非国民通信

ノーモア・コイズミ

本家ジョージアには既にある法律

2024-06-02 21:13:59 | 政治・国際

米ジョージア州、中国など特定の外国人・事業体による農地などの所有を禁止(JETRO)

 米国ジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)は4月30日、中国など特定の外国人や事業体による特定の土地の所有権の取得を禁止するために、同州公示法典(OCGA)を改正する法案(SB 420)に署名した。同法案は7月1日から施行される。

 

 かつてユーゴスラヴィアから分裂したマケドニア共和国は、古代マケドニア王国を版図に持つギリシャからのクレームで「北マケドニア」への改名を余儀なくされました。では州じゃない方のジョージアはどうなのでしょうか。こちらも本家ジョージアからクレームが入っても良さそうな気がしますけれど、今のところは問題になっていないようです。州じゃない方のジョージアのニュースを機械翻訳にかけると結構な割合で「ジョージア州」と表示されるなど、文脈を理解できない場面では混乱を招いているところもありそうですが……

 

Gov. Kemp signs dozens of bills into law, vetoes others. See the list(GPB NEWA)

SB 368 would have banned foreign nationals from donating in campaigns. Kemp vetoed it because it is already law. 
(訳:上院法案368は外国人による選挙運動への寄付を禁止するものだった。ケンプ知事は、既存の法律にあるため拒否権を行使した。)

 

 本家ジョージアでは特定国の市民または事業者による土地取得を制限する法案が可決されたわけですが、同時期には知事によって拒否権を発動されたものもあります。その一つがこちらの法案で「外国人による選挙運動への寄付を禁止するもの」でした。否決理由は「既存の法律にあるため」とのこと、既存の法律によって対処可能な問題であるにも関わらず、居丈高に新法による取り締まりの強化が必要だと訴える政治家は、我が国でも見られるところですね。

 なおアメリカの連邦法の一つである「外国代理人登録法」によると、「政治的または準政治的権能を持つ」 外国勢力の利益を代表するエージェントが、その外国政府との関係および活動内容や財政内容に関する情報を開示することを義務付けており、国家安全保障局のスパイ対策室によって管理されているそうです。運用としては主にロシアや中国政府系列のメディアの活動を制限するために活用されているのだとか。

 

ジョージアで「ロシア法」成立へ 反体制派の弾圧懸念 欧米は反発(毎日新聞)

 ロシアの隣国ジョージア(グルジア)で28日、外国からの資金提供を受けた組織を事実上「スパイ」扱いして規制する法案が議会で再可決された。法案を巡っては大統領が拒否権を行使していたが、議会がこれを覆し、法案が成立する見通しとなった。ジョージアが加盟を目指す欧州連合(EU)や米国は反発している。

 与党「ジョージアの夢」が議会に提出し、すでに法案成立に必要な計3回の採決を終えていた。EU加盟への影響を懸念するズラビシビリ大統領は拒否権を行使したが、28日夜の再投票で多数派を握る与党が覆した。その結果、英BBCによると、60日以内に施行できる状態になったという。

 法案は、資金の20%超を外国からの援助で賄うメディアやNGOなどに「外国勢力の利益を追求する組織」として登録するよう義務づけ、規制を強める内容。ロシアが2012年に同様の法律を導入して反体制派の弾圧に用いたことから「ロシア法」とも呼ばれる。

 ジョージアでは市民が1カ月以上、首都トビリシなどで抗議活動をしており、欧米各国も強権的な内容に懸念を示していた。EUのフォンデアライエン欧州委員長は再可決を受け、法案は「EUの基本原則と価値観に反しており、ジョージアのEU加盟への道のりにも悪影響を及ぼす。我々はあらゆる選択肢を検討している」との声明を出した。【ブリュッセル岡大介】

 

 国内主要メディアによる偏向報道の努力の跡が窺えますが、外国からの資金提供を受ける団体への規制法は90年近く前からアメリカで施行されており、その他の国でも決して珍しいものではありません。むしろロシアや州じゃない方のジョージアが後発であることの方こそ伝えられるべきでしょう。この法律を「ロシアの法律」などと呼んでいるのは自国やアメリカの法律を知らないか、もしくは自らが外国のエージェントとして州じゃない方のジョージアの政府を乗っ取ろうとしている人だけです。

 ちなみに上記法案に拒否権を行使したズラビシビリ大統領はフランスの出身で、長らくフランス外務省に勤務していました。そして2004年に州じゃない方のジョージア国籍を取得して同国の外相を兼任することになります。なお外相就任中もフランス外務省を退職しておらず、フランスからの給与支給を受け続けていたことが伝えられており、アメリカの法律に倣えば典型的な「外国のエージェント」だったわけです。ただ、その当時の州じゃない方のジョージアには、これを規制する法律がありませんでした……

 外国籍を持った政治家、というのはどうなのでしょうか。ある程度の期間、政治活動の基盤が同国にあればヨソの国にルーツがあっても許容されるべきではという気もしますが、流石に他国の政府機関に在職中の人間を閣僚に任命するのはイキスギのような印象がないでもありません。ただ、外国のエージェントであっても「送り込む側」からすれば評価は180°異なる、それが今回の州じゃない方のジョージアにおける騒動に繋がっていると言えます。

 これがもし、フランスやアメリカではなくNATO傘下に属さない独立した国──つまりロシアや中国、イランなど──にルーツを持った政治家であったならば、西側陣営での報道はどうなったでしょう。アメリカのエージェントであれば問題視されず、一方で中国に繋がりがあると見なされれば理不尽な批判を受け規制が必要と説かれる、そんな光景は容易に想像できます。まぁ国籍を巡る問題に関わらず、政治家としての資質が疑われる人は排除されてしかるべきですが。

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