンターボディのダメージをもらった中でこれらをこなせるのは見事という他ないです

一方、井岡はボディの突破口を塞がれてからはセコンド含め他の戦術を取れませんでしたね。ブロッキング主体の待ちの体制はスイッチによるずらしと身体パワー、アッパーで崩され、カウンターからコンビネーションに繋げようにも上手くできない。そうこうしている間に主導権を奪われて、1Rに上手くはまったボディ狙いに固執するしかなくなったように見えました。また、井岡の芯をくわない基本ブロッキング主体のディフェンスは今回もさすがだと思いましたが、完全に受け切れる相手ではなくなった時には、芯は外していても見栄えが悪くなり有効打として見做されることでポイントゲームも不利になっているように感じました。前までは外すディフェンスも両立できていたと思いますが、ここまでブロッキングが崩されてもそれに頼るしかないのは加齢等色々な要因があるのでしょうね

マルティネスの今後はファイトマネー次第でどんな相手とも戦うそうで、もしAmazonが田中を推してくれるなら田中戦もあり得そうですが、想像以上にマルティネスが上手いことが判明したので、田中はAmazonが推してくれるような相手を倒し評価をあげると同時に、期待を得るには現状より成長した姿をはっきりと見せていかないと厳しそうです
井岡は再起するならAbemaマネーによる再戦が可能性としては高そうですかね。今回の内容を踏まえると再戦の理解は中々得られなさそうですが、バムとエストラーダが再戦をし、田中の評価も上がっていない現状ではそれなりのお金を用意すれば実現は可能な気がします。今のWBA暫定王者はその試合で初めて挑戦権を得たはずで、IBFは一位が決まっていないので、統一王者(スーパー王者)の期限をWBAが守り、横槍を入れなければですが笑
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-07-09 08:34:07
>月庵さん

初回のマルチネス、ボディ被弾は同感でしたね。あの時は「所詮、考え足らずの馬力頼みの選手なのか」と即断しかけました。一番食っちゃいかんパンチを早々に食ったわけですから。しかしその後すぐに、全く別の姿を見せました。
今回の勝ちが印象的で、一気に評価が上がった感ありですが、私はそれでも、田中恒成が己の特性を生かしてスピードで出入りし、ヒット・アンド・ランに徹すれば勝機は充分あると思います。手足のスピードははっきり田中の方が上ですから。それを長丁場に渡って維持することを優先して闘う分別を、田中が持てれば、ですが。
井岡はR45ファンさんのコメントにあるとおり、自分の「構図」に合う相手と数多く闘ってきた選手で、マルチネスの多彩な攻防展開には対応出来ない面があり、それが今回マルチネスの良さを引き立てて見せたとも思うのです。もっとも、田中恒成が井岡戦のように、考えなく正面突破を図るようなら厳しいとは思います。その辺、再起後の様々なタイプの相手と闘ってきたキャリアが、良い形で結実すれば、という条件つきではありますが、能力的には彼によるマルチネス攻略は可能だと見ます。
終盤の展開については、私は率直に「露呈」だと見ました。世界戦20何勝と喧伝していますが、本来それだけの数をやれば、もっと早くにこのくらいの相手と当たることはあったはずです。少なくともライトフライ級までなら乗り切れたでしょうが(ロマゴン戦回避を容認して言いますけど)、フライ級以降は無理だったでしょう。それをよくここまで引き延ばせたものだ、という見方です。
今後については、西田凌佑挑戦という観測もあり得るでしょうか。確かにABEMA繋がり、西田にとり名を売るチャンス、という側面はありますね。仰る通り、他の三王者とは組むのが困難ですし、また勝算を言えば苦しいでしょう。しかしそれを言えば西田とて同様で、機動力のない井岡が避けてきた長身、リーチがあっておまけに左です。もし再起があるとすればマルチネスとの再戦が、一番ありそうに思うのですが...報酬が倍とまでいくかどうかはわかりませんが、もちろん相当上乗せが要るんでしょうね。再戦条項とかは何も無いんですかね。ABEMAにすれば、因縁の再戦、プライドを賭けて再び、みたいに簡単にやってしまえば話も早い、くらいの感じでしょうか。私はそういうの、もう時間の無駄だと思うクチで、マルチネスと田中の試合など、次に繋がる試合に進んでほしい、と思いますが、ABEMAが何もせず引っ込むとも思えません。やれやれです。


>モノクマさん

初回早々、試合が井岡の手に落ちたか、と思わされたので、その後の反転攻勢は驚きましたね。単に圧力だけじゃない。力の出しどころを弁え、長短の切り換えがあり、防御に改善が見え、しまいにはスイッチヒットでのアウトボクシングですから。お見事、天晴れ、脱帽というところでした。しかもボディでけっこう効かされたあとですからね。しかし思えば元五輪選手の32歳ですから、単に力任せでない部分があったとて当然で、私はそこを見誤っていました。井岡や陣営が素人の傍目と同様の見方をしていたのかは不明ですが、おそらくそういう部分はあったことでしょう。ここまで出来ると見ていたら、十中八九、この試合自体が実現していなかっただろう、と思います。
上記しましたがフライ級以降の井岡は、限定された展開での巧さで闘える試合を中心に闘ってきて、今回のレベルだと戦術面での対応が追いつきませんでしたね。やれることが限定されるのは、大なり小なり全てのボクサーがそうだと言えますが、世界戦20何勝という選手にしては、その幅が狭すぎると言えます。その現実がマルチネスの多彩な攻防により暴かれた、という試合でした。
今後については、マルチネスは率直にプロとしての要求をしてくるでしょう。問題はそれが度を越した素人考えのものか、プロとして現実を見た上でのものか。陣営の出方や、今回の試合における契約内容などにも左右されるのでしょうが。
田中恒成戦については、実現してほしいと思いますが、当面田中が20日の試合で好内容を見せないと始まらないでしょうね。その上でAmazonがマルチネス招聘に本腰を入れるかどうか。正直、この部分は案外難しいのでは、とも思いますが、試合内容で全てを覆せるか、でしょうね。
井岡との再戦は、ABEMAにとってはその実現に対する世評はあまり関係ないと思います。やれば喧伝の仕方はありますし、PPVにでもしない限り、視聴者数も一定以上稼げるでしょう。それ以外のことは基本、どうでもいいと言うと言いすぎかもですが、二の次ではありましょうね。
言われてWBA暫定の存在を思い出しましたが(笑)。IBFは1位2位が空位ですので、こちらは猶予がありますかね。
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