非国民通信

ノーモア・コイズミ

隣の国からは来ないようです

2010-08-12 22:57:14 | ニュース

欧州議会の極右議員団が訪日へ、靖国参拝も(読売新聞)

 欧州議会(仏ストラスブール)の極右政党議員団が、12~18日、訪日する。

 日本の右翼団体との交流が主目的だが、仏国民戦線のブルノ・ゴルニシュ副党首によると、ジャンマリ・ルペン国民戦線党首を含む代表団は、靖国神社への参拝などを予定しているという。

 代表団には、英国の国民党、オーストリアの自由党、スペインのファランヘ党など欧州連合(EU)9か国の出身議員が含まれる。

 こんな報道があるわけですが、各代表団はいったい何を思って来日するのでしょうね。そもそも左翼と違って右翼は国際的な交流が難しいところがあるはずです。左翼の理念は概ね国境を越えて共有できるもので、それだからこそ国際的な連帯が(破綻を繰り返しながらも)形成されてきたものですが、右翼の場合はどうでしょうか? そりゃ考え方は似たようなところがあるかも知れません。ただ移民排斥を訴えるにしても、ある国の右翼団体が排斥しようとしている移民とは別の国にとっては自国民であったりするわけです。あるいは自国の過去を美化するような歴史観にしても、これまた隣の国からすれば受け入れがたい、とりわけ右翼からすれば許し難い歴史観にもなるでしょう。その辺を「他国の事情」とスルーしたり尊重したりするような性分であれば、敢えて右翼である必然性もありませんし。

 報道によると「日本の右翼団体との交流が主目的」とのことで、具体的には一水会が主催しているようです(参考)。一水会の最高顧問を務める鈴木邦男氏は右派の割には道理の通じる人でガチガチの排外主義者というわけでもなく、左派からもそれなりに尊重されている一方で昨今の右派からは異端視されがちな人でもあります。単なる修正主義者、排外主義者の集まりというわけでもないのでしょう。ただ、排外のための集まりではないとしても、ここで集まったメンツからはいくつか問題が見えてくるような気もします。

 巨大な仮想的の存在が、平時なら対立するであろう組織をまとまらせることがあります。かつてなら共産主義がその役割を果たしており、反・共産主義 国 でさえあれば軍事独裁政権であっても民主主義陣営の一派として認められていた時代もあったわけです。そこで今回、日本に招かれたヨーロッパの極右政党が協調できているとしたら、それはおそらくイスラム系移民の存在が大きいのではないでしょうか。イスラムという共通の敵があるから、右翼団体同士で話が通じる、価値観を共有できていると言えます。しかし、非イスラム文化圏の右翼団体同士は連帯できても、イスラム文化圏の右翼団体とはどうでしょう?

 日本に集ったのは、フランスにイギリス、スペインなどいずれもヨーロッパの団体です。端的に言えば、歴史問題や移民問題で日本と直接の関わりがない国の右翼に限られているわけです。国際交流に意味がないとは言いませんけれど、ある意味では対立点がない、乗り越えなければならない壁のない相手との会合は、あまり実りを期待させてくれるものではないように思います。これがせめてアメリカ、願わくは韓国や中国の右翼団体や右翼政治家との交流であれば、趣は随分と変わってきたでしょう。原爆投下は正しかった云々と語り続けるアメリカの右派や、お互いにいがみ合う間柄である中韓の右派との交流が実現されれば、それは凄いことですけれど、ヨーロッパの極右政党とでは特にどうということもない、話しやすい相手を選んでいるように見えなくもありません。まぁ、あくまで民間団体のやっていることですからね。

 

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7 コメント

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日本右翼も海外に行け (自由人)
2010-08-13 00:46:57
何年前だったか、韓国の右翼議員と活動家が島根県を訪れて「独島は韓国領」と主張したことがありました。「敵ながら、その勇気はあっぱれ」と、当時どこかのブログで見た記憶があります。日本右翼も安全な所で叫んだり、在日などの弱い者いじめばかりしないで、韓国へ行って「竹島はわが領土」と主張すればいいのにと思います。もし殺されても、特攻隊などを賛美する彼らにとってはむしろ本望でしょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-08-13 01:13:24
>自由人さん

 確かに、日本の右翼が外国に遠征していったという話はあまり聞きませんね。せいぜいがアメリカの新聞に広告を出して笑いものになるくらい…… 文字通りの意味で体を張るような骨のある右翼は希少なようです。
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Unknown (Bill McCreary)
2010-08-13 03:25:29
いやあ、今回の記事も管理人さんの鋭い分析には頭が下がります。

私もこの欧州右翼の来日というのはとても興味深く思いました。日本の右翼もある程度世界に通用するためにはそれこそ韓国あたりの右翼とどれくらいつき合えるかが興味深いですが、たとえば桜井よしこその他の極右が李明博政権を反北朝鮮という軸で支持し、また失望したりしている現場があります。最近の韓国の状況ではどうかとおもいますが、とりあえず韓国の右翼とは反北朝鮮は軸になり得るかなと考えます。ただ、右翼というのはどうしても国家の軸がはずせませんから、仰るようにどうしても国際連帯は困難ですよね。またそれは私たちにとってもありがたいことです。
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Unknown (珍坊痔漏)
2010-08-13 10:34:04
>欧州議会の極右議員団が訪日へ、靖国参拝も

この方達はおそらくキリスト教徒だと思われますが、異教徒の施設である施設に参拝してもいいのかね?だいたい異教徒の崇める神は悪魔なんじゃないですか?
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TBありがとうございます (flagburner)
2010-08-13 19:52:24
件のイベントに参加した議員達と一水会に超えられない違いがあるとすれば、実践ないし信仰してる宗教なのでしょうが・・・。


>ある国の右翼団体が排斥しようとしている移民とは別の国にとっては自国民であったりするわけです。
右翼団体にしてみれば、移民としてある国(以下 H国)に移住した時点で元いた国(以下 R国)のことを「捨てた」と判断する余地があるので、「R国民でないのだから擁護しなくても当然」という態度をとる可能性はあります。
もっとも、実際に移民達が H国から R国に強制送還されれば、R国の右翼団体はここぞとばかりに移民たちを「国家の恥」と非難するかもしれませんが。


いずれにしろ謎だらけな訪問ですね・・・。

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Unknown (HANAKO)
2010-08-13 20:58:18
最近のヨーロッパの右翼は必ずしもキリスト教中心主義でもないし、日本とヨーロッパの右翼なら今の所そんなに利害対立もないので彼らとしても日本の右翼に顔を売れば将来なにがしかの得になるという考えがあるのかもしれません。自分達が白人中心ではないというパフォーマンス?
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-08-13 23:36:50
>Bill McCrearyさん

 反北朝鮮という軸ですと、反イスラムや反共産主義国に比べると、やはり弱いですかね。そして「国家」が軸になるのは一緒でも、その「国家」が指し示すものは国によって異なるだけに、国が異なる右翼は連帯が難しい、来日した右翼も何かの拍子に仲違いしそうな気もしますね。「来日中の極右政党議員団、靖国神社で乱闘騒ぎ」みたいなことになったりしないかな……

>珍坊痔漏さん

 ただ極右系の政治家や言論人も意外にキリスト教徒が多く、かつ靖国は宗教を越えた宗教、みたいな強弁が繰り返されてきましたから、その辺の理論武装は用意されているのかも知れません。ヨーロッパから来た人に通じるのかどうかは微妙ですが。

>flagburnerさん

 何を基準に「自国民」と見なすかは、良くも悪くも柔軟ですからね。他所の国に移民した元・自国民に冷淡だったりするケースもあれば、米国籍取得で日本国籍を失っていても日本人扱いしたり。あるいは残留孤児なんかにも、むしろ右派の方が厳しいところもあるでしょうか。この辺は何かとご都合主義ですよね。

>HANAKOさん

 たしかに、パフォーマンスとしては悪くないのかも知れませんね。異文化交流で他国への理解をアピールしてみせるとか。案外、ただの観光旅行気分なのかも知れませんけれど……
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