Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

コンスタンチン・リフシッツ J.S.バッハの宇宙~鍵盤音楽の旧約聖書Vol.1 in所沢

2015-02-07 22:59:30 | 音楽
         
昨日から1日でおよそ400年ほど一気に下り今日はJ.S.バッハの世界、『コンスタンチン・リフシッツ/J.S.バッハの宇宙~鍵盤音楽の旧約聖書Vol.1 in所沢』と題するコンサートを聴く。
曲目はずばり、J.S.バッハ:《平均律クラヴィア曲集》第1巻全曲 BWV846-869。
使用楽器はベヒシュタインのフル・コンサート・グランドピアノ。

すすっと舞台に登場したリフシッツは背が高くて、黒のシャツにパンツ、その上にチャコールグレイのカーディガンといういでたちで現れた。(実は以前彼のステージを聴いた友人によると、その時は「確か作務衣だった」そうだ。
なんというか、全体として24曲のプレリュード&フーガで一つの世界を構築しようという強い意志を感じるステージだった。
言い換えれば、彼は完全にこの曲集を自分の中で咀嚼し吟味し、そしてその結果としての音楽を舞台上で音として具現化して聴く側に見せているという感じがした。
慣れ親しんでいるはずの平均律クラヴィア曲集が、「え?!」と一瞬思うようなアーティキュレーション、ディナミークに彩られて全く新しい表情を見せるのだ。
例えば第1曲目のプレリュードの1小節目は強い音でノン・レガートで奏され続く2小節目は弱音でレガートで弾かれそれが繰り返されることでプレリュード全体に不思議な遠近感が立ち現れて吃驚させられる。同じ曲のフーガのテーマのリズムは前半と後半で短い音の長さの設定が前者は16分音符、後者は32分音符にと弾き分けられていた。(帰宅して思わず手持ちの2種類の楽譜を出して確かめたけれど・・・全部32分音符だった)
色々、へえ~♪と思わせられること満載で、非常な集中力で演奏を聴いていた。今まで聴いたことがない斬新な解釈によるバッハの世界に触れたというのが一番正直な感想だ。確信を持って弾いている彼に、この曲のその解釈は何故?あるいはもっと細かく、この曲のこの部分の演奏の根拠は?と質問したとしたら、すべての問いに速やかにしかも滔々と彼の明快な答えが返ってくるだろうな、と思わせられる。理由のない解釈はしていない、考え抜いた末にこう弾く、という強い筋が通った新しいバッハ像に触れた演奏会だった。前半の12曲より後半の12曲の方がより自由に音楽している感じがした。

これだけ弾いた上にアンコールは2曲、ブラームス:カプリッチョ(奇想曲)op.76-2、グリーグ:春(過ぎし春)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする