非国民通信

ノーモア・コイズミ

ローカルルールの達人

2013-11-23 11:15:40 | 社会

 世の中には「かけ算の順序」問題ってのがあるわけです。何でも出題者の意図した通りの順番に数値を並べていかないと、答えが合っていても×を付けられてしまうのだとか。例えば「6人に7個ずつEM団子を配るときの生ゴミEM団子の総数」を問われたとしましょう。6×7でも7×6でもどっちも答えは同じですが、出題者の意図次第で片方が正解、もう片方が間違いとされるのだそうです。6×7≠7×6になってしまったら算数の世界なんて根底から崩壊してしまう気がしますが、それでも「かけ算には正しい順序がある、順序が変わったら意味が変わってしまう」云々と奇妙な信念を持つ人が、あろう事か教育関係者にも多いようです。

 ……まぁ、結果は同じだろうなんて合理主義は日本では通用しにくいのかも知れません。どのような経路であれ結果を出すことが大事と考えるよりも、プロセスをこそ問いたがる人の方が多いのでしょう。経済政策にしても然り、要するに景気が回復すれば良いのだと考える人はむしろ少数派で、自身が「正しい」と信じる方法を貫くこと――例えば雇用側にのみ徹底して便宜を図り、労働者側から雇用側への所得移転を進めるなど――を優先してきたのが我が国の政治であったわけです。景気が回復さえすれば痛みを伴わない金融政策でもOKとか、そう考える経済系の論者や政治家は至って少数派でしたから。

 あるいは、合理性からは絶対に導けないローカルルールを鵜呑みにできる人材を育成する、という観点では学校教育と「社会」との間で整合性はとれているとも言えます。会社に入れば、それこそ鼻で笑いたくなるような馬鹿げた社内ルールが盛りだくさんです。ところが、いかに下らない社内ルールであろうとも上から教えられたものを信じ切って遵守する、そんな人材が求められているとすれば「かけ算の順序に拘る教育」は社会のニーズに合致しているのではないでしょうか。研修と称して新人に穴を掘らせたり自衛隊に体験入隊させたり、そんな馬鹿げた世界に疑問を持たない人材を養成するためには、かけ算の順序に違いがあると教え込むことにも意味が産まれてしまうのかも知れません。

 例えば50円の商品を2個販売した場合の消費税額って、いくらだと思いますか? 販売者が納税する金額はさておき、顧客に消費税分として提示する金額は、果たしていくらが正解でしょう? 5円、というのは必ずしも正しくありません。会社によっては「社会人の常識に欠ける」と罵倒されてしまうところです。あなたの勤務先では、いくらですか? 正解は、経理の人もしくは事務でも売掛金の管理ぐらいは担当している人を捕まえて聞いてみてください。

 

 ・・・・・

 

 消費税率5%で単価50円の場合、計算上の消費税額は2円50銭です。しかし50銭は取り扱いできませんから、消費税端数をどうするか「会社によって扱いが分かれます」。端数切り捨てで消費税を2円とする会社もあれば、端数を四捨五入もしくは切り上げで3円とする会社もある、そして単価50円の商品を2個売った場合もまた会社によって違いが出るのです。すなわち「合計金額(この場合は100円)を基準として消費税額を顧客に提示する会社」もあれば、「単価毎に算出した消費税を合算して顧客に提示する会社」もあるわけです。単価50円、消費税額2円(もしくは3円)の商品を2個販売した場合の合計は、本体価格100円に対して消費税額4円(もしくは6円)になったりする、なんだか変な話に見える人もいるかも知れませんが、会社によってはそういう計算が「正しい」のです。

 実際、税抜き合計金額が100円で、消費税込みの金額として105円、集金してきた営業さんがいました。ところがその会社の計算方法では税込で104円が正しい請求額だったのです。1円、客から余分に金を受け取ってしまった、これは会社の管理上まずいとのことで「1円を返金してこい」みたいな話になったことがあります。とりあえず営業さんに会社の計算方法を私が説明したわけですが、流石に首を傾げて「そういう考え方って一般的なんですかねぇ?」と。そこで私は「○○さんの考え方で特に間違ってはいないですよ。100円で消費税が4円になるのは単純に社内ルールの話ですから」と回答しました。これを聞き咎めた上司に呼び出しを食らって私は説教されることになったのですが、間違ったことを言ったとは思っていません。

 「社内ルールの達人」が幅を利かせている職場も多いのではないでしょうか。その社内でしか通用しない独自のルールを守らせようと、社内ルールの達人が同僚を毎日のように咎め立てしている、こんな姿を見ると私などは大いに萎えてしまうところですけれど、社内ルールの「正しさ」に微塵も疑いを持たない人も多くて、「達人」があれこれと口出しをするばかりか、周りの人も「達人」に「社内的に正しい処理手順」かどうか伺いを立てるようになっていくわけです。まぁ社内でルールを統一する必要はあるのでしょうけれど、それは会社の外では通用しない「非常識」であることも理解して欲しいな、と。でも特定の組織でしか通用しないローカルルールを「正しいもの」として押し通す自分に何の疑問も持てない人がいて、それが偉い人になって権力を持っていくことも普通にあるんですよね。

 

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