さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

勝ち試合を見た気がしない 宮崎亮、苦闘の末KO勝ち

2013-05-08 22:28:23 | 関西ボクシング

今日の試合はTVで見ました。会場にはとても行く気がしませんでした。
その理由を繰り返して書きはしませんが、正解だったという気がしています。
感想を簡単に。


宮崎の出来は、とてもじゃないが良いとは思えませんでした。
始まって早々から足がべったりで全然動きがない。打つタイミングは彼ならではの非凡さが見えましたが、
防御のセンサーが全然働いていないというか、もろに相打ちをもらうことが再三再四。
挑戦者のカルロス・ベラルデは、威圧感に乏しい風貌のとおり、ボクシング自体も怖さは感じなかったですが、
その対して鋭くもなく力感もないパンチを、相打ちのタイミングで身体の芯に食っていて、
大丈夫かコレ、倒されるんちゃうかとヒヤヒヤ、というより、覚悟しかけるような試合でした。

5回、少しずつ足が動き出し、多少は良いタイミングと、立ち位置の移動によって得た良い角度から
クリーンヒットを奪って反撃を外し、という宮崎らしさが見えたところで、唐突に左フック一発。
鮮やかなワンパンチ、フィニッシュは大変結構でしたけど、そこまでの過程については、
絶不調というか何というか、よくぞこれで勝てたものだという感じ。
暫定王者シルベストレなどの上位陣と闘っていたら、おそらく陥落していたことでしょう。

空位決定戦を暫定王者の存在を無視して行い獲ったベルトを、このまま返上するとのことで、
それは批判されて当然でしょうが、その経緯をあえて棚上げして言えば、もうこのクラスで
これ以上試合をすることは不可能でしょうから、その意味では返上、賛成です。
まあ、そんならなんで、そもそもこのクラスで...というのは、これまた繰り返しになりますので、
敢えて書きませんが。

しかし、なんでもいいから世界王座を獲って、親子愛やら、昔不良だったとかの話をまとわりつかせて、
それで勇気や感動や、と言われても、宮崎亮というボクサーの持つ才能、異形のカウンターパンチャーとしての
スリルと芸術性をはらんだ彼の魅力に、一切触れられないままの知名度向上については、
若手時代から見てきて、彼の将来に期待したり、心配したりしてきた我々にしてみれば、
なんだかなぁという感じがしますね。
今日の試合なんか、最後の回を除けば、宮崎何やってんねん!の一語に尽きてしまうんですが...。

今後は、転級というか復帰というか、ライトフライ級で闘うことになるんでしょうかね。
まあ、4団体認可で間口は広がっていますが、かくあれかし、という話になるのかならんのかはともかく、
彼本来の魅力が見られるような良いコンディションで、彼と闘うに相応しい強豪との試合を
是非見てみたいものです。



さて、メイン?の井岡一翔vsウィサヌ・ゴーキャットジムの一戦ですが、
単発の左上下がそこそこ伸びる以外にあまり見どころもないウィサヌを、
コツコツ攻める井岡の堅実なデラホーヤ風城攻めボクシングが攻め落とした、という展開でした。

9回、ウィサヌが打たれてバックステップしたとこに井岡のボディブローが入り、派手に飛ばされて
そのままダウン、という流れは若干、漫画的ではありましたが、井岡の堅実さと集中力は
相変わらず高いレベルにありました。もう少し、爆発的なものがあってほしいとは思いますが、
それが彼のボクサーとしてのキャラクターなので、仕方ないところですね。

しかしこの試合は、結局のところは「ライトフライ級転向(復帰)第二戦」という位置づけで
見る以外に見ようがない、そういう試合でしたね。相手の選手の力量不足、過大なランクの数字、
そして何より、本来の王者の存在を無視した興行者と、それに追従するメディアの怠慢により
本来その意味を持たないはずの試合が「世界タイトルマッチ」として虚構、じゃなくて挙行されている
この現実の前に、私は言葉では言い尽くせない感情を持っています。


今後についても、宮崎亮の転級とともに、彼の持つ「モラトリアム王座」の行方は、妙なことになるのかもしれませんね。
まあ、この辺については、かくあれかし、という話になることなど、期待する方がどうかしている、
というのが正しいんでしょう。なるべく、然るべき方向に話が転んでくれれば幸いなんですが...。


同じWBAのダブル世界戦、一昨日もあったばかりなんですが、何だか見終えた後の心境が、
自分でも驚くほどに違います。統括団体の批判など、私もあれこれやってきたクチですが、
結局は「向き合い方」の問題なのかなぁ、と、ぼんやり思っております。




