さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「採点競技」としては接戦だったが 田中恒成、スプリットで石田匠に勝利

2021-12-11 20:05:22 | 中部ボクシング




ということでparaviの配信を見終えました。
インタビューの最中でブチッと切って終わったのは、所詮はTV局の片手間、としか言いようのないもので、いい気はしませんでしたね。


それはさておき試合ですが、ポイント的には接戦だったかと思います。
初回は石田匠が長いジャブで支配。クリアに石田。
しかし2回、石田は変わらずジャブがよく出るものの、田中恒成が徐々に出て、両者の間合いが縮まってもいる。
石田のジャブがロングでなく、ショートの距離になりはじめたように。田中ボディ、ワンツー、左右のヒットも。やや田中?迷う回。

3回、石田はワンツーも繰り出すが、田中距離を詰め、強い右のヒット。石田、鼻から出血。田中の回。
4回、石田のジャブが出ても、田中を食い止められないのがはっきり見える。田中の右がインサイドに。ボディ攻撃も。田中。
5回、両者、攻防の切り換え鋭く打ち合うが、田中がその都度打ち勝つ。田中。

6回、石田は目先を変えて、右フック。ダブルジャブからワンツー、アッパーも。田中の右ダイレクトもヒット。
ポイントは石田か。しかし田中、割と余裕はある?サイドに速いステップ、切り返しで外す動きも。

7回、田中の左ボディ打ちが再三ヒット。これだけ数が入ると「じわじわ効いてくる」かどうか以前に、ヒット数としてポイントになる。
ダブル、トリプルジャブで追って右も。クリアに田中の回。

8回、終盤に田中が詰められるか、しかし疲れも出てくるか、と思っていたところ、石田が苦しいながら盛り返す。
右アッパー、左フックがヒット。解説の田中亮明が「丁寧」と褒めたとおり、石田は頑張って、防御の質を落とさない。
しかし田中、ボディ打ちから連打で攻め込む。この回迷う。数では石田、有効「度」では田中。難しい。

9回、石田のワンツー、田中のガードを割ってヒット。田中は上下のコンビを繰り出すが、石田右フック。
終盤、田中が打ち合いを仕掛け、手数と攻勢は見えたが、石田の方が正確にヒットしている。石田。
10回、互いに勝負に出るかと思ったが、1分ほど見合う感じ。この辺は少し意外。田中、駄目押しが要るとは思っていない?
少し間合いが空いて、石田がジャブを繰り出す。石田は必死の形相、田中はいつも通りの感じで終わる。石田。


採点は2-1で割れ、いずれも僅差。96-94で割れ、ひとりは96-95で田中。
さうぽん採点は、石田田田田、石田田石石、96-94、田中ですが、迷う回がふたつあり、ドロー、或いは石田の勝ちもある、というところです。



外国人ランカー相手にデビューし、その後も早々から「世界路線」に乗った田中恒成ですが、同時にミニマム級からのスタートで、4戦目の原隆二戦を皮切りに、木村翔、田口良一、そして井岡一翔に石田匠と、4階級に渡って、日本のトップクラス同士の試合を闘ったことになります。
こういう形で、ファンの期待に応え続けている田中を、まずは称えたいと思います。

今回の再起戦とて、他に楽な道はいくらでもあったはずですが、4階級目で体格の利はなく、質的向上を問われるところで、115ポンド級としては最上限の長身とリーチを持ち、しかも日本王座5度防衛、かつては世界1位まで上った石田匠と闘うというのは、まずそれ自体が称賛に値する「挑戦」だと言えるでしょう。


その上で、ポイント上は接戦だった、どちらに転んでもおかしくなかった、という試合に見えたのは事実です。
石田のジャブによる「支配」は許さなかったものの、外しきっての「無効化」はもとより、攻撃面での完全攻略もまたならず。
そして、距離を詰めてボディ攻撃に成功して、試合の主導権を握りつつはあったが、懸命な反撃を許しもしました。

4階級目に転じた初戦で厳しい敗北を喫し、再起戦としては相当難しい相手と闘ったことを考えれば、評価を下げるような試合だったとは思いません。
むしろ、もっと苦しんでいたとて不思議のない試合だった、と思うくらいです。
課題としては、やはり攻撃力に、もうひとつ威力があれば、とは思うところです。体格的にはかなり「出来」てきたように見えますし、試合を重ねればその分、さらに良くなっていくでしょうが。

ただ、そういう普通の話とは別に、少し気にかかったのが、終盤、もちろん疲れもあったでしょうが、ちょっと「緩めた」?感じもあったように見えたところです。

本人は試合後、精神的に良い状態で闘えたという意味で、笑顔でリングに上がれた、というようなコメントをしたようですが、今後の試合で、この辺が良い方向に作用するのかどうかは、傍目には何とも言えない部分です。
とはいえ、傍目が思う以上に、手応えとしては石田匠を打ち込めていた、ということも含めての話だったとしたら、それは今後に、明るい展望ともなるのでしょうが。



