非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本式「小さな政府」

2008-04-25 23:34:29 | ニュース

衆院定数200、参院は50に…自民が改革ビジョン(朝日新聞)

 自民党国家戦略本部の国家ビジョン策定委員会は24日、国家公務員を30万人から10万人に減らし、衆院定数を200(現行480)、参院定数を50(同242)に削減することを柱とする政治体制改革案を発表した。10~15年後を見据えたもので、公務員削減は道州制への移行を前提とする。

 政党への公的助成を現行の国民1人あたり250円から1千円に増やす案も盛り込んだほか、消費税は基幹的な地方税として移譲し、本格的な地方分権を促している。

 参院が50人でごぜぇますか。各府県から一人ずつ、北海道は南北海道・北北海道の2議席、東京も東東京・西東京の2議席、これに21世紀枠を加えて50議席ってとこでしょうかね。ともあれ日本は民尊官卑の国ですから、「官」を減らすとなれば何となくそれが好ましいことであるかのように思われがちです。そんなわけでこの方向性自体の是非は問われずに、むしろ実現性を巡って意見の交わされるところもあるのですが、いやいや方向性の方がまずダメでしょう。

 例えば人口100万人あたりの議席数で見れば、日本はOECD加盟の30国中29位です。かろうじて最下位を免れましたが(最下位はアメリカですが、衆院200参院50まで減らしたら先進国中ワースト1ですよ!)、元より議員の少なさで際だっていたわけで、ただでさえ小さな政府なのに議員をこれ以上減らしてどうしようというのか意図が見えません。そりゃ日本の有権者の中には日本の議員、公務員の数は多すぎると根拠なく信じている人も多いわけですが、それに阿るのもどうでしょう? 「国民の目線に立つ」=「国民の誤解に調子を合わせる」ではないと思うのですが。

 それでも尚、ただでさえ少なすぎる議員の数、公務員の数を減らす企てがあり、それを「かけ声だけだろう」と批判する意見はあれど、その方向性に疑問を投げかける声は極端に少ないのが実情です。理由の一つは、ジャップは不都合な真実に目を瞑る癖があるだけに議員と公務員が多すぎると頑なに信じていること。もう一つは二元論的な考え方が好きだから、世の中を悪者と正義の味方に二分してしまう、「官」と「民」の間に線を引いて、それで「官」が悪役、とにかく悪い奴を放逐することが善いことなのだと、そう信じているからでしょうかね。「官」は少なければ少ないほどいいと思われているわけです。

 まぁ日本以外の国でも「小さな政府」を志向しているところもあって、それを実践しているのは日本だけではないわけですが、でも日本式「小さな政府」ってなんか違うぞ?と。他所の国で「小さな政府」を主張している人の場合、基本的に国家への不信があって、自分のことは自分で面倒を見る、国家は俺たちの縄張に踏み込むな!という信条が根底にあるケースが多いと思います。そこでは個人の領域に踏み込まないのが善き「小さな政府」です。でも日本式「小さな政府」の場合、むしろ個人の領域に積極的に干渉したがる傾向が強いのではないでしょうか? そして「小さな政府」の支持者もまた、国家からの独立よりも国家への帰依を望む姿勢が強く、欧米型のそれとは正反対の傾向を示しています。

 欧米型の「小さな政府」主義を単純化して突き詰めると、要は自分の身は自分で守ると自分で銃を持ち、自分の食い扶持は自分で稼ぐと自営業中心、自分の信じたいものを信じると地元の教会へ通う、そんなところでしょうか。そこには「政府からの自由」があります。しかし日本はどうでしょうか? 治安維持を名目に政府による国民の監視は度を強め、小規模経営者は大きな組織に呑み込まれ、国家の提唱する愛国心や公共心、道徳心を刷り込まれるわけです。確かに「小さな政府」らしく、公共サービスの切り下げは止まるところなく進められています。しかし「政府からの自由」は?

 ちなみに政党助成金の財源でしょうか、これが国民一人あたり250円から1000円に引き上げる案も提出されたとか。議員は減らすのに助成金は増えるの? 自民党の世襲議員はみんな財界とも繋がりの深い大資産家ですから、議員報酬に左右されるところは大きくないと思うのですが(これが引き下げられると、野党の貧乏議員が死にます)、何に使うつもりですかね? 政党のカネとして宣伝工作に使うのでしょうか。

 

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10 コメント

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Unknown (Bill)
2008-04-26 01:15:38
>衆院定数を200(現行480)、参院定数を50(同242)に削減することを柱とする政治体制改革案を発表した。

