非国民通信

ノーモア・コイズミ

政府目標では足りない

2017-07-30 20:53:07 | 雇用・経済

最低賃金3%上げ、政権目標達成 中小企業に重荷も(朝日新聞)

 2017年度の最低賃金(時給)の引き上げ額の目安は、2年連続で安倍政権の目標通りの「3%」となった。政府目標をにらみながらの議論のなか、経営者側は「経営の厳しい中小企業の負担になる」と反発したが、賃上げによる景気の底上げを狙う政権の方針に沿う結論となった。

 

 さて朝日新聞は「中小企業に重荷!」などと見出しに掲げているわけですが、どうしたものでしょうね。最低賃金の3%引き上げは政権の目標通りと言うことですが、元々が非常に低いのが日本の最低賃金です。そこから僅かに3%程度を引き上げたところで、日本で働く人の生活が豊かになるとは全く考えられません。政権批判に結びつけたいのなら「3%程度の引き上げではアリバイ作りにしかならない、より大幅な引き上げが求められる」と説くべきではないでしょうか。

 まぁ朝日新聞は反政府系メディアであると同時にブルジョワ新聞でもあります。連合辺りと同じように、どうしても労働者の立場よりも経営者の立場を優先して物事を考えてしまうものなのかも知れません。影響を受けるであろう、最低賃金ラインで働く人の声ではなく、あくまで雇う側、経営する側の声を真っ先に伝える辺りにメディアの立ち位置が如実に表れている、とも言えそうです。

 それはさておき賃金水準を引き上げると失業が増えると、そんな夢物語を口にする人も日本では多いわけです。一部の人の根拠なき願望に過ぎない代物など相手にする必要はありませんが、そもそも日本では氷河期と言われた時代ですら失業率は至って低いものでした。その代わり、過労死する人がいたり、フルタイムで就業しているのに収入は生活保護水準以下のワーキングプアと呼ばれる人々が存在していたりします。

 普通の国では、職がないから貧しいのです。しかし日本では「職があるのに貧しい」という不思議な現象が当たり前のように見られるわけです。確かに世界経済の孤児たる日本は何事も特別なの知れませんが、それが好ましい影響を生み出しているようには全く思えません。果たして「選ばなければ仕事はあるが、働いても豊かになれない」国に明るい未来は望めるのでしょうか。とりあえず、多少は失業率が高くとも働けば豊かになれる国の方が、実績はあるように見えます。

 そもそも規制が緩く、組合も弱ければ訴訟リスクも低い日本の場合、リストラや非正規への置き換え、サビ残や労働条件の不利益変更がきわめて容易に行われて来ました。生産性を向上させたりイノベーションを生み出したり、そういうことが「出来ない」企業でも、人件費を削減することで生き延びることが可能であったのが日本社会であり、それを推進することが改革と呼ばれてきたわけです。結果として――日本で働く人は貧しくなり、日本の国内市場の購買力は低下し、日本国内でモノが売れなくなる――その中で企業が生き延びるために人件費を抑制するサイクルが続いてきたと言えます。

 たかだか3%程度の最低賃金の引き上げにすら対応できない企業が日本社会にできる唯一の貢献は、速やかに市場から退場することです。働く人の賃金を押さえ込むことでしか延命できない企業など、日本社会の寄生虫でしかないのですから。そして「経営者側」も朝日新聞も寄生虫の生命を憂慮しているようですけれど、心配される側は寄生虫にむしばまれている側のはずです。


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