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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

天使と悪魔 (Angels & Demons)

2009-05-18 18:05:59 | music9
Angeldemon


>> http://angel-demon.jp/


□ Angels & Demons

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>God Particle
Black Smoke

Release Date: 15/05/2009 (World)
Director: Ron Howard
Screenplay: David Koepp / Akiva Goldsman
Novel: Dan Brown
Music: Hans Zimmer

Tom Hanks / Ayelet Zurer / Ewan McGregor


A shining star at the end of the Path of Illimination.
?????“啓示の道”の終わりには星が輝く


あらすじ:
ローマ教皇の逝去にともない、新教皇選挙(コンクラーベ)まで空位の期間に鎖されたヴァチカン。全世界10億のカトリック教徒の指導者として有力とされていた4人の枢機卿が拉致され、かつて教会によって歴史の闇に葬られた秘密結社・イルミナティからの犯行声明文が示される。

一方、スイス・ジュネーヴのCERN(欧州原子核研究機構)は陽子加速器の衝突実験により、宇宙創造の源とされ『神の素粒子』とも呼ばれる反物質(Anti-matter)の生成に成功。しかし直後、何者かによって研究所から盗み出されるという事件に遭遇していた。




天使「ネタバレはお止しなさい。」
悪魔「おいおい、それじゃ言いたいことも言えない。」
天使「そんな世の中なのよ。」
悪魔「YOUネタバレしちゃいなよ。原作付きだし大丈夫。」
天使「ダメーッ!映画では脚色されてるし、読んでない人がうっかり...」
悪魔「ユアンが何故あの役で出演してるかってのがミソ。」
天使「そうそう、泣かせるのよね~。でもあのラストは慈悲なのかも。」
悪魔「そこまで言うとは思わなかった。。。」



ネタバレは極力なしの方向で(笑)

かのガリレオ・ガリレイが、ラファエロやベルニーニの彫刻・美術品に秘めたとされる「コード」を追って、ローマとヴァチカンの秘所名所を縦横無尽に駆け巡り事件を解明していくという内容。コンセプトとしては、夜9時台の「湯けむり旅情サスペンス」とかなり通じるものがあります。


宗教史のゴシップをセンセーショナルに煽った「ダ・ヴィンチ・コード」とは全くベクトルの異なる作品で、科学ネタは勿論、テーマの核となる歴史的事実にまで大胆な創作とハッタリを織り交ぜたエンターテイメント作品。

ですが、蘊蓄と伏線の緻密さとは裏腹に、ミステリーそのものの出来としてはかなりかなりザックリ感のある大味な印象を受けました。「天使像が指差してる方向だ!!」って真顔で言われても。。とか言いながら、結構ときめきながら楽しめてしまいました。科学ネタにしろ宗教にしろ美術史にしろ、深く考えないほうがロマンを感じられますね。


最初に推理ミスを冒して、事件に関わる重要な情報を観光ガイドに質問する件は人間臭くて面白いですね。それで「歴史を勉強しろ」と釘刺したスイス衛兵隊長に皮肉を返されるのが最高です。



宗教象徴学者のラングドン教授が作品内で三面六臂の活躍が演じられるのは、逆に宗教を基にしたパラダイムというものが、科学に負けず劣らず極めて体系的で完成度の高いシンタックスを構築していることの裏付けであり、そこにはあらゆる宗教文化が長い歴史とともに育み、現代文明そのものを大きく支える豊穣な精神世界と芸術の圧倒的ダイナミクスに溢れているのです。



カメルレンゴ(前教皇侍従)役のユアン・マクレガーは、本作品の主人公としても申し分のない存在感。原作ファンからは消化不良の声があがっている、彼の強い信仰心の理由も、私としては「戦場で死地に赴いたことがある」という説明で十分に感じられました。

大選皇枢機卿を演じたアーミン・ミューラー=スタールは、どこか影を背負った人物を演じさせたら右に出るものはいないだろうし、トム・ハンクスはどんな役をやってもトム・ハンクスだし、もうキャスティングは他に選択肢が考えられない程はまってますね。


ちなみに、映画と原作シリーズでは時系列が逆になっています。「天使と悪魔」のラングドン教授は「ダ・ヴィンチ・コード」を経過して「キリスト教の真実を心に忍ばせている人物」として教会との確執も描かれており、今作においては、それが却って脚本により深い含蓄を持たせていると言えるでしょう。



