ということでparaviの配信を見終えました。
インタビューの最中でブチッと切って終わったのは、所詮はTV局の片手間、としか言いようのないもので、いい気はしませんでしたね。
それはさておき試合ですが、ポイント的には接戦だったかと思います。
初回は石田匠が長いジャブで支配。クリアに石田。
しかし2回、石田は変わらずジャブがよく出るものの、田中恒成が徐々に出て、両者の間合いが縮まってもいる。
石田のジャブがロングでなく、ショートの距離になりはじめたように。田中ボディ、ワンツー、左右のヒットも。やや田中?迷う回。
3回、石田はワンツーも繰り出すが、田中距離を詰め、強い右のヒット。石田、鼻から出血。田中の回。
4回、石田のジャブが出ても、田中を食い止められないのがはっきり見える。田中の右がインサイドに。ボディ攻撃も。田中。
5回、両者、攻防の切り換え鋭く打ち合うが、田中がその都度打ち勝つ。田中。
6回、石田は目先を変えて、右フック。ダブルジャブからワンツー、アッパーも。田中の右ダイレクトもヒット。
ポイントは石田か。しかし田中、割と余裕はある?サイドに速いステップ、切り返しで外す動きも。
7回、田中の左ボディ打ちが再三ヒット。これだけ数が入ると「じわじわ効いてくる」かどうか以前に、ヒット数としてポイントになる。
ダブル、トリプルジャブで追って右も。クリアに田中の回。
8回、終盤に田中が詰められるか、しかし疲れも出てくるか、と思っていたところ、石田が苦しいながら盛り返す。
右アッパー、左フックがヒット。解説の田中亮明が「丁寧」と褒めたとおり、石田は頑張って、防御の質を落とさない。
しかし田中、ボディ打ちから連打で攻め込む。この回迷う。数では石田、有効「度」では田中。難しい。
9回、石田のワンツー、田中のガードを割ってヒット。田中は上下のコンビを繰り出すが、石田右フック。
終盤、田中が打ち合いを仕掛け、手数と攻勢は見えたが、石田の方が正確にヒットしている。石田。
10回、互いに勝負に出るかと思ったが、1分ほど見合う感じ。この辺は少し意外。田中、駄目押しが要るとは思っていない?
少し間合いが空いて、石田がジャブを繰り出す。石田は必死の形相、田中はいつも通りの感じで終わる。石田。
採点は2-1で割れ、いずれも僅差。96-94で割れ、ひとりは96-95で田中。
さうぽん採点は、石田田田田、石田田石石、96-94、田中ですが、迷う回がふたつあり、ドロー、或いは石田の勝ちもある、というところです。
外国人ランカー相手にデビューし、その後も早々から「世界路線」に乗った田中恒成ですが、同時にミニマム級からのスタートで、4戦目の原隆二戦を皮切りに、木村翔、田口良一、そして井岡一翔に石田匠と、4階級に渡って、日本のトップクラス同士の試合を闘ったことになります。
こういう形で、ファンの期待に応え続けている田中を、まずは称えたいと思います。
今回の再起戦とて、他に楽な道はいくらでもあったはずですが、4階級目で体格の利はなく、質的向上を問われるところで、115ポンド級としては最上限の長身とリーチを持ち、しかも日本王座5度防衛、かつては世界1位まで上った石田匠と闘うというのは、まずそれ自体が称賛に値する「挑戦」だと言えるでしょう。
その上で、ポイント上は接戦だった、どちらに転んでもおかしくなかった、という試合に見えたのは事実です。
石田のジャブによる「支配」は許さなかったものの、外しきっての「無効化」はもとより、攻撃面での完全攻略もまたならず。
そして、距離を詰めてボディ攻撃に成功して、試合の主導権を握りつつはあったが、懸命な反撃を許しもしました。
4階級目に転じた初戦で厳しい敗北を喫し、再起戦としては相当難しい相手と闘ったことを考えれば、評価を下げるような試合だったとは思いません。
むしろ、もっと苦しんでいたとて不思議のない試合だった、と思うくらいです。
課題としては、やはり攻撃力に、もうひとつ威力があれば、とは思うところです。体格的にはかなり「出来」てきたように見えますし、試合を重ねればその分、さらに良くなっていくでしょうが。
ただ、そういう普通の話とは別に、少し気にかかったのが、終盤、もちろん疲れもあったでしょうが、ちょっと「緩めた」?感じもあったように見えたところです。
本人は試合後、精神的に良い状態で闘えたという意味で、笑顔でリングに上がれた、というようなコメントをしたようですが、今後の試合で、この辺が良い方向に作用するのかどうかは、傍目には何とも言えない部分です。
とはいえ、傍目が思う以上に、手応えとしては石田匠を打ち込めていた、ということも含めての話だったとしたら、それは今後に、明るい展望ともなるのでしょうが。
敗れた石田匠、ジャブをあれだけ当てていたのに、という見方も出来るでしょうが、内容的には、数字が僅差であったとて、勝ちには僅かながら届かず、という印象が残りました。
初回を除けば、ジャブは出ていても距離が創出出来ず、突き放せない時間が長く、ボディ攻撃から連打される回数もかなり多かった。
加えて、どうしても一瞬、動きを止めたり身体を曲げたり、という場面もあり。
それもこれも含めて、採点競技のボクシングとしては接戦でも、やはり「闘い」であるボクシングにおいては...と言わざるを得なかった、と。
厳しいようですが、そう見ました。そういう意味では、公式採点は納得のいくものでした。
しかし、その技量がやはり、日本のトップクラスであることも、改めて知らしめた試合内容でもあった、と思います。
相変わらず、日本屈指のグッドジャバーであるところを存分に見せてくれました。浪速のブキャナン、とは言い過ぎでしょうか。
今回、52.5キロという、スーパーフライ級リミットを僅かに上回る契約体重での試合でしたが、それでも減量は相当厳しいはずで、その辺は心配でしたが、田中恒成とのビッグカードで、心身共に充実が見えました。
今後、どういう展望があるのかわかりませんが、階級の変更があったとしても、まだまだやれると見えたし、これからも応援したいボクサーです。
とまあ、細かいことをあれこれつべこと書いておいてナニですが、やっぱり良いカードって組むものですね、というのが、いつも通りの結論です。
10ラウンズ、あっという間の濃密な時間でした。
素晴らしい試合で、楽しい時を与えてくれた両選手に、感謝したいと思います。