非国民通信

ノーモア・コイズミ

(東京への)ギリ(ギリ通勤)圏のリアル

2023-05-07 22:39:25 | 社会

 直近では統一地方選挙との関連で自分の住む地域について何度か言及しました通り、私は東京へのギリギリ通勤圏に住んでいます。この東京へのギリギリ通勤圏を私は「ギリ圏」と心の中で呼んでいるわけですが、その特徴について少し考えるところがありましたので、幾つか書いてみたいと思います。

 いつかはコンクリートのマンションに住みたいと漠然と夢見ておりまして、不動産情報に係るサイト巡りが日課のようなところもあるのですが、具体的な物件を追いかけると必ず上記の「ギリ圏」に辿り着きます。何故ギリ圏なのかと問えば、リモートワークもあるとはいえ結局は都内の企業勤めですので、頑張れば通勤できる範囲には住む必要がある、しかし予算はないので地価の高いエリアは選択肢から外れてしまう、そうなるとギリ圏の不動産しか残らないわけです。

 人は何故ギリ圏に住むのか、多くは積極的な理由によるものではないでしょう。郊外の就職先は至って限られますし、不動産価格がどこも同じであれば通勤にも生活にも便利な都心を選ぶ人が圧倒的多数になるはずです。そもそも人が「住みたい」と思う地域だからこそ都心の地価は高騰するわけで、相対的に不動産価格の抑えられている地域はそれだけ不人気ということです。

 ただ、そんなギリ圏でも人口流入は続いています。住みたい地域のベストではなくとも、予算を考えれば妥協できるエリアとしてギリ圏への転入は後を絶ちません。中でも目立つのは「子育て世帯」の増加でしょうか。先般はこどもの日もあって児童数の一貫した減少が深刻に伝えられた一方、私の住む街では至る所を子供が駆けずり、叫び回っています。投票所でもある最寄りの小学校では1クラス増えたり近隣に保育園が新設されたり等々、少子化とは真逆の動きが続いているわけです。

 私が眺めているギリ圏の分譲マンション界隈でも同様なのか、児童数の増加に合わせて小学校を新設するという話も聞きました。あるいは児童数の急増で最寄りの小学校では収容できなくなり、特定のマンションごとに学区が割り当てられる、特定のマンションの児童は少し離れた別の小学校に通わされる、なんて問題も発生しているそうです。日本全体では少子化が加速しているはずですが、私の住む街やマンションを買いたいと思っている街、いずれもギリ圏となると子供は増える一方なのかも知れません。

 若い間の仮住まいと、住宅のグレードや居住面積に妥協できる単身の若者は都内の借家に住む、昇進と昇給を重ねた富裕層も都心に住む、しかし昇進はこれからの若い夫婦が都心に居を構えるのは金銭面で非現実的です。そうなると都内に通勤可能な地域でギリギリの価格帯を探ることになる、結果としてギリ圏に辿り着く子育て世代が増えているのではないでしょうか。だからギリ圏は子供で溢れている、しかしギリ圏に子供が増えても転入の結果に過ぎず、転出地域と合わせれば±0、むしろ偏在を引き起こしているだけでもありますね。

 ただ一口にギリ圏と言っても区切りの難しいところがありまして、児童数の増減なんかは都道府県別で発表されるものの、東京でも23区と多摩地域では全く話が異なるように、千葉でも北西部ベッドタウン地区と外房とでは別世界が広がっているわけです。これを市町村単位に分けても同様で、私の住む市も結構な面積があるため、子供で溢れるギリ圏もあればそれなりに栄えた駅近の商業地もある、公共交通機関とは無縁の陸の孤島エリアもあったりします。市全体では転入増でも、市内の地域によって格差は大きく、統計では見えづらいものも少なくありません。

 ともあれ少子化が進む中でギリ圏に子供が偏在する、これが人々の「子供観」にも影響を与えているように思います。例えば動物園で珍しい生き物の鳴き声を聞いて、これをうるさいと感じる人はいないでしょう。しかし自宅周辺を縄張りにするカラスや躾けられていない隣家の犬の鳴き声を不快に感じている人は多いはずです。これと同じことが子供を巡っても起きているのではないか、というのが私の考えです。

 少子化と子供の地域的偏在によって、子供に接する機会の激減した人と、子供と日常的に接している人への二極化が進みました。その結果として子供の声を「動物園で聞く鳴き声」のように感じる人と、「躾けられていない隣家の犬の鳴き声」のように感じる人に分かれているのではないでしょうか。普段は子供に接することのない人からすれば、子供の声を煩わしく思う感情など想像も出来ないわけです。一方で子供と接する時間が長ければ長いほど、子供の騒々しさにストレスを溜める機会も多くなります。ヒマなときに時々しか子供に遭わないのであれば、子供の声もかわいらしく聞こえるに違いありません。しかし忙しい日々でも深夜でも絶えず子供の叫び回る音に囲まれていれば考え方も変わるというものです。

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