敗れた石田匠、ジャブをあれだけ当てていたのに、という見方も出来るでしょうが、内容的には、数字が僅差であったとて、勝ちには僅かながら届かず、という印象が残りました。
初回を除けば、ジャブは出ていても距離が創出出来ず、突き放せない時間が長く、ボディ攻撃から連打される回数もかなり多かった。
加えて、どうしても一瞬、動きを止めたり身体を曲げたり、という場面もあり。
それもこれも含めて、採点競技のボクシングとしては接戦でも、やはり「闘い」であるボクシングにおいては...と言わざるを得なかった、と。
厳しいようですが、そう見ました。そういう意味では、公式採点は納得のいくものでした。

しかし、その技量がやはり、日本のトップクラスであることも、改めて知らしめた試合内容でもあった、と思います。
相変わらず、日本屈指のグッドジャバーであるところを存分に見せてくれました。浪速のブキャナン、とは言い過ぎでしょうか。
今回、52.5キロという、スーパーフライ級リミットを僅かに上回る契約体重での試合でしたが、それでも減量は相当厳しいはずで、その辺は心配でしたが、田中恒成とのビッグカードで、心身共に充実が見えました。
今後、どういう展望があるのかわかりませんが、階級の変更があったとしても、まだまだやれると見えたし、これからも応援したいボクサーです。



とまあ、細かいことをあれこれつべこと書いておいてナニですが、やっぱり良いカードって組むものですね、というのが、いつも通りの結論です。
10ラウンズ、あっという間の濃密な時間でした。
素晴らしい試合で、楽しい時を与えてくれた両選手に、感謝したいと思います。





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軸足を「あちら」に置く流れのひとつ 尾川堅一、マッチルームと契約/カシメロ戦中止!

2021-12-11 00:03:11 | 海外ボクシング




尾川堅一、マッチルームとプロモーション契約を交わした、とのことです。
DAZN配信の興行で強烈なインパクトを残しての戴冠は、マッチルームにとっては、京口紘人に続く日本人ボクサー「獲得」を決断するに充分な理由となったのでしょう。


とりあえず次はシャフカッツ・ラキモフとの一戦が関門ですが、それを乗り越えたら、DAZN配信興行に出ている同級のホープのうち、誰かと闘うことになるのでしょう。
或いは英国人のWBAフェザー級王者リー・ウッドなども、そのうち候補に挙がるのかもしれません。ジョシュ・ウォーリントンも、クラウディオ・ララに雪辱なれば、クラスを上げてくるのかも。
そうこうするうちに、WBA王者ロジャー・グティエレス戦の可能性もあるかもしれません。または前王者レネ・アルバラードを当てられるとか。


ただし、シャクール・スティーブンソンを同級最強王者とみなし、評価下落の過程にある?オスカル・バルデスがそれに続く、130ポンド級シーンにおいて、やれ統一戦だビッグファイトだ、という話に、直接繋がる朗報なのかというと、微妙なところです。
現状の評価を踏まえた上で、契約期間中に組まれる試合を勝ち抜けたら、その先に「上」の話が出来るかどうか。
それが尾川堅一の現在地であり、彼の「挑戦」はこれから始まる、と見るべきなのでしょう。


国内のボクシングを取り巻く現状は、放送から配信への急激な「シフト」が象徴するように、ボクサーの商品価値、知名度に抜きん出たものがないと、従来のようにタイトル獲得という事実「だけ」ではビジネスが成立しない、厳しいものになっています。
130ポンドのタイトルをニューヨークのリングで獲得した、一昔前なら快挙、壮挙だった勝利を挙げた尾川とて例外たりえず、米国での活動がかなうなら、そちらにも軸足を置くのが、ベターな選択なのでしょうね。

ある意味、世界のスタンダードが、良くも悪くも日本のボクサーにも当てはまる時代になった、と言えるでしょう。
そして、世界的にも選手層の厚いゾーンである、スーパーフェザー級にて、まずはマッチルーム枠内の「リーグ戦」を勝ち抜けるかどうか、というところで、日本人ボクサーが闘うことになります。


それは本来、ファンとして喜ぶべきところなのでしょうが、正直、試合のときにも書いたように、ここまでの彼の闘いぶりには、感嘆させられることは当然あれど、それ以上に「如何なものか」と思うことも、多々ありました。
先の戴冠戦がまた、その要素をしっかり織り込んだものになってしまっていましたし。
せめて、今後の闘いにおいて、結果以前に、その内容が多少なりとも、納得感の強いものになってくれたらなあ、と思いますが...。




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と、配信や中継やと、あれこれ楽しみな土日を迎える寸前に、なんじゃそりゃ、なニュースが。
ジョンリエル・カシメロ、ポール・バトラー戦の前日計量に姿を見せず。体調不良か何かで、試合は中止。王座剥奪の可能性あり、とのこと。


最近、この手の話多いですが、まあ録画でしか見られない時代なら「ああ、残念なことに」で済みましたけど、何しろ生中継やらライブ配信やらで、こちらも身構えて待ってますから(笑)、ひとつひとつの話が重大だったりします。
これだけ試合の数があれば、そのうちのいくつかで、残念なことが起こっても仕方ないでしょうが、カシメロはねえ...結局あれこれ賑わした挙げ句に、派手な空振り一発くれて終わりかあ...という感じです。
何もこの人に限った話じゃないですが、やれる試合はやれるうちにやっとかんと、結局、誰も得をしないってことですね。





コメント (5)
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