さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

多階級制覇流行の弊害極まれり 最高峰なのに退屈 メイウェザー、またも大勝

2013-05-10 11:38:16 | フロイド・メイウェザー

今更ですが日曜日の、メイウェザーvsゲレロ戦について。

展開についてはあの通り、予想のまんまというかなんというか。
最近は、一試合にひとつずつ、ちょっとどうかなと思わせるところもあるメイウェザーでしたが、
今回は序盤にロバート・ゲレロが果敢に攻めたものの、穴が開きそうな予感は皆無でした。

マルケス戦で、体重超過を金銭で処理した件。オルティス戦の倒し方。
モズリー戦、2ラウンドの危機。コット戦では若干苦闘。そしてその後の収監と再起。
こういう過程を経て、若干風貌が「ムショ帰り」ぽかったのは笑えましたが、
試合ぶり自体は、相変わらず抜群の防御技術と勘が冴え渡る、メイウェザーならではの
ボクシングの科学と天才の華麗なる融合、とも言えるものが、
フルラウンドに渡り、滞りなく披露され続けるものでした。

と、凄く良い表現をすれば上記のとおりですが、それが見てて面白いのかというと
全然そうではありません。同様の感想をお持ちの方も多いと思います。

メイウェザーの防御を攻め崩す技量、力量が見るからに欠けているゲレロ、
防御は見事だが、攻撃に関しては必要最小限、「打倒」が期待できないメイウェザー。

両者の闘いは、技術的には見どころがあっても、傍目の我々が期待するスペクタクル、
スリルといった要素が乏しく、何一つ戦前の予想、想像を裏切る要素がない展開が
延々と続く試合は、言っちゃなんですが退屈の一語でした。

まあ余計なお世話かもしれませんが、こんな試合で数千万ドルの報酬を得るといっても
そんなお金、どこの誰が出してんのかね、と不思議に思います。
アメリカのPPV視聴者って、こういうのホントに好き好んで見てるんかね、と。

何だか、アメリカのトップシーンって、結局のところは複数階級、というより
もはや「多階級」制覇の王者が乱立し、それによってステイタスを得た者同士が
PPV放送のビッグマッチを闘うことが成功、という図式になっています。

しかしその挙句、選手がベストウェイトを外してボクシングの質を落としてしまい
(マニー・パッキャオのような、驚異の例外もありますが)、
これ、ベストの階級でもっと早くぶつかってればな、と思うカードもけっこうあります。
昨年ならメイvsコットですね。140ポンドのときにやってればな、と思いました。

そして、もしメイウェザーがライト級あたりに留まって、防衛や統一戦を続けていれば、
抜群の防御センスとともに、もっとスリルのある攻撃、KOシーンが多く見られたのではないか、とも思います。
実際、このあたりでは、カスティーヨ戦は苦闘でしたが、フィリップ・ヌドゥ戦や
スーパーライトでのアルツロ・ガッティ戦など、強敵相手に見事なKO勝ちをしています。

結局、ビジネスとして成功であっても、それにより犠牲になっているものもある、と思えてならないのです。
統括団体乱立、階級増加により、真の強さや王座の権威が高額報酬に繋がる図式が崩壊した結果、
ビジネスとしては肥大したものの、ボクシングの魅力自体が削られている面があります。

ウェルター級より上に上げてからのメイウェザーの試合を見るたび、そのように感じることが多かったですが、
今回の試合などは、本当にその典型というべきもので、もしゲレロとの試合が、
下の階級で闘っていたころに実現していたら、まったく違った内容と結果になっていたでしょう。


往年のレナード、ハーンズによって先鞭がつけられ、デラホーヤ、パッキャオ、メイウェザーらが主導した、
近年のこうしたボクシング・ビジネスの傾向は、
いい加減限界に近づいてきているのではないか、という気もしています。

実際、今回SHOWTIMEへの移籍初戦で、メイウェザーの試合にしては、PPVの契約件数が少なかった、とか。
当初、カネロ・アルバレスvsオースティン・トラウトとのダブルメイン?予定だったことから、
視聴者の購入意欲を削いだ結果なのかもしれませんが、今回の試合内容が容易に想像できるものだったことも事実でしょう。


そしてこの流れに掉さす新たなスターは現れないのでしょうか。
メイウェザーやパッキャオも、遠からずリングを去る日が来るでしょうが、
その後に世界のトップシーンを担う、次世代のスーパースターといえばなんといっても
エイドリアン「アホと天才は紙一重」ブローナーということになるのでしょうが、彼も彼とて、
次の試合は一気にウェルター級、しかも一番攻略容易と目されるポール・マリナッジに挑む、ということになっています。

