非国民通信

ノーモア・コイズミ

「理系」を巡って思ったこと

2024-04-14 23:38:35 | 社会

 近年、理工系の学部で「女子枠」を導入する大学が急増しているそうです。元より男女の偏りが顕著な学部であるだけに、それを是正しようとする意図自体は評価されるべきものでしょう。もっとも同じ理系科目が入試に用いられる医学部などは女性受験者の方が強い場面も見られるわけです。将来的な外科医志望者を確保すべく逆に女性の合格者を制限していたケースもまた近年で告発されており、それを鑑みるとどうなんだろうと感じるところもあります。

 一般には最も入試難度の高くなる医学部において、男性側に下駄を履かせてバランスを取ることすらあった実態を考慮すると、単純な学力面では女性の大学受験者を優遇する必要性はないと言って良いでしょう。医学部に進学しても特定の診療科に女性が偏在してしまう、学力は十二分なのに理工系を進学先に選ぶ女性は少ない、こうした「偏り」をどうにかしなければならないのは当然ですが、しかるに「女子枠」を設けるような現行の試みが上手くいっているかと言えば首を傾げないでもありません。

 医学部と歯学部は入学時点で明確に隔てられているのに、外科と精神科、泌尿器科と眼科が全て同じ学部というのも、考えてみると少々不思議な話です。「医学部」と「歯学部」の二つだけに分けるのではなく、「内科学科」「皮膚科学科」「放射線科学科」等に分かれていても良い、そこで外科学科が女性受験者に不人気ならば女子枠を設ける、逆に女性の応募が多数派になる学科には男性枠を設ける、それだったら釣り合いは取れそうな気がしないでもありません。ただ18歳の時点で細かく専門を決めさせることのデメリットもまた大きいでしょうか。でも歯医者になるコースだけは18歳の時点でガッツリ定まっていることを考慮すると、意外になんとかなる気もします。

 個人的に最悪だと思ったのは数年前の「リケジョ」ブームですね。これは完全に女性をおもちゃにしている、その旗頭として起用されたのが小保方晴子という作られたアイドルであり、輝かしいキャリアを歩んできた一方で研究内容は真っ当とは言いがたい代物であったことは象徴的です。これも背後には理系分野での女性の活躍を期待する意図から産まれたものではあったのでしょうけれど、中身のない偶像を(男性達が)作り上げたところで何の意味もありません。

https://www.titech.ac.jp/student-support/students/extracurricular/organizations

 ちなみにこちらは女子枠を大きく設けている東京工業大学の公式ページですが、曰く「文化系の大学とは異なり、本学は、実験・実習・演習など、とかく勉学に追われ~」だそうです。以前にも取り上げましたけれど、「理系」を自認する人々の中には「文系」を敵視する人が一定数います。まぁ文系学部と言いますと、低成長と格差拡大を理論的に支えてきた経済学や、アメリカ政府の広報官のような国際政治学もある、「英語で」授業をしていることを誇り語学留学の斡旋にばかり積極的な英会話学校もどきも増えているだけに、一定の批判はあってしかるべきでしょう。

 とはいえ文系学部でも英会話と英会話と語学留学など、とかく英語に追われて忙しい学校もありますし、理系学部でも暇を持て余しているところはいくらでもあります。そして学部を問わず経済的な問題で勉強「以外」に忙しい学生だっていくらでもいるわけです。東工大は難関大学として自らを誇るところはあるのかも知れませんが、他の何かを貶めないと自らを誇ることが出来ないとしたら、それは随分と残念な話、「お里が知れる」振る舞いであるとは言えます。

 東工大ではサークル活動のための時間として水曜日の午後があてられているとのこと、大学に入ってまで学校に時間割が決められているというのも私としてはちょっと嫌ですが、それ以上に「これと同じことを体育会系に言えるのか?」と思いました。「文系と違って自分たちは忙しいんだ」とマウントを取る姿は余所でも普通に見られますけれど、では「体育会系と違って~」と、反撃されそうな相手にも喧嘩を売ることが出来るのか、そこを私は問いたいです。

 加えてもう一つ、拘束時間の長さを誇るべきではない、とも思います。教授の実験に付き合わされ研究室に泊まり込む日々が続いたとして、では時間を費やせば成果が得られるかと言えば、それは全く別の話ですから。会社でも労働時間が長ければ評価されてしまう、仕事をした気分になってしまう傾向が見られますけれど、これこそまさに日本企業が抜け出せずにいる誤った考え方であるはずです。どれだけ時間を費やしたところで成果を生まなければ意味がない、意味があるのは拘束時間の長さではなく成果である、そこは意識されなければなりません。

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