非国民通信

ノーモア・コイズミ

男と女の深い溝

2023-09-17 22:04:23 | 社会

 先般は内閣改造で起用された5人の女性閣僚について「女性ならではの感性」云々と岸田首相が語ったそうで、なんとも時代錯誤の発言であると概ね批判的に捉えられています。こういう場面では男女の別をナンセンスなものと扱うのが政治的に正しい判断と思われますが、長らく男性が多数派を構成してきた世界で人為的に男女比を正そうとすると、得てして不自然な持ち上げ方も出てくるものなのでしょう。

 体格や筋力、生殖能力と言った肉体的なものはさておき、知性や精神面では男女は同等なものとする理解が望まれるところ、しかるに「男と女の考え方の違い」みたいなものを大仰に語る人は後を絶ちません。実際のところ我々の社会において男と女の隔たりは消えてなくならないわけで、内閣支持率なんかでも男女で結構な差が出たりもしています。男女の違いが受け入れられてしまうのか克服されるのか、未来は分かりません。

 浮気や不倫などの際に見せる反応も、男と女では違うとよく言われます。女性が浮気した場合、男性の怒りは不倫した女性の側に向かう、逆に男性が浮気した場合、女性の怒りは不倫相手の女性の方に向かう、なんてのは通説ですね。フィクションなんかでも当てはまるところは多く、例えば「カルメン」であれば別の男に走ったカルメン(女)をドン・ホセ(男)が最後は刺し殺すわけですが、反対に「ムツェンスク郡のマクベス夫人」であれば、主人公のカテリーナ(女)は愛人のセルゲイ(男)ではなく、セルゲイの浮気相手であるソネートカ(女)の方を殺します。

 

苦境に立つジャニーズ、悲しむファンの声「こんなのイジメ」「応援し続けるしかない」(ENCOUNT)

ジャニーズ事務所がジャニー喜多川元社長による性加害を認め、大手企業が続々と同事務所との広告契約見直しを発表している。事務所は13日、被害者救済委員会の設置、今後1年間は広告出演並びに番組出演などの出演料は全てタレント本人に支払うことなどを発表したが、強い逆風は止まらない。そして、多くのファンが「このまま推しがテレビに出られなくなるのでは」と心配している。やれることは推し(のタレント、グループ)がリリースした楽曲のCD購入、再生回数を上げること、広告見直しを発表した企業の商品を買わないことなどだという。彼女たちの思いを聞いた。

 

 このジャニーズの問題、1988年に出版された暴露本は35万本売れたそうで、それ以外にも普通に裁判でジャニー氏の性加害は認められているなど、知る気のある人には昔から知られた話でした。安倍(岸)家や自民党と統一教会の蜜月関係も然りで昔から長らく警鐘が鳴らされてきたことだったのですが、しかし世間が注目したのは山上容疑者が銃弾を放った後のことでした。既知のことでも世間が注目するとは限らない、世間の関心に火を付けるためには、いったい何が必要なのだろうと私は常々思います。

 それはさておきジャニーズ新社長である東山氏を始め、「ジャニー」の名を残したがっている人も少なくありません。上記の引用ではそんな「彼女たち」の声が紹介されているのですけれど、いかがなものでしょうか。今回は「権力者の男」が「少年」を性的に搾取していたパターンですが、登場人物の性別が異なれば世間の反応も異なったであろう気はします。「弱い男」が「少女」へ性的な危害を加えれば、それはもう誰一人として擁護なんてしないですから。

 女性アイドルと男性ファンの場合であれば、ファンはアイドルの交友関係に一種の欲望を抱きがちです。つまり女性アイドルに男性と「付き合わない」ことを期待する傾向が見られ、男性との関係は女性アイドルの価値を毀損するものとして扱われます。では男性アイドルに対する女性ファンの願望は、果たしてどういうものであったのか興味深いところです。自分の好きなアイドルが事務所の社長と性的な関係にあるというのはネガティブなイメージをもたらすのかどうか──取り敢えずジャニーズファンには、あまり気にならないのかも知れません。

 あるいは男性ファンは応援する対象を簡単に乗り換える、女性ファンは長く応援を続ける、なんてことも言われます(本当かどうかはさておくとして)。女性アイドルが自分の期待を裏切れば(つまり余所の男と付き合っていると知れば)男性ファンは別の女性アイドルに乗り換える、一方で男性アイドルが社長にレイプされていたとしても女性は気にせずファンを続ける、そんな図式も当てはまるところはありそうです。

 ただまぁ、「ジャニー」の名前を残そうとする感覚だけは流石に理解できません。ジャニーズ事務所に所属するタレントのファンであったならば、自分が応援しているアイドルを「汚した」ジャニー氏の名前は忌まわしく思えこそすれ、看板として掲げる気になどならないのが普通でしょう。それでも「ジャニーズ」の名前は残して欲しいと訴えるファンもまた後を絶たないのですから、なんとも埋めがたい溝を感じるばかりです。

 もっとも男女で共通しているものとして権力の側に自らを同一視し、「世の中をよくすることを許さない」感覚もあるような気がします。社会の問題を指摘する声に対して自己責任を振りかざして口を塞ごうとする人は多数派を構成していますし、運動部なんかでも下級生へのしごきの伝統を引き継ぎたがる子は多いわけです。事務所所属のタレントという「下から」の声で組織を壊されるなど我慢できない、経営者目線で組織を擁護するのが当たり前になっている、ここは男女で共通するところでしょう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自由律俳句9 | トップ | 日本の未来を憂う »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

社会」カテゴリの最新記事