今はかつてのメイウェザーと同じく、ライト級でバッタバッタと相手を倒しているブローナーですが、
今後はそういうわけにいくのかどうか。今のところ、強打者揃いの140ポンドをパスしていますが、
そのうち真の強敵と出くわしたとき、いったいどうなるのでしょう。

今のところ、メイウェザーよりも相手との距離を外さず、密度の濃い攻防一体のボクシングを繰り広げている
天才ブローナーですが、彼もまたクラスを上げることにより、その密度を薄めて、防御に比重を置いたスタイルに変わるのでしょうか。

そして、そのような変容の末に、多階級制覇を果たしたとして、それが変わることなく、
選手のステイタスと、高額報酬を保証するものなのでしょうか。

米国における現状のボクシング・ビジネスには、次世代の選手層育成や、ファン層の維持という面において、
かなり不足した面があるように感じていますが(ヘビー級の衰退はその先駆けのような気がします)、
往年のように、ひとつの階級で多くの防衛と統一戦を重ねるスタイルが評価されるようになる、
そういう揺り戻しはないのでしょうか。今のところは、そんな兆しはどこにもありませんが。


話は戻りますが、もしメイウェザーが、ライト級に留まって闘い続けていたとしたら、
いったい今頃、世界のボクシングシーンはどうなっていたのでしょう。
パッキャオ、マルケス、カサマヨールにエドウィン・バレロ...もし彼らと、メイウェザーが
135ポンドで対戦していたら、きっとボクシングの歴史に残る、凄まじい試合ばかりだったことでしょう。
そしてメイウェザーがこれらの試合に勝ち抜けば、彼は石の拳ロベルト・デュランを凌駕する、
同級史上最強の評価を得たはずです。

しかし、そういう夢というか妄想というか、こうしたものが実際に試合として提供されるときには、
双方の選手が本来の体格よりも数階級上の肉体をまとっているのが、近年の常識です。

やはり、そういう傾向は、どうも好きにはなれませんし、
そして、長い目で見て、けっして良いことだとも思いません。
今回の試合を見て、フロイド・メイウェザーの才能が稀有なものだと改めて感じたからこそ、
余計にそういう思いが強くなりました。



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2 コメント

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Unknown (アラサーファン)
2013-05-11 18:26:47
同様な感想です。暫定とはいえゲレーロはウェルター級王座に就ける実力ないと思ってました。ベルトに勝ってますがあれも頭から突っ込み強引に距離を潰しただけ。やる前からメイの楽勝を予想しましたが全く予想通り。メイの右ストレートに左ボディカウンターを練習してきたようですがそれだけ。メイはパンチもステップもボディワークも全部最小限で無駄なく合理的。負ける要素は無い。だから余計にリスク冒さない。つまらない。後メイってタフでパワフルで自分よりデカイ相手とやらないですよね。あのジャブと右をある程度お構い無しにくる様な相手に今まで通りの距離で勝負続けられるのか?デラホーヤ以降そんな相手とやってないですよね。
二度とこの答えは出ないでしょうが。本当につまらないです。ちなみに同日放送されたクリチコ王。これもいつもの体格と覆い被さりで終わっちゃいましたね。やれやれです。
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コメント遅くなりました。 (さうぽん)
2013-05-14 10:46:41
>アラサーファンさん

遅くなりました。ゲレロへの見方には同感です。ああいう試合内容がビッグマッチへの扉を開いたという事実に、今でも違和感を持っています。メイウェザーの闘いぶりは、本来の体格を考えればああならざるを得ないのでしょう。しかし記事にも書いた通り、ああいう試合内容が広く、多くに好んで見られるものなんでしょうか。相手選びについては仕方ないかと思う反面、やはり全ボクサーの中で最高の報酬を取る選手にしては...とも。少なくとも、常に最強の相手と最高のタイミングで闘った、同級時代のレナードやハーンズのレベルとは比較出来ないですね。パッキャオとの間で繰り広げられた「ああだこうだ」は、ある意味史上最高の熾烈さだったかもしれませんが。

クリチコは、かつて、ちょっとビジーファイトになると息が切れてしまい、その間隙を突かれて倒された経験から、体力をアップさせるよりも温存させ、常に安全策に徹するという方向性でボクシングを組み立て直しました。その転換が見事に成功し(てしまい)、今のランカーの顔ぶれでは攻略至難、期待出来なさそうなのが、試合決定時ですでに見え見え、という繰り返しです。当分、どうにもならんでしょうね。

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