非国民通信

ノーモア・コイズミ

患者側も頼んでいない、と思う

2019-10-20 22:10:04 | 社会

歯科衛生士法違反容疑 歯科医の女を逮捕 愛知県警(毎日新聞)

 無資格の歯科助手に歯石除去をさせたなどとして、愛知県警は16日、同県岡崎市岩津町申堂の「京田歯科」院長、京田典子容疑者(66)を歯科衛生士法違反と詐欺の疑いで逮捕した。

 逮捕容疑は1~2月、歯科衛生士の資格がない歯科助手の女性に、患者3人の歯石除去などの歯科衛生士業務をさせたほか、診療していない患者2人のカルテを偽造して診療報酬計5600円を不正に請求して受け取ったとしている。

 県警によると、京田容疑者は「歯石を取るところを見ておらず、頼んでもいない。架空請求は故意にしたものではない」と容疑を否認しているという。当時、歯科衛生士は在籍していなかった。健康被害はこれまでに確認されていないという。

 歯科衛生士は国家資格で、歯科医師の指示の下で歯石の除去や口腔(こうくう)ケア、歯周病の定期検診などを担う専門職。歯科助手には資格がないため、これらの治療や指導をすることはできない。

 

 例えば消費者向けの広告に意図して虚偽の表示を行えば罰されますけれど、求職者向けの広告であれば虚偽の表示であっても罰を受けることはありません。これに限らず雇用関係の法律は守らなくても許容されるのが慣例ですが、他にもパチンコの三店方式や企業による脱法節税行為など、事実上の違反であっても黙認されていることは多いわけです。そして無資格の歯科助手による医療行為もまた同様、違反であろうと処罰の対象としては扱われることはなかった類でしょう。ところがどういう風の吹き回しか、違反が違反として扱われるという「不思議な」ことが起こっているようです。

 ホリエモンですとか村上世彰やカルロス・ゴーンなど、結果として逮捕された人がいる陰で、似たような行為に手を染めておきながら咎めを受けることなく過ごしている人もまた多いのではないでしょうか。違法行為の検挙率は100%には遠く届きませんし、その認知に関してなら尚更です。罰は――罪だけではなく、何らかの「プラスアルファ」があって初めて発生するものなのだと言えます。

 そして冒頭に引用した歯科衛生士法違反ですが、こんなことはどこの歯科医院でもやっていることのはずです。残業代の不払いで経営者を逮捕したら刑務所が溢れてしまうのと同様に、歯科医師法や歯科衛生士法の違反者を逮捕していたら、刑務所を2倍に増やしたって追いつくことはないでしょう。にも関わらず、今回の事件が「逮捕」という異例の事態に発展したのは、見出しにある歯科衛生士法違反ではなくカルテの偽造の方を問われた結果と考えられます。

 なお容疑者によると「歯石を取るところを見ておらず、頼んでもいない」とのことですが、患者側の証言としてはどうなのでしょうね。「(歯石除去は)頼んでいない」という患者は、この医院に限らず多いと思います。私自身、幾度となく歯石除去を受けてきましたけれど、歯石除去を頼んだことは一度もありません。マクドナルドですらポテトを付けるには顧客の承諾を得るのに、歯科医院は承諾なく歯石除去を始める、元よりそういう業界ですよね?

 根底には保険制度の問題も大きいとは思います。昨今、歯医者の多くはインプラントが売りで、歯科医の看板は歯よりもネジの絵が目立つところですが、要するに格安の保険治療では採算が取れない、いかに保険外診療に誘導するかが経営のカギになっているところも大きいのではないでしょうか? そしてインプラントを売り込めない軽症患者には、せめてアルバイト(即ち歯科助手)に歯石取りでもやらせて小銭を稼ぐ、これが常態化しているわけです。

 歯科助手に歯石取りをやらせるところもあれば、歯科衛生士?に補綴物の調整や仮歯の作製、レントゲン撮影を任せている歯科医院も数多く見てきました。良いか悪いかはさておき、それが日本の歯科医療の標準だと思います。まれに歯科医師本人が大半をこなしている法律的に正しい歯医者に出会ったこともありますが――とんでもない下手くそでした。歯と健康は密接に関わる一方で、医学からは独立している歯学の領域、何とも不思議な世界です。

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