たまたま週刊新潮の中吊り広告が目に止まったのですが、ちょっと気になったので立ち読みしてきました。今週の特集は“【ワイド】現代「貧乏物語」”です。その中の一つは「▼蟹工船ブーム「共産党」の専従職員は「蟹工船」状態」、何となくわかるような気はしますが、さてどういう切り口なのかな、と。
共産党の入党者は近年まれに見る増加傾向なのですが、しかるに財政基盤の強化には繋がっていないそうです。党費として収入の1%を納めることにはなっているものの、低収入の入党者が多いために党費収入は党員数と違って増えていない、赤旗の発行部数も伸び悩み、その結果として党専従職員の待遇も悪化の一途にあることが伝えられています。仕事量は増える一方なのに、給料は増えないどころか遅滞も相継ぐとか……
とりあえず労働条件を基準に考えるなら、共産党も立派な「ブラック」のようです。この点、皆様はどう思われるでしょうか? 週刊新潮誌上では、この専従職員の待遇の悪さに皮肉を投げかけています。搾取される労働者の状況を改善しようと訴えるなら、まず自分の足下の専従職員の待遇を何とかしたら?とばかりに。
とりあえずこの点に関しては、私も週刊新潮と同意見です。自ら働く人の待遇を悪化させるなど、とんでもない話であり、これは改善すべきです。共産党は模範となるべきです。とはいえ、苦しい台所事情がそれを許さない……のかもしれませんが、それは民間企業でも定番の逃げ口上ですから、共産党がそれを真似てはいけません。同様に「やりがい」を口にして待遇面の問題から目を逸らそうとするのも、やってはいけないことです。
財政上の問題、と言うのは物事の一面でしかありません。要因はもう一つ、財政上の理由と同程度かそれ以上に大きいものがあるのではないでしょうか。それはすなわち「民意」です。「民意」が低賃金、劣悪な労働環境を要求しているのなら、多数決の中で生き残るために、その民意に従わねばならない、だから専従職員の待遇も「悪く」しておく必要があるとしたら?
例えばほら、カップラーメンの値段も知らない麻生総理の優雅なナイトライフに疑問を投げかけるマスコミがあったわけですが、ここで真の特権階級である麻生総理の贅沢ぶりはスルーしつつも、それを糾弾する報道関係者の高給ぶりをあげつらうような人も少なからずいるわけです。しっかりとした給料を受け取ることが、その人の主張への信頼を損ねるとしたならば、共産党としては党職員の給料を増やすわけにはいきませんよね?
釜ケ崎の暴動で、抗議の先頭に立った活動家がいました。その人を大阪府警及び産経新聞は「一戸建ての住宅に住み、高級車に乗っている」と非難したわけです(真偽の程はさておき)。この非難が成り立つためには「一戸建ての住宅に住み、高級車に乗っている人は貧困層の味方ではない」という認識を必要とします。そしてこの認識を受け容れるとすると、貧困層の味方であるためには、自らも貧困でなければならないことになります。ならば党専従職員の待遇も今のままで据え置くか、あるいはもっと悪化させるかした方が、より「庶民の味方」のイメージを作れるのかも知れません。
ゆとりある労働環境と、将来的な安心をもたらす十分な給与、これを用意できれば模範的な雇用主と言いうるはずですが、世間の評価は全くの正反対です。(実態と世間の認識のズレが大きいとはいえ)好待遇とされるマスコミや公務員への評価はどうでしょうか? ボロクソですね? そうです、それが社員であろうと専従職員であろうと、ゆとりある労働環境と十分な給与を提供することは、社会的な非難に値する振る舞いなのです。ですから既存の価値観の中で共産党が支持を広めようとするなら、党職員の待遇を改善するわけにはいかないのです。
とりあえず公務員を叩いておいて、正規職員を非常勤に置き換える、雇用を不安定化させて低賃金で扱き使うほど、改革者として評価されるのが日本社会です(参考)。共産党がこの「民意」と対決し、その価値観を転換させることができるならいざ知らず、「民意」の支持を得ようとするのであれば、この頸木から逃れることは出来ません。我々の社会の世論は、党専従職員が(共産党が国民に約束するような)ゆとりある生活を送ることを許さないでしょう。だから共産党の職員は、貧乏でなければならないのです。
ただし叩かれる対象に送られるきっかけはある(朝青龍関のサッカーのような)のでそうならないよう気をつけてはいるのかもしれません。しかしそのような叩かれるきっかけは往々にして理不尽なのですが…。
ただ二点だけコメントを。ひとつには、大手マスコミでも、みのもんた氏の「われわれ庶民の生活が苦しくなっているのに・・・」といった、あからさまな欺瞞が大手を振ってまかり通っているのは、さすがに問題だとは思います。この理屈を許してしまうと、みの氏のような社会的地位も収入も高い人に、弱者への「再配分」を要求することの正当化が非常に困難になってしまいます。そして実際そうなってしまっているのが、今の「財政危機」の根源なんだと思います。
もうひとつ、公務員へのバッシングに関してはちょっと質が違うような気がします。それは「税金が自分たちの払った給料」だからということなんでしょうが、これがよくわかりません。自分が働いている会社の上司や役員の給料、株主への配当を問題のほうが、より直接的に自分の給料反映しているはずなんですが、ほとんど批判されません。「会社が生き残るため」という理屈なんでしょうが、今の公務員バッシングをまともに受け取っていたら行政が破綻してしまうのは、中学生でもわかる理屈だと思うのですが・・・。
