非国民通信

ノーモア・コイズミ

本当に孤立しようとしているのは

2024-03-31 22:15:30 | 雇用・経済

林官房長官がロシアを非難 国連北朝鮮パネル延長めぐる拒否権行使(朝日新聞)

 林芳正官房長官は29日の記者会見で、国連安全保障理事会で北朝鮮に対する経済制裁の履行状況を監視する「専門家パネル」の任期延長が否決されたことについて、「遺憾だ」と語った。拒否権を行使したロシアを「理事国の重責に反する」と非難した。

 パネルの任期は4月30日までで、延長には決議の採択の必要があった。常任理事国で北朝鮮との関係を深めるロシアが28日の安保理会合で拒否権を行使し、パネルの活動停止が決まった。

 林氏は専門家パネルについて、「関連安保理決議の実効性を向上させるための重要な役割を果たしてきた」と評価。ロシアの対応を「国連および多国間主義の軽視であり、グローバルな核不拡散体制を維持するという安保理理事国としての重責に反する行為で残念だ」と強く非難した。制裁の完全履行に向けて、「米国、韓国をはじめとする同志国とこれまで以上に緊密に連携しながら、更なる対応を検討していく」と語った。

 

 イスラエルを巡ってはアメリカも国連で拒否権を行使したばかりですが、それを日本政府が非難したという話は聞きません。林官房長官曰く「理事国の重責」とやらが存在するらしいですけれど、これは果たして全ての理事国に等しく課されるものなのでしょうか。ある国が拒否権を行使したときは沈黙を守り、別の国が拒否権を行使したときは政府の代表が公然と相手国を非難する、両者の違いをまずは説明する必要があるように思います。

 アメリカによる拒否権の行使については黙認する一方で、アメリカの傘下にない国による拒否権の行使を認めないのであれば、それこそ国連の存在意義を否定するものです。異なる立場の国々が話し合うからこそ国際的な枠組みには意味があるのであって、アメリカという特定の国の見解だけを優先するのであれば、わざわざ国の代表が集う必要などありません。アメリカの意向に付き従うだけならば、国連ではなくワシントンから指令を受け取れば済む話でしょう。

 ともあれ結果として日本は「米国、韓国をはじめとする同志国とこれまで以上に緊密に連携」と、今まで以上に身内での排他的な結束を高めていく方針を表明しています。日本からすればアメリカとその衛星国こそが「国際社会」であって、「同志国」の間で連携できてさえいれば国際協調ということになるのかも知れません。しかし現実には日本の思い描く「国際社会」は少数派に過ぎず、とりわけアジア地域においては顕著である、かつての経済や軍事面での先進的地位も失われつつある中、本物の国際社会から日米欧が孤立していると言った方が現実に近いところすらあるはずです。

 フィンランドとスウェーデンが正式にNATO入りし、これをロシアの戦略が裏目に出た結果だと囃し立てる論者は少なくありません。しかし元からアメリカの衛星国に過ぎなかった国が中立の建前を捨てただけとも言えますし、逆に非NATO諸国の関係はどうなったかも考えてみる必要があるように思います。今回の引用に現れているようなロシアと北朝鮮の関係強化などを見るに、むしろ非NATO諸国の連携が強まっている、日米欧の一層の地盤沈下を招いているところはないでしょうか。

 アメリカを再び偉大な国とすべく、バイデン政権は自国に従属しない国々との対決姿勢を強めてきました。結果として日米欧の排他的結束は大いに強まりましたけれど、それ以上にアメリカに傘下に入らない国々の関係を深める結果を招いているとも考えられます。元来ロシアからすればNATO諸国もビジネスパートナーであり、その意向には気を遣わねばならないものでした。しかし日米欧からの一方的な非難を前に「吹っ切れた」ところがあるわけで、これまでアメリカとその衛星国との関係に配慮して控えてきた国々──イランや北朝鮮など──との協力関係を深めているのが現状です。

 中国からしても、ロシアとは互いに牽制し合う相手であって、必ずしも友好的な関係ばかりではありませんでした。むしろ空母の調達などソ連時代の兵器技術の入手ルートであるウクライナの方が関係性は深かったとすら言えます。しかし同様にアメリカからの一方的な非難や不当な制裁を科され続ける中で、生存戦略としてロシアとある程度までは協力せざるを得ないところまで中国が追い詰められているのが実態ではないでしょうか。

 つまり世界をアメリカの敵と味方へ明確に線引きしてきたバイデン外交が、アメリカに従わない国々の結束を深める結果を招いている、実態として非ドルでの決済も急速に広まりつつあり、「アメリカ(及び衛星国)なしの」独立した国々の連合が浮かび上がりつつあるわけです。そして現在のところ日本の外交はバイデン政権へ全面的に乗っかっている状況ですが、支離滅裂なトランプが大統領の座を取り戻せば、恐らく日本は「はしごを外される」結果になることでしょう。そうなったときアメリカの尖兵として振る舞ってきた日本は周辺のアジア諸国とどう向き合うのか、必然的に問われることになります。

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