さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

若き王者の堅陣に、一矢報いるも届かず 前田稔輝、二度目の挑戦も松本圭佑に判定負け

2024-02-23 01:42:27 | 関東ボクシング




ということでLeminoフェニックスバトル、毎度の通り、見どころありな試合が連なりました。
休憩ほとんど無しで突っ走って全6試合、KOがひとつだけだったので、メイン終了22時20分頃、という...いや、えらいことでありました。


順番はセミだが、メインと見て違和感なし、松本圭佑vs前田稔輝は、松本が判定勝ちでした。

初回は前田の切れ味とリズムがまさり、松本の右を外して左をクリーンヒット。
ポイントを取ったように思いましたが、2回から前田の左ストレートに対し、松本が振りの小さい左フック、右ショート、また左フックと、カウンター、リターンを決めていく。
ことに左のチェックフックが鋭く怖い。前田、左ストレートを打つ回数が制限されていく。
3回も前田が打つたびに、松本のカウンターが冴える。左ストレートのみならず、右ジャブにも左ジャブでお返しが来る。

松本は序盤、驚くほど切れがあり、敏捷で、なおかつ安定感のある構え。
果たしてこれが中盤以降も続くのか、という気もしたが、もし続くようなら、前田とて敵わないのでは、とこの時点で思うほど。 


前田、徐々に左目の周りが腫れてくる。バッティングもあったが、ヒットもそこに重なっていったか。
4回、引き続き松本の右カウンター、追い打ちも。この後、足が突っかかったか、踏んでいたかというタイミングで、松本の右。前田ダウン。
足がどう以前に、ヒット自体微妙に見えたが、ダウン裁定。これ自体はダメージ甚大、ということもなかったが、痛い失点。

5回、リードされた前田が、ワンツー止まりでなく、連打の数を増やしていく。その副産物として、前田のボディブローが決まる。
しかし松本、連打されても大きく崩れず、また敏捷にカウンター、リターンを決める。
前田、左目が見えにくいか、松本の右ダイレクトを打たれ、クリンチに逃れる。
松本、さらに前田の左を外し、右カウンター。
6回、松本は前田をおびき寄せては右カウンター。


松本は2回から好調、中盤に来ても落ちない。そこへ前田の視界が悪いという弱みが重なり、構えて待つ余裕もあり。
7回、前田にドクターチェック。左目周辺は紫色。完全に塞がってはいないが、視界は悪そう。
前田は懸命に攻め、左ボディストレートを連打に織り込んで打つ。松本のワンツーを左カウンターで狙うが、これは当たらず。


8回、前田が軽いが速いコンビを繰り出す。
9回も両者、鋭いコンビにカウンター、リターンが交錯するが、前田も食い下がる。追う側の強みでもあるか。
しかし松本の左フック引っかけ気味、前田少しよろめき?松本がワンツースリーと追撃。
とはいえ、松本もさすがに疲れが見え、右をミスして少しのめったところに、前田の左ショートを食う。危ないタイミング。

最終回、松本がクリアにリードしているが、前の回と同様、右をミスしたところに前田の右ジャブから左ストレート、また決まって、今度は松本ダウン。
スローで見ると、前田の右で松本のバランスが乱れ、左足が浮いたときに左が入っている。
踏ん張りが効かないタイミングで打たれた松本、ダメージありと見える。再開後、前田の左ストレートがまた決まり、松本ピンチ。
しかし揉み合いつつ、身体を前に向けて保たせ、小さい右ショート。逆に前田の足がもつれる。
前田は左アッパーをボディへ送るが、松本クリンチに逃れる。ラスト15秒を切り、前田のコンパクトなワンツー決まり、松本よろめくが、ゴングに逃げ込む。