私の理解では、「会社はイヤなら辞めればいいけど行政は選べない」ということなんでしょうか。「お役人はどんなにぶっ叩いても平然としている」という日本人特有の「お上」幻想もあるように思いますが。
何につけ、世間(を代表しているつもりのマスコミ?)に気に入られるのは難しいものですね。
週刊誌にこのテのヨタ記事を書く連中は,これを好んで読む「程度の低い」手合い(B層?)が気に入らない相手を「何が何でも」非難するのが目的ですから,厚遇していようが冷遇していようが,どうでも良いわけですね。
そうですね、今回週刊新潮は党職員の待遇の悪さを非難しましたが、もし待遇が十分なものであったなら、今度はそれを不当な好待遇としてバッシングに走るでしょうから。まぁ待遇の悪さそのものは非難に値するもののはずですが、共産党側からすれば、バッシングを最小限に留めるためには低賃金重労働を強いて自己犠牲的なイメージを維持しておいた方がいいのかな、と思ったわけです。
>抵抗勢力さん
この場合みのもんたの社会的地位と収入の高さは問われるべきものではありませんが、「われわれ」という表現はおかしいかも知れませんね。きっとその「われわれ」は、「一緒にバッシングを楽しむ同志」としての「われわれ」なのでしょう。また「税金が自分たちの払った給料」云々は、理由ではなく口実ですね。社員の給料だって「お客さんが払ったもの」が元になる訳ですから同様のロジックは構築できるはず、それをやらないのはあくまでバッシングの対象は公務員であって「君たち」ではないのだよと、そんな偽装ではないかと。
>kurosukeさん
そう、もし共産党の職員の給料が十分なものだったら、今回の皮肉どころでは済まない、より大きなバッシングが巻き起こるでしょうね。だから共産党ですら、自らワーキングプアを作るしかなくなってしまう、世論が変わらない限り、こういう構造は変わりそうにありません。
>しゅっしゅさん
むしろ冷遇していることが非難されたのが珍しかったので記事に取り上げたわけですが、仰るように厚遇していても(むしろ厚遇すればするほど)非難されるものです。これが巡り巡って、働く人を厚遇することが否定される社会が作られているのだなぁ、と。
共産党職員だって世間的には労働者みたいなもんでしょう。低賃金どころか遅滞まであるのは許されることではありません。
かくなる上は、選挙活動などせずにカンパ集めや事業活動に力を入れ、党費も生活ギリギリの人から強引に集めるなどして、財政基盤を強化する他ありません。しかしそうすると、支持者も離れ、第一職員はそんなことしたくないから辞めていくでしょうね。結局破滅への道か。
結局どうすべきなのかわかりません。そもそも、遅滞があるということは、職員数が過剰なのではないでしょうか。もちろん、職員が少ないと活動する上で色々困るので、色々難しいわけですが。
真面目な話、共産党の機関の側は、職員ではない党員に対して、もっと財政上の窮状をしっかり訴えるべきだと思います。それこそ蟹工船が問題になってるんだから、職員がそんな状態でいいのか?!って。
党員が党職員に対して貧しさを求めているかどうかはわかりませんが、「職員なんだからしっかり働け。俺達のサポートをするのが仕事だろ。休みなんかねぇぞ。こっちは平日働いて休日活動してんだ」みたいに思っている人はいるかも。そこまでいったらもう共産党員じゃないと思うけど。
新潮は意外と大事な記事を書いてるんじゃないかなぁ。
自覚的にではないのでしょうけれど、週刊新潮の指摘自体は重要だと思いますね。ちなみに職員が過剰だとしても、人員過多だからとリストラに走れば、それこそ共産党が批判してきた財界のそれに倣うことになってしまいますから、雇用の安定化を訴える共産党としては、そこは外せないところ、でも仰るように周囲の人が党職員を見る目には「職員なんだからしっかり働け~」という重いが少なからずあるでしょうし……
>Bill McCrearyさん
働く貧困層を自ら生み出している人々が国民の生活を豊かに出来るようには思えないわけですが、多くの人にとっては反対なのでしょうね。自己犠牲的なものを当然視しているから、世のため人のためを訴えるなら、自分を犠牲にしていなければおかしいとばかりに考えるのかも知れません。
>GXさん
「坊主憎けりゃ~」とばかりに、嫌いな相手ならば主張や実態の如何に関わらず非難する、という点では共通でしょうね。
専従党員の給与が低い方が、世間に対して受けがいいというようなご意見ですが、事実は「金がない」の一語につきます。もし、金があれば世間並みの給与が出せるでしょう。彼らは給与が低くても、頑張ってくれていますが、生活が保障されてこそまともな仕事ができると思います。
共産党が持っている金が少ないので、給料が払えないと言うのは、有り金にたいして相対的に人員が多すぎるといえないこともないですが、実際には最低限の人員です。
私は公務員で、役員になることは禁じられていましたが、内緒で非専従の役員をやりました。仕事を終えた後、夜中まで無給で働くのです。そういう協力をしても、まだ仕事が十分こなせるとはいえません。
共産党が大きくなりかけると、あらゆる手段で共産党をつぶそうとします。党員は少ないし、政党助成金は受け取らないし、財政が豊かなになって、人並みの給与を払うにはまだまだ道が遠いです。
「自分たちよりも貧しい人がいるから、少ない給与でがまんせよ」という理屈は間違いです。「共産党の活動家」であっても、少なくとも世間並みの最低生活は保証されなければなりません。残念ながらその保証はありませんが。