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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

James Blackshaw / "The Glass Bead Game"

2009-05-30 11:28:35 | music9
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□ James Blackshaw / "The Glass Bead Game"

Cross

Release Date; 26/05/2009
Label; Young God Records
Cat.No.; YG40
Format: 1xCD

>> credit.

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>> http://www.myspace.com/jamesblackshaw
>> http://younggodrecords.com/


>> tracklisting.

1. Cross
2. Bled
3. Fix
4. Key
5. Arc

James Blackshaw - 12 string guitar, piano & harmonium.
Lavinia Blackwall - vocals
Fran Bury - violin and viola
John Contreras - cello
Joolie Wood - violin, flute and clarinet
Nicole Boitos - artworks >> www.nicoleboitos.com



私がもう少し若かった時、将来なんてものがまだ、箱は愚かチョコ銀紙のクズ程にもまとまって視えていなかった頃。密かに憧れていたのは、一本背負ったギターだけで生を謳歌する根無し草だったりして、でも、とかく煩わしい憂き世の一切合切を振り払い、好い事だけに憂き身を窶す日々を送ることが出来たとして、そんな私が誰に何を歌えるようになるというのだろう。

頃日、年を経る毎に人生とは、敢えて口に出来ない、言葉にならない累々たる感情を背負っていくことなのだと思えてきて、それと同時に自分に「歌」がないことに虚しさを覚えるのです。



Jamesblackshaw


James Blackshawはロンドン出身のナチュラル・ボーン・ギタリスト。私と同い年にして、“12弦アコースティック・ギターのヴィルトゥオーソ”との異名を恣にする天才で、所属していたパンクバンドからの独立以降、世界各国のリスナーの関心と高い評価を急速に集め始めています。


John FaheyやRobbie Basho、Leo Kottkeといった60年代タコマ・レーベルのギター音源をフィンガーピッキングの教本にしたというJamesのタッチは、決して技巧に走らず、あくまで情感に寄り添うように移り変わる繊細な音色に、それを聴く者の心を映したかのようなカレイドスコープ。或は漆黒の夜空に瞬く満点の星々、風にさんざめく夥しい野の草花。

彼の弾く一弦一弦の響きは、私の心の中にある琴線の一つ一つから零れる「歌」であり、そこでは生きることの嬉き憂いの全てが渾然一体となり複雑なハーモニーを奏でられているようで、落涙を禁じえません。



また、アルバート・アイラーからシュニトケ、ペルトやメシアンに至るまで、近現代の作曲家に傾倒する彼らしく、今作ではより室内楽風のクラシカルなアレンジに拘った独特の作風を確立しています。

プロ声楽家のLavinia Blackwallを迎えた"Cross"の後半では、交互にうねりを繰り返すストリングスとギターが耽美なヴォカリーズにバッキングして、何処かルネンサス風ともバロック風とも思わせる佇まいを漂わせています。


暗愁に耽りながらも、一歩一歩を強く踏み出すような転調に救われる"Bled"の多彩な音色の重なりにも心揺さぶられるものがあります。



アルバムタイトルは、ヘルマン・ヘッセの巨作『ガラス玉遊戯』に因んだもの。精神世界と芸術とのハーモナイズ、それらに対して現実として押し寄せる社会問題や環境変化との軋轢を描いたテーマは、この作品を聴く私自身に向けられた寓意なのか、それとも物語の主人公と同じく『演戯名人』たる天才が自身に課したテーゼなのか...