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3 コメント

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Unknown (アラサーファン)
2013-05-09 00:54:16
今晩は。私もこの程度の試合で月曜日の試合と同等の評価は出来ません。
前からずっと言ってますが宮崎君のセンス、あんなもんじゃありません。本人とは関係ない都合で無茶な階級を宛がわれ、「僕はロマゴンとやりたい」と言って感動させてくれた宮崎君がベタ足で無理に打ち合いして、しかもマッチメイクまで非難されて・・宮崎君のボクシングセンスや魅力的なキャラは正当に評価される事なく、いつまでも「井岡君のお下がり王者」としての評価しか得られないのかなと思うと悲しくなります。救いは5ラウンドのカウンターですが。
そして井岡君の試合はますます眠くなりました。見るからにヒョロ弱、左しかない、「宮崎君の東洋タイトル防衛戦のフィリピン人の方が強い」と思えた相手に随分チンタラしとるなと。バランスは確かに良いですが何だかパンチを置きに行った感じでキレが無かったかと。正直そそられない、井岡君より井上君の方が魅力あります。
私の好きな、応援した二人の素晴らしいボクサーをつまらなくした陣営と赤坂局には恨みすら抱きます。
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井岡モラトリアム王者の記事から拝見してます (上撰)
2013-05-09 09:00:15
確かに世界戦独特の緊張感のカケラも無い酷い試合でしたね。
どちらも練習試合かスパーリングのようでした。
特に井岡選手の試合は最初から最後まで緊張感ゼロ。
試合前や入場時の父親や叔父の険しい表情もなんかわざとらしく見えました。
周りの大人達の事情があるのか知らないですが、自称三階級王者を含めた当事者達の本音を聞いてみたいもんです。
こんなんでいいのかと。
興業だからと言われればそれまでですけど。
井岡選手には期待をしてただけにとても残念に思います。
本人達の笑顔とコメント。
周囲の祝福の声。
何もわかってないタレントの起用。
元チャンピオンと解説者、アナウンサー達の誉め称えるだけの実況。
誰一人不可解な決定戦とその後の逃走劇に言及しないマスコミ。
本場アメリカだったら勝利者インタビューで突っ込み入れそうなもんですけど。
内山選手は本人が望んでもガンボアと出来そうに無いのに。
日本人王者では内山・山中の両選手しか当面期待出来ないですね。
でも「神の左」はやめてほしいです(笑)
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2013-05-10 13:37:52
>アラサーファンさん

宮崎亮の才能、魅力をああいう類型的な、TV番組的情緒でしか語られないことと、ああいう不出来な試合への失望が相まって、非常にもどかしく思いますね。救いは勝ったこと、フィニッシュの強烈さでしたが、転級に関してはどうやらまた先送りなのかも、という話です。これも井岡のお下がり、というと表現がきついですが、そのあたりのうまい算段がつかないから、ということなのでしょう。何ともかとも、です。

井岡の試合は、ランカーとしての転級二戦目ならあんなもの、と思います。かつて叔父さんが転級した際の試合には、もっと弱い相手にもっと酷い内容の試合がいくつもありました(もちろん、強敵に快勝したのもありますが)。しかし記事にも書いたとおり、全然「世界戦」じゃありませんからね。TV局のご意向に沿った、数字さえ良けりゃ後は知らんという方針を貫くんであれば、この素晴らしいボクサーであるはずのふたりを、心底から応援できる日は遠いのかも知れません。残念です。

>上撰さん

何から何まで、仰るとおりの感想を持ちました。いつもは、局アナやタレントさんの映っているときはチャンネル変えるか、録画なら早送りをするのですが、今回久々というか初めてというか、ちょっとその試合の合間を見てしまったんですね。あの女性アナウンサーかタレントさんの、中身ゼロのコメントや、若い俳優?さんのリングアナ起用には、正直言って怖気が走りました。あまりにもわざとらしく空々しく、とても正気でやっていると思えず、ようもまあこないに寒いことを真顔で出来るもんやななー、と。

それ以外の部分でも、本当に何もかもが虚飾としか言いようがなく、ある意味狙ってやってもこうはいかんで、と感心するくらいでした。「ボクシング中継とは本来『報道』であるべきだ」なんて正論を、こんな「連中」に対しては言う気にもなれないですね。

「神の左」についても同感です。勘弁してほしいです。誰が思いついたんか知りませんが、頭の悪い人がおるな、と思います。
もっとも三浦隆司の「ボンバーレフト」も、いかがなもんかと思いますけど(笑)。

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