判定は96-92で三者とも松本支持。さうぽん採点も、合計は同じでした。



松本は、過去二試合のタイトルマッチと違い、中盤からの失速というか、出力調整というのか、何しろ間延びしたり緩んだり、というのが、終盤に至るまで見えませんでした。
前田のスピードや切れ味に対し、鋭く多彩な合わせ、お返しで対抗し、脅かして得点していく安定感は、タイトルマッチ三試合めにして、安定王者の風格さえありました。
ただ、終盤、奮起した前田が手数を増やし、食い下がってきたところ、緊迫の攻防ゆえ、仕方ないところでしょうが攻め立てられ、僅かずつながらミスも目に付きだし、最終回はダウンを喫して大ピンチでした。

もちろんこれは反省材料でしょうし、本人も悔しさを押し殺してコメントしていましたが、逆に言えば前田のような強敵に対し、終盤まで弱みを見せずリードしていたのは大したものです。
それに、ダウンしてダメージを負っても、完全に決壊せず保たせられたのは、常日頃のトレーニング、過酷な走り込みで鍛えた足腰の強さ故。日頃の努力が、彼を救ったと言えるでしょう。
抜群の体格、センスにテクニック、そして努力の積み重ね。松本圭佑には、一流のボクサーたり得るに必須の条件が備わっています。



そして、その松本圭佑に肉迫した、前田稔輝も見事な健闘だったと思います。
ポイントはリードされていましたが、松本に楽はさせておらず、それが最終回の猛攻に繋がったわけですし、内容的にもレベルの高い攻防を続けていました。
強いパンチを打てる反面、コンビネーションの多彩さに不足あり、強弱の付け方がこなれていないことなど、改善すべき点もありますが、こちらも松本同様、終盤まで緩むことない闘いぶりから、日頃の鍛錬の跡も見えました。
もし挑む相手が阿部麗也や松本圭佑でなかったら、すでに戴冠していて不思議のない実力を証明した、と思います。

あと、繰り言ですが、この試合に何となくWBOアジアタイトルもかけられていたら、あと2ラウンズあったのになぁ...とも。
まあこれは本当に繰り言で、そうだったから前田が勝てたとは限らないわけ、ですが。ハイ、わかってます。言ってみたかっただけです(笑)。


何しろ、この両者の闘いは、日本タイトルマッチとして、何処へ出しても恥ずかしくない、堂々たる内容だったと思います。
Leminoの配信を通じて、出来るだけ多くの目に触れて欲しいと心から思える、そんな試合でありました。


と、試合終わってすぐに、YouTubeにハイライトが出ていますね。今までもこういうことをしていたんでしょうか。
まあ、無料ですし、未見の方はLeminoでアーカイブを是非見ていただきたいところですが。






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3 コメント

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Unknown (R45ファン)
2024-02-23 09:15:01
文句なしにメイン張るべき眼福の試合でした。

松本くんは最終ラウンドにダウンしたのを気を抜いたから、と言いましたが、これは前田くんの与え続けた脅威が、それまでキレ、タイミング、精度とも抜群だった松本くんの攻防に穴を空けさせたんだと見ます。
前田くん、素晴らしいスピードと左の威力。ただ踏み込んでのワンツーが攻め口のほとんどで、これに返しのフックや逆ワンツーがあれば…など試合中に思いましたが、前回は顎骨折に今回はあの腫れ、終盤のダメージありながら落ちない出力に感心しました。阿部さん相手より差をつけられて…これは厳しいと見てたらあの最終ラウンドですからね。あと10秒あればストップ勝ちしていたかもしれません。並の王者クラスならとっくに攻略してますがね。

ただ松本くんが一流だった。二人とも素晴らしい。
勝った松本くんは鍛錬して世界への扉開いて欲しいです。
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Unknown (海の猫)
2024-02-23 15:47:58
良い試合でしたね!

