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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Burn After Reading

2009-05-01 06:13:12 | 映画
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>> http://burn.gyao.jp/


□ Burn After Reading

"CIA Man" / The Fugs
"Night Running" / Carter Burwell

Release Date; 23/04/2009 (Japan)
Director: Joel Coen / Ethan Coen
Music: Carter Burwell
Cinematography: Emmanuel Lubezki
Starring: George Clooney / Frances McDormand / John Malkovich / Tilda Swinton / Richard Jenkins / Brad Pitt



『バーン・アフター・リーディング』・・・読後焼却すべし

天下のCIAが「ワケワカラン!」と匙を投げた部外秘レポートとして扱われる物語の顛末は、あまりに滑稽で、そこそこ不条理で、わずかばかりの現実味を覗かせている。


最近観た中で最も酷い映画でした。
とにかく言いたいことはそれだけです。


この映画を観たという事実そのものを消し去りたい???、記憶を書き出して文字通り焼却処分しても何ら差し障りないと思えるのですが、観賞後から今に至るまで、このジワジワと効いてくるフックのようなものが、コーエン兄弟のレシピの妙味なんだろうなぁ。。

自分がこの映画について語りたいことは何だろうと一週間考えたあげく、結局何も残りませんでした


Bar2
(愛すべきiPod馬鹿、チャドがひょんなことからCIAの極秘文書?を手に入れてしまう)



ブラピ若いねー!
現実にベンジャミン・バトンしているのかと思っちゃうくらい。そしてヘタレ演技が上手い!あの怯えるシカのような目は、そこらのベテラン二枚目俳優にはそうそう出来ない芸当だと思います。マルコヴィッチの滲み出る狂気やクルーニーのアホ演技もさることながら、やはり役者の力量なしには成立しない作品には違いありません。


ブラック・コメディと銘打ってはいるものの、実際にはシュールで淡々とした群像サスペンス。登場人物同士の絡みの妙な擦れ違いやセリフの噛み合なさに、「あー、あるある」とか「ありえねー」とか心の中で突っ込みを入れつつ、失笑や冷笑を交えて味わう映画ですね。

その手のジョークは好きな方ですが、この映画については正直「まだ終わってくれないのかな。。」と心の中で呟き通しでした。内容に不釣り合いなほど仰々しいOPスコアや残酷描写、ことごとく肩すかしに流れ過ぎていく深刻げな筋書き、絵的にどうかと眉をひそめてしまうエロ椅子と、あれよあれよとギミックは登場するものの。。


Bar3
(出会い系中毒の連邦保安官ハリー。こいつがビビリなばっかりに。。)



極めて卑近で当世的な人柄と言える登場人物たちの行動は、時にあまりにもコメディ的で、時にあまりにも荒唐無稽に映ることがありますが、それを「こいつならやりかねないな」と説得力を齎すのが、一見無価値と思えるほどの細かいセリフの応酬や、大物役者陣の有無を言わせぬ演技力によって仕込まれた伏線の数々。これは見事と言わざるを得ません。「魅せる演技」ではなく、しっかりと「見せ物になる演技」になっている。

そういった意味で、これほどの力業で「役者の物」になっている映画には、昨今なかなかお目にかかれるものではありません。煩悩にしがみつく一人の女性の欲望を契機に、それと気付かず振り回され這いつくばるどん詰まりの人たち。剥き出しであるがゆえに捉えどころのない悲喜劇。



かのシャーロック・ホームズ曰く、「この街に暮らす人々の相関を書き出すだけで、いかなる推理小説も真っ青のシナリオが描けるだろう。」その通り、現実に生きる人々は、自分の身に起きることが、常に自分の見知らぬ誰かの行動の連鎖に組み込まれていることを無自覚に承諾している。


それがひょんなことで日常生活という箍から外れてしまった時、自身を取り巻く一連の出来事を関連づけるパースペクティブが如何に認識困難でナンセンスな模様を描き出すのか。それこそ、この作品の投げかける一さじばかりの真実味なのでは無いでしょうかと最もらしいことを言ってみるものの、やっぱりこの記事を書いた時間も含めて返して欲しいというのが本音のところ。


ブラピの何とも言えない最期の笑顔(?)が目に焼き付いて離れない、連れに言われた「○○(私)って、チャドっぽいとこあるよね☆」ってことだけが断じて納得いかない、そんなどうしようもなさ一杯の最高の映画でした。