さて、劇中では半ば無理矢理こじつけられた感のある時限装置としてのマクガフィン、『反物質』の虚実については敢えて触れませんが、この作品では、それが『反物質』でなければならない寓意上の理由があります。

物理学者とともに読む「天使と悪魔」の虚と実 50のポイント
http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/hayano/angles_and_demons_fact_vs_fiction/FACT.html



物質と作用してエネルギーに変化・消失する反物質は、言うまでもなく、この作品上で相対関係にある概念「宗教と科学」の対比的象徴となっています。私だけではなく、今では多くの人が「宗教と科学」は必ずしも対立するものではないと考えているかもしれませんが、この現代においても、技術や生活基盤において、「科学の適用」がキリスト教圏では未だに切実な問題となっているという事実については、ここでわざわざおさらいする必要も無いでしょう。



「崇拝」とは疑わぬ心であり、「科学」とは疑いから始まるもの。しかし言い換えれば、「崇拝」は信心を問われるものであり、「科学」は知の体系を受け入れることに始まる。互いの内包する相克は、実は各々が解決しなければならない深刻な問題を抱え込んでいて、本作の結末においては、これについてのある種の昇華が図られます。


奇蹟と思いやりを説き、人々の心を結びつけるのが教会の役割なら、その点において科学は、彼らの存在理由を脅かさずにはいられない。しかし宗教であれ科学であれ、これを行使する「人の心」によって、其の力は天使の御業にも、悪魔の所業にもなりうるのです。



クライマックスでのエネルギー爆発は、まるで宗教画を見るような法悦に満ちていて、それが実は科学的啓示を目にしたときの感覚と非常に似通っていることに気付く。その宇宙創造の光の中、天上の雲の合間から飛来した「彼」が、一体何者であったのか。もしかしたら太古の人々は、この光景を予見して宗教的啓示を得たのかもしれないとすら考えてしまいます。

あるいは、世界を記述する反陽子を含めた、あらゆるエネルギーの決定論的動態が、いわば「アンビグラム的に」今回のような宗教と科学の交錯する舞台装置での人間の振る舞いを巻き起こしていたとしたら、そしてだからこそ、この物語が世界中の人々を惹き付けてやまないのだとしたら...そこに何か意味を求めずにはいられません。


また、原作者であるダン・ブラウン自身が、世に聞く数多の陰謀説についての否定的な見解を示しているようにも伺えるのです。私たちの世界はもっと複雑で、ちょうど反物質が物質と対消滅して烏有に帰すように、特殊な偏向性を伴った思想はいずれ社会に霧散して力学を失うのではないかと。そんな陰謀すら弄ぶほどに物事を強く突き動かすのは、他ならぬ人それぞれの「想い」であり、「願い」であると。



そんなわけで、多くの点で拍子抜けであり、同時に多くの点で想像を超えていた史跡サスペンス「天使と悪魔」。概ね満足出来ましたが、欲を言えば、科学と宗教芸術を絡めた、もっと緻密に構成されたミステリーが観たかった!というのが本音。。今度はケプラーとパレストリーナで「天球の音階」なんてどうでしょうか。

9月に刊行予定のラングドン・シリーズ最新作"The Lost Symbol"の映画化も既に決定しているようです。




Aandd

□ Hans Zimmer / "Angels & Demons" Original Score Soundtrack


"The Da Vinci Code"のスコアは、間違いなくハンス・ジマーの最高傑作の一つでした。「天使と悪魔」では、最近のJames Newton Howardとの仕事で聴かれたBass偏重の実験音響や、"160 BPM"に代表される新機軸で、ミニマル調の混声合唱による劇的なアクション・スコアを展開しているものの、基本は前作のモチーフのアレンジや焼き直しが大半を占めていていて、音楽的啓示には物足りない印象。


とはいっても、ユダヤ系のヴァイオリニストJoshua Bellの静謐なソロは、まさしく天上のものと聴き紛う至高の響きに満ちているし、迫力の合唱スコアは大地を揺るがすほどに響き渡り、以前までしつこいほど聴かれたワーグナー・コンプレックスもさほど目立っていません。ただ、「パルジファル」を模したようなメイン・モチーフは、テーマ的にも前作までに留めておくべきだったと思うのですが。。