いやあ、すばらしい意見ですね。ここまで頭の悪い主張というのも私はしばらくぶりに読みました。さすがに今の日本でも、こんなクズな政策が実現するとも思いませんが、しかし支持してしまう馬鹿な国民もいるんでしょうね。

>治安維持を名目に政府による国民の監視は度を強め、小規模経営者は大きな組織に呑み込まれ、国家の提唱する愛国心や公共心、道徳心を刷り込まれるわけです。

いや、まことにごもっとも。さすがの鋭いご意見です。小さな政府を支持しているらしい産経新聞とか読売新聞は、なぜか(笑)日の丸・君が代強制やビラ投函逮捕有罪、死刑制度(究極の国家の国民への介入!)がお好きなようで。まあ、クズにも程がある連中というところでしょうか。

でも、日本人って、究極のところ、「政府」のことを信頼しているのかもしれませんね。幸せな人たちです。
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Unknown (Bill McCreary)
2008-04-26 01:16:18
すいません、先ほどのコメントは、Bill McCrearyです。
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Unknown (シカゴ)
2008-04-26 13:35:53
こんにちは。

民主主義の理想は直接民主制だと思いますがそれは現実的にはほとんど不可能なので事前の策として代議制が採用されていると私は理解しています。現在の精度でさえ理想にはほど遠いのにさらに改悪するというのが自民党の考えですか……。あきれますね。悪あがきもほどほどにして欲しい。

この案、公明党は賛成するでしょうかね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-04-26 22:59:43
>Bill McCrearyさん

 とにかく減らせばいい、そんな発想が浸透していますから、ただでさえ少ないものをより減らそうとするのでしょうかね。多ければいいと言うものでもありませんが、現状が多すぎるのか、それとも少なすぎるのかを考えることから始める必要があるはずですが、どうも安易に結論だけが下されているようです。「小さな政府」にしても何のための小さな政府なのかが抜け落ちて、ただ公共部門を弱めているだけで、その反対の動きへの視線が欠如しているとも感じます。

>シカゴさん

 まぁ自民党議員限定なら削減もアリですが、現状では国民にとって必要なものを訴える議員の数が足りない、マイノリティの代表など皆無ですから、これを大幅に削減しようなどとはとんでもないことです。ちなみに公明党ですが、いつものパターンですと反対はするものの連立政権の維持を優先して最終的には自民党案に同調、支持層も上層部の決定を受け容れる、そんな結果が予想されます……
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過去の栄光 (みどり)
2008-04-27 01:51:26
日本の「官」には日本の高度成長という過去の栄光があるので、何かそれって「官」を中心とした国家への帰属と思えます。
1億2000万人の国家で、もし議員数が250人になって、国民の意見が反映されるのか心配です。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-04-27 22:50:35
>みどりさん

 1億2000万人の国家で議員数が250人ならOECD諸国で最も議員の少ない国になりますからね。約50万人に一人の議員でどれだけカバーできるのか疑わしいですが、政治家不要論も根強いお国柄ですし。
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Unknown (kama)
2008-04-28 16:38:07
この委員会主査を務める奥野信亮議員のお父さんである奥野誠亮元議員の経歴がスゴイんですよね
親=息子とは思わないけど、衆院比例区全廃とか言ってるとこ見ると今回の提言も共産党議席壊滅と改憲に一番主眼があるような
http://www.47news.jp/CN/200804/CN2008042301000873.html
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-04-28 23:10:29
>kamaさん

 衆院を小選挙区にして与党で固め、参院は全国区にするが衆院の優越を強化、実質的に衆院だけで決める仕組みでしょうかね。想定されている「国の役割」も軍事や財界との関わりなど政府が肥え太るための部分は残し、公共サービスを放り投げている辺り、何とも露骨と言うか……
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Unknown (うずら)
2008-04-29 23:35:55
小さな政府にしてしまうことは、官の規制がなくなる(規制緩和)ことを意味しますね
規制がない民営化では、市場原理(競争)の中に埋没してしまうだけです
要するに、規制のない弱肉強食になってしまうわけですね
新自由主義者の論理では、国そのものが崩壊しかねないです
後期高齢者医療制度の導入で、健康保険制度そのものが意図的に崩壊させているような気がします
健康保険制度がなくなったら、どうなるんでしょうか!?
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-04-29 23:47:12
>うずらさん

 小さな政府・新自由主義のアメリカでは公的保険の不在が深刻な問題を引き起こし、乳児死亡率は中国やキューバの後塵を拝する有様です。さすがにマズイと感じているのかオバマもクリントンも国民保険の導入を訴えているわけですが、日本はその正反対の方向を向いていますね。何とも時代錯誤なのですが、ただ日本では現状が既に小さな政府であることを理解されていないために、こうした錯誤が続いてしまっているのかも知れません。
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