さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

「完全試合」だとは思わないが 井上拓真、再起初戦で栗原慶太に勝利

2021-01-15 08:47:53 | 関東ボクシング



ということで、昨夜は後楽園ホールにて観戦してきました。
チケットだけは持っていて、でも下手したら無観客試合になるのでは、などと直前まで不安で、行き帰りの予定も立てられない状況でしたが、結果として20時前終了になり、新幹線の終電に乗って、日帰りすることが出来ました。
とりあえず、簡単にメインの感想。


井上拓真は、目に見えて速いわけではない、しかし安定したリズムの足捌きを継続し、栗原慶太のパンチの大半に空を切らせ続けました。
右から左を軽くリターンしつつ、ワンツーをインサイドに通し、時に鋭い右のダイレクトを際どく狙う。
もしまともに入っていたら、単発の攻撃ではありながら、相手に相当ダメージを与え、ことによれば物凄いノックアウトを生みそうなパンチ。
結果、そうはならず、かすめたり浅かったり、で終わりましたが。

栗原慶太は、相対的に井上拓真と向かい合うとかなり大柄に見え、早々に右クロス被せで脅かす。
拓真が左フックをリターンし、足で捌いていた初回終盤、バッティングが起こり、栗原の方が左瞼を切る。
これが悪いことに、幅がけっこうあり、その後の出血の様子を見ると、そこそこ深さもあったのか。
両者ともに、どっちが悪いとか、それこそ悪気があってとかいうものではないアクシデントに見え、せっかくの良いカードなのに、こういうことが起こってしまったか...と、残念に思いました。


この傷が試合展開に全く影響しなかった、とは思えません。
しかし、その後両者が見せた闘いは、かなりの部分まで「残念」の色を払拭するものがあったのも確かでした。


2回、拓真がワンツー通し、栗原も出るが、ロープを背負った拓真がそこから外して左フック。
3回、栗原がワンツーからボディ二発決めるも、その後は拓真のカウンターが冴える。
ちなみにこの回ドクターチェック入る。出血かなりのもの。しかし続行。
4回、拓真は(後から思えば)少し抑えた感じ。負傷絡みの裁定を踏まえたペースダウン、だったのか...。

5回、試合成立の回を迎えて、目に見えて拓真のギアが上がった印象。右ダイレクト、左フック。
栗原が一度、少し足取りを乱す。
しかし栗原踏ん張って右クロス。この日随一の好打だったか。拓真が再び捌いて当てる流れに。

6回、出血止まぬ栗原、この回は攻めに出ず、足使って手数減らす。
流れを変えて、引き寄せて打つ狙いか。或いは一度、打たれず、傷を開かずに3分終えたかったのか。
しかし拓真の速いパンチを当てられ、やはり出血。
7回もこの流れを引きずった感じ。
8回、両者、要所で左右のアッパーが目を引くが、それ以外ペースは変わらず拓真。

ここまで「いつ止めるんやろう、まさか最後までやらせるつもりか」と首を捻るばかりだった栗原の出血。
9回、やっと二度目のドクターチェック、試合終了。負傷判定は大差で拓真でした。




井上拓真の「対応」の巧さ、安定した足捌きは、従来の方向性を変えず、それを磨いていけばいい、と思っていたこちらにも、納得感のあるものでした。
ウーバーリ戦を経て、妙に攻撃的になったりしたら、今後却って不安やなあ、と思い、そこを見ていましたが、余計な心配でした。

しかし、その上で、やはりセーフティーな判断が試合の大半を占める攻防は、相手が栗原のような強敵でない限り、スリルに欠けるものになるのも事実で、どうしてもつきまとう兄との比較を抜きにしても、安定感にもうひとつ、プラスアルファが欲しい、とも思います。
時に見せる右ダイレクト狙いの精度を上げる、または単発好打のあと、手打ちでいいから速いパンチを連打する「上乗せ」を試みるなど、ベースを崩さない範囲で、出来ることはまだ、残っている。
そういう意味では、試合後の井上尚弥が発したという「パーフェクトゲーム」という言葉には、畏れ多いですが(笑)異を唱えておきたい、と思います。



栗原慶太は、不運な負傷にもめげず、文字通りの「奮戦」でした。
拓真の足捌きとカウンターに苦しみ、ミスブローも多発しましたが、少し打たれただけで、毎回のように左目周辺が真っ赤に染まる状況で、当然のこと、距離感の狂いもあったのでしょう。
それでも時に見せた強打、好打は、やはり日本バンタム級上位の中でも抜きん出た迫力を感じました。

そして、逆境にもめげない、彼の果敢な闘いあらばこそ、この試合は、日本バンタム級、事実上の頂上決戦、と言うに相応しいグレードを維持していました。
大一番に敗れて、簡単に言えることではないのは承知の上で、でも、この試合で終わってなど欲しくない、と願います。



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さて、メイン終了20時という「設定」で行われたこの興行、第一試合開始の時間が早められました。
しかしそれが、18時→17時45分という変更と知って、それで大丈夫なのか、と首を捻っておりました。
明日の帝拳興行、長濱、豊嶋戦は第一試合16時となっていて、まあ土曜日だから出来ることなのかもしれませんが、それと比べると...という。

結果、4回戦がひとつ中止になり、全4試合でしたが、メインが9回で打ち切られた時間は、19時55分頃だったか。
なんとも微妙なところで、もしフルラウンド闘っていたら、当然20時を過ぎていました。

アンダーも、セミの8回戦は判定だったものの、6回戦二つはKOで終わっており、それでこの時間。
しかも各試合後、TV向け?のインタビューも行われていて、メイン開始は19時15分を過ぎてました。
最初から、判定まで行ったら時間オーバーだったわけです。


この辺、興行者と管理運営者の、相反する意志の相克(そんなたいそうな)が見えたようが気がして、何ともかとも...というところでした。
興行者としては、最高値3万円という設定の高額チケットを買って(=引き受けて?)くれた観客の都合に、出来るだけ合わせたいのでしょう。
しかし、そこで起こった、時間ぎりぎりで負傷判定による打ち切り、というのも、これまた、見ていて何とも...もちろん、全て起こった事象の通りに裁定されただけ、と見るべきなんでしょうが。
負傷判定にするなら、もっと早くにしていて良かったでしょうし、そもそも負傷ドローになっていても仕方ない、とも見えました。
まあこれは、会場で見ていた印象に過ぎないですが。

ある意味、こういう騒動のさなかでないと見られないものを見て、改めて様々に思うところのあった興行でした。
アンダーの感想などは、また後日、簡単に、というところで、ひとまず。










※写真提供いただきましたのでご紹介。
「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。
いつもありがとうございます。



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ということで、一曲。
David Bowie “Tryin' To Get To Heaven” です。








コメント (10)
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