前田は敗れても評価を下げないどころか上げたかと思います。二度の挑戦が阿部と松本でなければ、というのは誰もが思ったのでは。持っている武器の鋭さでは、松本と同等かそれ以上にも見えましたが、全体としてボクサーとしてのキャリアの差が出たように思います。阿部戦も今回も早い段階で負傷したのは、不運なのか戦い方やディフェンスの問題なのか。ガード低く、しっかり打ち込むので、カウンターもらった時のダメージも大きいのですかね。

松本は攻守ともに備えているものが多かったですね。最終Rは大ピンチでしたが、過不足なく振る舞い、凌ぎました。自分はミライモンスターを全く見ていないのですが、試合を見ただけで、幼い頃から積み上げてきたものの厚みが感じられます。不足や反省点もありますが、そこは本人や陣営も分かっていて、さらに磨きをかけてくるでしょう。

日本タイトルマッチがこのレベルだと誇らしくなりますね。日本王者ってこんなに強いのですよ、挑戦者もこのレベルが来るのですよ、と。余談ですが、一緒に見ていた家族に、さっきのアジアタイトル(中嶋-中川)よりこっちの試合の方が凄く見えるけと、向こうの方が広域タイトルじゃないの?と聞かれまして。説明が難しいですね…。あっちも悪くはない試合でしたが。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2024-02-24 14:58:44
>R45ファンさん

松本リードはクリアなものでしたが、内容的には前田も食い下がっていた、というところでしたね。今回の松本は失速も調整も見えず、最終回のダウンは純然たる前田の脅威ゆえ、だったと見ます。
前田の課題は、強打を元手に攻撃のバリエーションを増やすこと、でしょうね。もっともそれを考えてきている節はそこかしこに見えました。以前よりは良くなっていると思います。ただ、松本の鋭く多彩な迎撃の前に、今回は及ばずでした。
松本は前回のオイコラ戦で、WBOランクも狙ってアジアタイトル込みの試合をしましたが、15位以内に入ったら用済みか、或いは人事異動か?ぱっと返上してしまっていて、それが今回の試合に幸いしたのかも...と、前田贔屓の心情でいくと、思ってしまうところですね。


>海の猫さん

確かにボクシングの習熟度、闘い方の幅など、松本に一日の長あり、でしたかね。また、父の松本好二トレーナーが、基本セーフティーファーストの指示をするので、前田にとっては松本が迎撃に徹する分、自分から崩しに行かねばならず、難しかったということもありましょう。松本の試合運びは、相手が強敵である場合はベストの選択となりますね。格下相手に、或いはパンチ力を「当て」にしない技巧派相手だと、鮮やかに、といくかどうかはわかりませんが。
前田の負傷は、基本的には相手の力ゆえ、ですかね。今回はバッディングかな、と見えもしましたが。打ち込み姿勢は、打ったあとパッと下がる足の運びはあったように思います。ことに序盤は足のバネが程良く効いていて、実に良い感じに見えました。
ミライモンスターでは、早くから厳しく、かつ色々と工夫ある練習と身体のケアをしている様子がよく見られました。ただ、肝心なとこではいつも堤駿斗に負けるんです。プロでの対戦、見たいですけどね。それこそ「恨み晴らさで」の世界ですが、堤の方が変なジム入っちゃいましたからね。どうにもこうにも。
この位の試合、同じ事ばかりですが、大田区とか代々木第二でやれる日が来れば、それが日本ボクシング界の夜明けだと思います(笑)。井上尚弥東京ドームよりも、本当に目指すべきはこちらです。
アジアタイトルのお題目については、もう、あるがままを言うしかないですが、難しいですね。あまりぶっちゃけてしまうのも、何か口惜しいですしね。
かつて、亀田興毅がWBAバンタム級王座にあったとき、たまたま親戚一同が集まることがあって、TVで試合を見ていたことがありました。そこで「今、WBAバンタム級チャンピオンは三人居る」と、言わんでも良いことをうっかり言ってしまって、説明するのに難儀したことがあります。ボクシング業界には、こういう世間の目、声、疑問に対して、答えようという気がまったく無いですね。結果、希にですが我々ファンが迷惑する、という...。
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